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地獄の一週間ののち
オーブンレンジを開けると、数日かかっても食べ切れないような巨大なクッキーが入っていた。バナナに胡桃にアーモンド。
しばらく朝ごはんが食べられなかった。
食べると疲れて眠ってしまうから。
手に持つと崩れるクッキーをゆっくりと食べる。
昼も夜も寝る暇のない一週間。
18時間の連続夜勤に、地域のイベントの手伝い、子どもの手術入院、大学の授業の締め切りが重なった。
困ってる人がいたら助ける。
シフト、人が足りなかったら受けます。
それで自分が困っても。
最後は頭痛と吐き気が止まらなくなった。
まだ疲れが残る。
無事に三男の手術が終わり、今日退院した。
疲れて疲れてしょうがなかった。
背負い切れないスケジュールに、急に涙が出る日が続いた。
それでも5分の面会でも三男は「寂しかった」とハグして頬にキスをする、来てよかったと思った
「あなたの気持ちは分からないけど、必要なら私はそばにいるよ」
生涯食べたもののなかで、まずかった料理を上位からあげるなら、そのほとんどは元夫の料理だ。
お腹が空いていたのに、苦くて食べられなかったゴーヤーチャンプルー、賞味期限の切れた高野豆腐の入った味噌汁、風邪で具合悪かったときに作ってくれた激辛のカレー。
子どもたちは、まずいと言うと「食べなくていい」と怒られるから、黙って食べて、パパがいなくなってから皆でどんなにまずかったか話して笑った。
パパがどんなに子どもたちを想おうが、
彼がどんなにわたしを愛そうが、
それは上手な形で伝わらなかったし
それは今でも変わらない。
理解し合えないけど、わたしの次に子どもたちを大事にしている。
それでもわたしたちは元に戻ることはない。
歪な形のまま続いている。
「パパのクッキー誰か食べる?」
子どもたちが口を揃えて言う
「ぜったい食べない」
何を食べても美味しくなかったのに、このクッキーからは味がする気がする。
切り分けて、何回にも分けて食べる。
人と一緒にいないとごはんを食べるのがつらい。
楽しそうに笑う子どもたちと一緒に散歩をする。
疲れすぎて、何のために生きているのか分からない日々が続いているけれど
好きな人たちと一緒にいたい。
自分がだめになっても、
笑って許してくれて、そばにいて励ましてくれる人たちと。
一週間くらい何もしないで何も考えないでボーっとしていたい。
とにかく疲れた。