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美しさとAIと割れた皿
先日、名古屋で開催された骨董祭に行ってきた。
古くて美しいものが大好物な自分なので、何時間でもいられる雑多な空間、久しぶりに心底面白いと思ったイベントだった。そこで最も興味を惹かれたのは、割れた皿。正確に表現すると、高台の周辺を残して意図的に割った、失敗作の皿。である。
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その皿には失敗作と認定されるいくつかの条件が備わっている。だが、歪みや傾きやざらつきなど、成功品としては不向きな難点が、より一層趣を醸し出していて、これが完璧な形の成功作だったら、こんなに面白いアイテムには成り得なかっただろう。
この発想の素晴らしさ、欠けた皿に美を見出す日本人のマニアックな感性、失敗作や欠損した不完全さから教えられる、美しさという観念の奥深さに改めて興味を持った。とともに、昨今人間たちをザワつかせるAIの台頭と合わせて、考えさせられるものがあった。
お気に入りのヘアスタイリストさんに前髪を切ってもらっていた時、右目が少し下がっているから、右側の前髪も少し下がり気味に切ってバランスを取る、というお話を聞いた。へ〜〜〜、、そんな微細な工夫してくれているのか、、。そういうのが人間にしかできないことだと思うんですよね。真っ直ぐって、ほんとに真っ直ぐに切ったら、人間の目には真っ直ぐに見えないから。
さすが、、私のお気に入り美容師さん。。。w
いやほんとにその通りで、
自分が日々会社でデザインチェックをしている時も、毎回のようにデザイナーたちに伝えることと同じである。最近のデザイン現場というのは、ほとんどデザインソフトが細かいチューニングを勝手にしてくれるようなもので、センター揃え、行頭揃え、均等な空きを作るなど、数値上正確な位置にデザインオブジェクトをピタッとはめてくれるわけだ。がしかし、これが意外にも落とし穴で、数値上正確な位置だったとしても、レイアウトする文字の形や線の太さなど、並べる材料の特性や関係性によって、人間の目というのは、数値とは異なる位置に正解を感じるようにできている。つまり、データでは真ん中だけど、どうも右にずれて見える、みたいなことである。そこを人間の目で見て、ここしかない!最高に気持ちいい真ん中!というポイントを見つけるのが、職人の技ってやつだ。
数値としては間違っているかもしれないが、美しさとしては正解である。
割れた失敗作は、完璧という視点からすると不完全かもしれないが、美しいものは美しい。
そして、美しい失敗。というものが存在すると思う。
美しい誤動作や、美しい勘違い、美しい逸脱や、美しい過ち。
そういうものって、AIにできるのかな?
美しく割れた失敗作の皿を目の前にすると、唯一無二の皿の存在に愛おしさが湧いてくる。
どんなふうに作られて、どんなふうに失敗して、どんなふうに捨てられて、どうやって拾われたのか?
そのストーリーを思い描くと、かけがえのない一枚に思えてきて、この皿に何を盛り付けようか?どう使おうか?新たな美しさを創造したくなるのだ。その中で、AIには思いつかないような発想のジャンプが、突拍子も無くなんの脈絡も無いように見える発想が、潜在意識の中では確固たる理由を持って表出する。それが人間の能力なのではないだろうか。
でも今にきっと、前髪の最適な長さやバランスも、人間の感覚を学習したAIが答えを出してくる日がやってくるんでしょうけど、それまではまだできることがあると思うんですよね。
と言いながら、熟達した職人の軽やかな所作で私の前髪を素敵にしてくれた。
人間にしかできないことにAIが追いついてしまうまでの期間。あと何年か何十年か知らんけど、この期間に名前をつけるとしたらどう呼ぶべきかわからんけど。
執行猶予みたいなこの期間に人間がやるべきことって、偉大なる失敗。美しい勘違い。それらに愛を傾けること。
そこから、実は潜在的に理由がある発想の飛躍をして、新たな価値創造を行うことなのかな?と、現段階では整理しているつもりで、自分の本業のブランディングも、クライアントである経営者の方々が重ねてきた経験や日々が、泥臭く汗にまみれていたりすると思い入れが湧き、俄然やる気と発想が湧いてくるから不思議だ。その想いが湧くから、唯一無二の企業にトランスフォームしていく様が脳内にフルカラーで描き出されてくる、そんな感覚。
割れた失敗作が2つとない素敵な小皿になるなんて、これこそまさに、課題解決を超えた新たな価値創造である。
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