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産むこと育てることへの希望 #読書記録

先日結婚式をあげた友人と、ご飯を食べる機会があった。子どももほしいな、という話から、私が助産師として働き始める話になり、その24歳の女友達に尋ねられた。

「出産って、痛いんでしょ?痛いのはいやだなぁ。麻酔とかで痛みって全然なくなるの?」

私はどのように答えたらいいか、すぐにわからなかった。短い助産学生の実習期間内での産婦さんとの関わり、お産に立ち会った経験から、私の思いや考えを伝えていいものか、迷ってしまった。
痛いには違いない、経験していないけど。
痛みが0になる、と言い切ることはできない。
でも、その時に気づかされたのは、出産=痛い、という印象が、まず先にでてくるんだなぁということだった。

“子育てしやすい社会を”“安全なお産を”“ワーク&ライフバランスを”
といった課題に対して、国も、企業も、教育も、社会のなかで法律も含め対策をとっていると思う。
決して、軽く扱われている課題ではなく、多くの分野で注目されていることは実感している。

ただ、私が抱く違和感を、

雑な、友人と話すときのような、思ったままの言葉で表現してみるなら、

●日本女性は、子どもを産みたいと、育てたいと、前向きに、希望をもっているのか?

●産みたい育てたいと思っている人が、できないときに、どのような心理的障壁を感じているのか?

●人に話さなくても、無意識でも、日本の女性が妊娠や出産に抱いているイメージはどのようなものなのだろうか?

といったもやもやなのだと思う。

そんなもやもやを少し整理してくれるような本の感想を、出産に抱くイメージ、と、少子化対策への違和感、の2つとしてまとめてみようと思う。

オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す(光文社新書) 2004 三砂ちづる

本文をそのまま引用した部分は、『』で示すことにする。

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1つめ、出産に抱くイメージだ。

著者は、今の世代の女性たちは、医療の管理のもとの出産しか見たことないという。

テレビ、映画、漫画といった触れやすいメディアが発信する“出産”はお決まりのパターンで、

『急に女性が激痛に苦しみ始め、病院に運ばれる。家族は分娩室の外ではらはらしながら待っている。そこに産声が聞こえ、みんな安堵して喜ぶ』

といったものが多いという。

でも、実際の陣痛は急に痛くなるのではなく、妊娠後期になっておなかの張りが徐々に増し、徐々に痛みが増してくるのが自然な変化だ。

そして、一般的に共有されているお産のイメージのなかに、
もちろん赤ちゃんの誕生という素晴らしい出来事、という幸せな側面もあると思う。

ただ一方で、出産=苦しいもの、痛いもの、耐えられないほどつらいもの、で
女性はそれを乗り越えて母親になるのだ、といったイメージも、なんとなく社会にあるのではないか。

『実際に妊娠、出産が女性にとってどのような経験なのか、という発想にはなりません。「医療管理」という目で妊娠、出産を見ると、すべては「なにが起こるかわからない」リスクに満ちている、という認識しか持てなくなります。今では、お産に関する知恵が伝承されているどころか、逆にお産は苦しい、痛い、つらい、といったイメージが広がっています。』

『このように「産むこと」「育てること」に何も希望を持てないようなネガティブな情報ばかりが共有されている現在、実際に子どもを産み、育てていくということを決めるには、たいへんな勇気がいるとされているようです』

そんななか、お産に対して、女性に良いイメージをもて、と言っても無理、と著者はいう。

うまく言葉にできないのだけれど、

赤ちゃんの誕生、という母親になる女性、家族、すべての人にとって喜ばしい出来事であることに加え、

母となった、お産をした、その一人の女性の個々の思い(喜びもつらさも不安も)、個々の女性に残る記憶、経験して感じたことといった、その人自身のお産の体験が、語られる、伝えられることが

次に、妊娠出産し、子育てをしようという世代に届けられる機会があまりないのではないか、と思う。

それは、お産の痛みといった苦しい側面も、一方で、赤ちゃんに出会えたときの喜びといった幸せな側面も。

いや、あまりないわけではないかもしれない、妊娠出産経験をした女性に、その思い出を話してもらったり、きく機会は確かにありそうだ。

でも、それが伝えられた人に影響するのか、ということは、なんかよくわからないな、と思う。

こんなうまく言葉にできない考えを、少しわかりやすくしてくれた内容が、本文にあった。

著者の三砂ちづる先生は、疫学者である。

疫学は『調査を通じて、研究者の伝えたい本質をなんとか量的なデータで示そうとするツールです。EBM(根拠に根ざした医療)の理論的根拠になるものです。女性の積極的な出産体験をなんとか目に見える具体的なかたちで示したい。それができれば、現在使われている医療科学の枠組みのなかで、説得力のあるかたちで女性のよりよい出産体験を示すことができるのではないかと考えました。』

自分のからだに向き合い、出産を通して自分が変わっていけるような「原身体経験」としての出産経験を「変革に関わるような出産経験」transforming birthing experienceと定義を始めているという。

だれにでも理解される論理的な定義をつくるためには、意見ではなく、きちんと研究に基づいた結果の提示が必要だ。

女性にとって出産はどのような体験なのか、
妊娠出産育児について複雑な課題が絡む現代で、

その情報が、ただの1個人の感想ではなく、
系統的に、データとして、
まとめられることができたら、とても魅力的だと思う。

2つめ、少子化対策への違和感について。
著者の指摘には大いに共感してしまった。

『今の少子化対策は、「妊娠出産子育て」というのが、働く女性にとっては重荷になっていて、この近代産業社会を維持していくのに負の要因だから、どうやって公の人たちがその負の要因をカバーできるか、という議論です。それだけでは女性の心とからだにまったく響かないことに気づいていません。』

『子どもが増えないと産業社会が衰退してしまう、どうやって社会を維持していこうか...という側面からしか少子化をとらえていないから、そういう話にしかならないのだと思います。』

子育てしやすい地域を、安全なお産を、
専門家を含めた多くの人に支えてもらえる妊娠出産育児を、といった施策は
間違っていないし必要だ。
できるなら働きながら子育てしたいと思うし、
そんな環境は公的に整えてほしい。

でも、私たち女性は“社会に子どもを増やすために”出産するのでないんだよね、と思う。

待機児童問題、子育てと仕事の両立、専業主婦になるかの選択、
産後うつなどメンタルの問題、
ワンオペ育児になるのか、地域で支えてもらえる人はいるのか、
母乳育児するのか、ミルクも使うのか...
なんだか関連する問題は、
大変で、頑張らなくちゃで、気をつける必要があって、
もっと明るい側面や、できている部分に、
目が向けられてもいいんじゃないかなぁと思う。

今度友人とまた話す機会があったら、
どんな風に思っているの?考えてるの?と
もっといろいろ話してみたいなと思う。

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