見出し画像

新卒採用で”グループディスカッション(GD)”をやる本質をまじめに考えてみた

こんにちは、かなけんです。

本日のテーマは「新卒採用で”グループディスカッション(GD)”をやる本質をまじめに考えてみた」です。

■冒頭

「グループディスカッションや面接について、対策をお聞きしたく連絡しました。」

先日、OB訪問ツールで繋がった22卒の就活生の方から、このようなご質問がありました。

ツールに記載されているご本人の自己PR等を見ると、すでに積極的に就活に対して取り組んでいるタイプ(創意工夫や意思が感じられる)。まったく問題なさそうで、就活は心配する必要は殆どないと感じたので、

「一般論ではなく、何か具体的に気になることがあるんですか? 」

と返したところ、以下のご返答。

「先日、●●社の選考でグループディスカションに参加したのですが、これまであまり経験が無いことや自分自身をどれだけ出して良いのかという点が分からず、不完全燃焼のまま終わってしまいました。」

なるほど。

実際に受けている選考でのリアルな反省や悔しさがご質問の背景にあったと理解できました。しかし、残念ながらこの手の具体的な悩みは、第三者は”一律的な解”を提示することが難しいです。

なぜなら、どこまでいっても個々の企業毎によって実施目的や選考基準が異なるため、完璧な答えは出せない(分からない)からです。

やや冷たい言い方をすると、「第三者にその答えを求めてもしょうがないし、受けている企業毎に何が求められているかについて、”自分の頭”で考えるしかない。他者に答えを求めちゃダメですよ。」というところです。

一方で、一般論として「そもそも、なぜ企業はグループディスカッションを行うのか?」を考えてみることはできます。

私自身も1人の企業人事として新卒採用を行っており、一定の実践経験と意見を持ってますので、本noteでは少しそのあたりに触れたいと思います。

画像1


■自分が人事(新卒採用担当)だったらどうするか?

まずは人事側の立場に立って考えてみましょう。

タイトル画像にも載せていますが

「応募25,000名から150名を採用する」 採用率0.6%

というケースで考えてみます。

日本を代表する大手上場企業で有名どころであれば、ある年の新卒採用(大卒)の総応募数が”1万名を超えること”はいたって普通です。そこから選考を進め、最終的な”数百名”を採用するわけです。

応募数から採用確定に至る移行率で考えると”採用率1%”を割り込むケースも結構多いのではないかと思います。(※当然ながら、業界や企業毎の知名度や採用基準にかなり左右されます。)

さあ、もしもご自身が上司から「〇〇さん、ちょっと新卒を150名採用するから、その責任者やってくれる?」と命じられた時、どうしますか?

画像2


■コストをかければ誰がやっても採用はできる?

極端なケースを例示してみます。

採用背景や目的を整理
必要なコスト(お金、人的リソース)やスケジュールの洗い出し
選考プロセス、選考基準を設計
関係者(現場含む)を巻き込む
・後はひたすら実行

段取りとしては、大雑把に上記のような感じですが、皆さん(特に就活生の方)は、リアルにどれくらいのコスト(お金、人間、時間)を使うか想像がつきますでしょうか?

現実にはあり得ませんが、もしも応募者25,000名の全員を1名ずつ1次面接をする場合、面接日程調整や事前準備、後工程を考慮して1名あたり90分(1.5時間)とすると、「総工数37,500時間」となります。

新卒採用の場合、選考は3ヶ月~6ヶ月の期間で全て対応するケースが多いので、仮に最短の3ヶ月で対応しきるとした場合、1日8時間勤務・1ヶ月20営業日だとして、面接官はとにかく面接をしまくることだけを想定すると、1人の面接官が1ヶ月で面接できる数は「20(営業日)×8(時間)÷1.5(時間)=約107名」

1人の面接官が3ヶ月間で約300名を面接する場合は、「25,000(名)÷300(名)=約84人の面接官が必要」となります。面接官1人の1ヶ月の人件費をキリよく50万円だとすると、「84(人)×50(万円)×3(ヶ月)=1億2,600万円」。なんとびっくり、1次面接対応だけで1億円超の”人件費コスト”が発生します。

当然ですが、人件費”以外”にもコストは沢山かかります。リクナビやマイナビといった採用広告媒体やイベント出展等にかかった費用を総合算し、最終的に採用した人数で割った数字のことを、一般的に「採用単価」と言います。

採用単価は「数10万円~100万円前後」というケースが多いかと思うので、仮に1名採用あたり50万円だとすると「50(万円)×150(名)=7,500万円」です。

目がチカチカしてくるのでこの辺で切り上げますが、1次面接以外にも「インターン・説明会開催」、「ES選考」、「2次面接~最終面接選考」、「内定クロージング」、「内定者フォロー」と、やることはまだまだ沢山あります。

上記のように、応募者1名ずつを丁寧に対応しながら150名を採用していくと、最後は一体いくらになるのでしょうか。対応予定人数が増えれば、人の調達・調整コストにも影響が出て、雪だるま式にコストが増えることも想定されます。

もはやギャクの域になってしまいますが、金額を積みに積みましたとして、TOTALで”5億円”をかけたとし、それを経営陣に提案してみましょう。

「当社の新卒採用は、”応募者全員を1人ひとり丁寧に面接したい”ので、人件費と採用費用合わせ、約5億円かけて新卒150名を採用したいと思います。1人あたり約333万円です。これで承認をいただけますか?」

さて、経営陣の承認は下りるでしょうか。はい、絶対下りませーん。笑)

しかも、新卒採用は採用をして終わりではなく、入ってからの人材育成コストが中途採用よりもかかりますし、投資分を回収するタイミングはだいたいが数年後です。

新卒採用活動自体が未来への投資ですから、そこに投資すること自体は育成も含めた”覚悟”があってのことなので、そこには問題はありません。

ですが、”無駄な投資施策(無策)”を考えてしまうと、間違いなく上司や経営陣からぶった切られます。シンプルに「もっと工夫しなさい!!」と。

さあ、ご自身が新卒採用責任者だったら、どうしますでしょうか?

画像3


■選考プロセスは「現実解>理想解」の思考結果

では”工夫”とは、一体何なんでしょうか。

以下のように選考プロセス毎に目標値を設計してみます。

■採用:150名(内定承諾)
↑↑
■内定:300名(承諾率50%想定)
↑↑
■最終面接:400名(最終合格率75%想定)
↑↑
■個別面接(複数回):2000名(面接合格率20%想定)※場合によって集団
↑↑
■???(ES/GD/適性検査等):25,000名→2000名まで絞る
↑↑
■応募(説明会/媒体流入/スカウト/縁故等):25,000名

こんな感じで考えると、”何をしたら良いか?”を考えやすくなるのではないでしょうか。

全員と個別に面接をして向き合いたい想いもゼロではないものの、あくまで事業活動の一環としての採用活動であることも忘れてはいけないため、”現実解(コスパ)”を追求していくことになります。

「どこに拘るか、何に拘るか」はその企業の考え方次第ということです。

ですので、本題であるグループディスカッション(GD)の本質とは、現実的、かつ合理的な採用施策の1つである、と捉えることが大切だと思います。

皆さんは、ESや適性検査を含めた前工程の選考プロセス(1対1ではなく仕組みで判断する工程)をどのように捉えますか。

敢えて言葉を選ばないならば、「効率的に足切りをする施策」と私は言います。「とりあえず、いきなり1対1だと全部捌けないから、変な奴をまとめてそぎ落とす方法を考えよう」ということです。

そして、それは”人の全てをそれだけで見極めているわけではない”ということも理解する必要があります。

ややキレイゴトに聞こえるかもしれませんが、今回でいうと”2,000名にまで絞った中で、その人達と真剣に個別に向き合うため”にも「25,000(名)-2,000(名)=23,000(名)を合理的に見切る」という施策を実行しているわけです。

画像4


■結論(どう対策したらいいのか?)

大変申し訳ないのですが、具体的な対策案はございません。精神論ぽくなりますが、”まじめに1つ1つ選考プロセスに対して真剣に取り組む”あるのみ。

そしてその結果、落ちたら「その企業とは合わなかった」だけです。(場合によっては、いくらESやGDを頑張っても、結局は学歴NGになることもあります。)

企業毎に前工程の選考プロセスの意図や狙いは違いますのであくまで一般論ですが、だいたいは「ESやGDは“足切り”の選考プロセス」です。

特に足切りプロセスの段階では、NG理由が公開されることは稀ですので、自分自身で考えるしかない、というのが結論です。


先の就活生の方には以下の返信をしました。

 グループディスカッション(GD)では自分を出すことが求められ、「リーダーシップ力」みたいな部分が問われることもあるかもしれませんが、おおよその場合は「協調性」です。(周囲と協力しあい、仕事という場面においてもチームワークを保って頑張れるかどうか。)
 後は、基本的なコミュニケーション能力を含めた、基礎的な人間性(学歴も含めて総合的に)を見てることが多いです。なので、合否の付け方としては、「良い人に〇をつける」ではなく「ヤバい奴、これはないなーって奴に×をつける」という手法が多いと思います。
 大前提として、私はGDを企画運営するほどの規模感の新卒採用はやっていませんので、この辺りは大手企業等でGDを実際に回しているような方と出会えると仮説検証ができると思いますが、『生産性のある新卒採用活動を進め、良い学生に出会いたい』という目的はみんな一緒なので、大きくはズレないかと思います。
 場を盛り上げよう、せっかく見ず知らずの人が数人あつまって小一時間、協力しあおう、というような場があるわけです。自分の経験にもなるし、相手にとっても良い時間にもしたい。そう思う姿勢があれば、「×」はつかないのではないでしょうか。
 ●●社が学歴TOPクラスだけを求めていたらあれですが、学歴だけで落とされるケースはそこまでないと思いますので、上記の普段の意識で頑張って望んで、全力を尽くした上で落ちるならば、「相対比較で落とされた」くらいの諦めモードも大事ですよ。

ESやGDのテクニカルな部分(How to)の工夫も大事ですが、”なぜESやGDが選考プロセスに置かれているか(Why)”の思考も大事にしましょう。

もちろん、一方的に企業側の論理を押し付けるつもりはありません。

ただ、相手側の思考や都合を捉えてみようとすることは大事です。他のnoteでそれに触れたものもいくつか記載いたしますのでご参考にしてください。

1人ひとりの就活が、より良き活動になることを願っています。

※蛇足:
私(金丸)の会社である、株式会社フィエルテの新卒採用(22卒採用)「約500名の応募→5名採用」を想定しています。私自身は足切りせず、1人1人と向き合う予定です!(原則としてESやGDはやってません。)

画像5


1人でも多くの方が、笑顔で働くことを楽しめる世の中を創っていくべく、発信してまいります!!サポートよろしくお願いいたします。