ランカーさんとの出会い
2023年7月、りゅうちぇるが亡くなったという速報が入った。
ものすごく悲しくて、悔しくて、呆然とした。
ぺこちゃんはわたしが懇意にしているお店の常連で、勝手に友達のように思っていたからだ。
その時わたしは、何がなんでもズルしても生きてやる、と思ったのだった。
女風を使ってすぐ、わたしはゲイの男友達に会った。弟と呼ぶほど仲のよい彼は、あの日わたしの深夜の電話を取れなかったことで心配してくれていた。
その日、わたしは熱中症を起こし、そんななか無理やり夫婦カウンセリングに1人で向かった。
自由が丘からさらに歩いて20分、溺れるような湿気と熱気を歩いた。
そこで言われたことは、旦那以外の生きがいを持つこと、気を逸らすこと、だった。
まるでわたしが依存しているかのような話ぶりだ。
今思い出しても、そのアドバイスはちょっと違うと思う。
お互いに自立していたとしても、一緒に生活する、夫婦で生活するというのは、絆を積み重ねていくことだと思う。
はっきりはまだわからないけど、ただのルームシェアじゃない。
旦那はほっといてくれていいと言ったけど、一緒に生活している以上完全に別々に家事はできないし、彼はわたしの紹介文にもあるように醜形恐怖やADHDもあるので、わたしが気持ちよく過ごすためにも、わたしが家事や彼の世話を請け負うのは必要だった。
当時わたしは自分の病気と、彼の激務がきっかけで彼の扶養に入ってパートの仕事をしていたが、それでも専業主婦はものすごく大変だった。
ともかくカウンセリング後、ゲイの友達と話したら、わたしの女風体験を笑って受け止めてくれた。
そのとき勧めてくれたドラマがネトフリオリジナルの「セックスライフ」。女風生活としばらく並行して見ることになる。
ここでようやく新しいセラピストが登場する。
その頃、情報を集めるためとにかくTwitterの申請が来れば全部承認、さらにAくんはポコチャの配信をしていたので(Aくんの場合あまりなかったけど、同じ人を呼んだ客が一緒に配信を楽しみ、コメントしたりするのだ。普通に考えて正気の沙汰じゃない。)それを見ながら、自分の中で女風の体系づくりをしていた。
そしてCさんが登場する。
Cさんはなんだかレジェンドのような扱いで、いわゆるランキング上位者、通称ランカーだった。(女風には、使ってもらったお金に応じてセラピストにポイントがつきます。)
もう呼ぶのは3人目、たまたまキャンセルが出たタイミングですぐ連絡した。
今度はランカーにしてみようと思ったのだった。
Bくんと同じくらい対応がものすごく早い。
ちなみにAくんは試しにDMしていたが返事が異様に遅かった。
Cさん、もはや内部の人なのかな…ホストでいう、幹部みたいな感じかな…
ちょうど美容院だったので、これからイケメンとデートします!と宣言して、担当さんに(この人既婚者だよな…)という困惑を残して髪を綺麗にしてもらった。
いざCさんの時間。
キャンセルのタイミングでねじ込んだので、日もまだ高く、突然ものすごく恥ずかしくなってきていた。
その瞬間急にラインが来た。
夫から。
「今成田です」
!!!!!
帰国予定日(仮)よりだいぶ早い。
そして、今から(某国から)帰るよ、ならわかるけど、今成田とは…
何より帰ってくるかもしれない。
大慌てで連絡を取り、どこに帰るのか確認した。
すると会社によって、実家に帰るとのこと。
Cさんとバッティングするのではないかと気が気でなく、マンションに今日は人が来てるから来ないでと伝える。
ほっとしたのも束の間、すぐインターホンがなる。
Cさんはサングラスで、日焼けした肌で、いかつかった。
年齢としては少し下のはず。
でも迫力が段違いである。
少しだけ肌荒れしていて、話すと確かに少年ぽい。
Cさんにも、わたしは同じことを言った。
すでにちょっと女風を面白がっていた。
「めちゃくちゃにしてください!」
Cさんの方が、Bさんよりもっとすごかった。
捕食されているかのようだった。何が何だかわからない。ものすごく気持ちがいい。
潮吹きしたことある?と聞かれて、いやないですないですけどできるものなんですか?、やってみてあげる。
そうやって少し会話して開発が始まった。
Cさんはお医者さんのようだった。
指を入れて、わたしのお腹をゆすったり軽く押したり、まるで聴診器で胸の音を聴くようだ。
真顔で少し試しては、わたしの反応を見る。
「なかなか吹きづらいかもね」
と言われ、でも構造上みんな吹くから、と謎の励まし?を受ける。
しばらくしてイクのとはまた少し違う感覚があって盛大に吹いていた。
そのあと何度も何度も潮を吹いた。
シーツが世界地図のようなまだら模様になった。
そのあとも開発は終わらない。デコルテを指で弾いたり(マンガ金瓶梅で見たやつだ…!)、すこし噛んだり、どれも気持ちいい。
「Mの素質ありだね、今全身性感帯になってる」
C医師は大真面目にそう言った。
事後、わたしは腕枕をされながら、無邪気に
Cさん本番するの?と聞いた。Bくんあったからさー。と。Cさんとしたかったわけでは別にない。
セラピストってそういうものなの?という純粋な疑問だった。
Cさんがなんと答えたかはっきり思い出せない。
ただかなりびっくりはしていた。
そしてお風呂に一緒に入った。
ここまでは完璧だったのだ。
確かに会ってからずっとすこし咳き込んでいた、が、あろうことかうちのお風呂場の排水口に痰を吐いていったのだ。
もう、二度とお会いしないわ、と思いながら、「この家に俺はまたくるぞー!」なんて呑気に帰っていく彼を見送った。
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