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【晩御飯】何も作りたくない母が、娘に「何食べてもいいよ!」と千円渡したら

夏休みが明けた8月下旬。

夏休み疲れが溜まっていたのか、はたまた仕事が終わらぬイライラからなのか。

ある日私は、どーしても晩御飯を作りたくなくて、ついに奥の手を使ってしまった。

主人が出張で不在の、とある朝。
うちの三姉妹の前に¥3,000を置いて、こう宣言したのである。

「一人千円ずつあげるから、今夜は自分たちで晩御飯どうにかしてください。なんでも好きな物食べていいから!!」

さて、どうなったと思います?


きっかけは、SNSで見た誰かの投稿だった。

「私が小さい頃、母は時々『晩御飯に好きな物を好きなように食べていい日』を作ってくれたのが、今でも良い思い出になっていて、その日だけは晩御飯にお菓子でもアイスでも何を食べてもOKだった。」という内容の投稿。

え。
そんな事が、許されるのか…?

もちろん我が家はやったことはない。

成長期の娘3人を持つ母として、私だって食事には気をつかいたい。でも、忙しい毎日ではどうしても肉類や麺・丼物ばかりに頼りがち。本当はもっと栄養バランスに気を使った料理をサラッと出せる母でいたい。毎日の食事って、本当に大切だから。

そんな理想を掲げている私の元へ、この悪魔のような提案。


でもさ、正直、なんか楽しそうじゃない?


いや、正直によ?
ちょっとやってみたいよね。

我が家は中3の長女と、中1の次女三女の双子の三姉妹。1食くらい自力でどうにか出来る歳ではある。もしそれをやってみたとしたら、うちの子たちなら何を選ぶんだろう?

長女は甘いものが好きだから、菓子パンとかチョコケーキとか買って来て終わらすんじゃないかな?

双子は、ポテトチップスにカップラーメン、アイス、お惣菜のから揚げとか?千円って微妙だけど、足りなかったらお小遣いから出すだろうし。

それにさ、やっぱり世間のお母さんたちって、みんな毎日頑張ってると思うんです。それは自分も含めてだけど、みんな、365日のうち350日くらいは真面目に晩御飯作ってるんじゃないかな。知らんけど。

たまには「作りません!」って日があったっていいよね。1日くらい、そんな不真面目なご飯でも死なないだろうし!ま、それをご飯と呼ぶかどうかは別として。

朝、子どもたちにそれを宣言すると、子どもたちは「何それ!楽しそう!」と乗ってくれた。

我が家は田舎町の住宅街にあるので、徒歩圏内にファミレスやファーストフード店はない。コンビニと、スーパーと、ドラッグストアは歩いていける。 

何を買ってきて食べてもいい。
何を作って食べてもいい。

とりあえず、母は今日、晩御飯を作りません。
ごめん!!!

娘たちには、欲しいものがあったら放課後か学校帰りにどこかで買い物してきてねー、と伝えて朝みんなを送り出した。


15:00
授業に入る。
私は自宅で英語教室をやっているのだが、
基本、授業中は教室から出ない。

幼児さんクラスで授業していると、娘たちが帰ってきた気配を感じた。今日は部活がない日だ。教室は玄関のすぐ隣にあるので、すぐに買い物に出かけていく音も聞こえた。


16:05
授業の合間の休み時間にリビングへ戻る。
娘たちは各自部屋にいるのか、リビングには誰もいなかった。

スーパーから買ってきたと思われるものがエコバッグに入って、ダイニングテーブルの上にドサッと置いてあった。母はこっそり中を見る。

そこに入っていたのは、
のりしおのポテトチップスと、
チキンラーメンだった。

おお、やっぱりそうきたか。
母の予想は当たった。

まぁ、そうだよな。やってみたいよな。
お菓子食べて、インスタントラーメン食べて、これで晩御飯おわり!みたいな。
いいよいいよ。たまにはそれでも。

私は自分の水筒にお茶だけ補充して、また教室に戻った。


18:50
小学生クラスが終わりまた休憩に入る。
一旦リビングに戻ると、いいにおいが漂ってくる。あれ?だれか料理してるのかな??

キッチンに進むと、双子がひょっこり顔を出した。

「ママ、タン食べる!?」

タ、タタ、タン!?

キッチンへ行くと、三女がフライパンでジュージューと豚タンを焼いていた。

「今焼き上がった!ほらママ、一枚どうぞ!!」

タンをお皿で受け止めた次女がお箸と一緒に持ってきてくれたのは、味付きの塩だれ豚タンだった。

タイムセールで安くなってたらしい

「あ、ありがとう…。」

「どう、ママ!美味しい!?」

「…うん、美味しい。」

「結構おいしいよね〜!」

いや、なぜ、豚タン??


「スーパー行って、お肉食べたいなーって見てたら牛タンが安く売ってたから、ラッキー!って買ったら牛じゃなくて豚だったわ!でも、まいっか、味の違いわかんないし、タンはタンだし!」

お、おう。

タンねぇ…。
意外な選択肢。

中1女子、予想外で面白い。
ごはんもしっかり炊いてあった。

献立は、豚タンと米とチキンラーメンなのか?
で、食後にポテチか??

面白いもんだな〜と思い、私は授業に戻った。


20:30
中学生クラスも終わり、今日の授業は終了。
「ただいま〜」とリビングに戻る。

「ママ!ママの分もあるから食べて!」

と言われ、机の上を見ると






チャーハン出来てた。


「え、チャーハン作ったの!?」

「うん、ポテトチップチャーハン。」

ポ、、、ポテトチップチャーハン…?


なんじゃそりゃ。どうした三女。
オリジナル創作料理にも程があるだろ。

「何それ…?」

「え、天気の子の映画で出てくるじゃん。」

全然知らんかった。
そんなシーンあったかな。

「で、チキンラーメンも食べたの??」

「いや、サラダにした。」

サラダに!??


机の上を見たら、次女お手製のサラダも出来てた。

ボウルごと、どーーーん


キャベツとチキンラーメンと鶏ハム入れて、ゴマドレッシングで和えてある。ちょっと工夫してごま油も入れたらしい。

正直、めちゃくちゃ美味しかった。


「キャベツ千切りしようと思ったのに、思ったより太くなっちゃった!」と笑う次女。

確かに太い。バキバキ言わせながら食べた。
でも、偉い。十分千切りじゃん。

「じゃあ、あのチキンラーメンはサラダにいれたのね。」

「いや、ここに入れたのは0秒チキンラーメンね。」

「で、普通のチキンラーメンも食べたくて、普通のチキンラーメンにはお湯入れて半分こして食べた。」

チャーハンとサラダの横に置かれる、食べ終わったチキンラーメンの汁。なるへそ。


私は驚いていた。

映画の中のメニューを作ってみたかったという子どもらしい理由はわかった。

にしても、良くここまで作れたなー。
母は感心してしまった。

よく見たら、ご飯、主食、サラダ、汁物と一食が完結してるし、炭水化物に野菜と、バランスも悪くない。しかも、鶏ハムに豚タンて、タンパク質も十分。

何より、もう自力で0から献立立てて、実際に作れる歳なのかー。

しかも、なんでも食べていいって言ったんだから、別に「カラムーチョ&コーラ」とかでもいいし、「ガリガリくん&パピコ」とかでもいい訳だよ。または、お惣菜コーナーでコロッケ買うとか、お弁当買うとかさ。

それなのに、色々考えた結果、二人が
「料理する」という選択肢を選んだ事が、私には驚きだった。私だったら作らない。いや、中1の私だったら、作れなかったかも。

まだまだ子どもだと思ってたけど、親が思ってる以上に、きっと成長してるんだな、子って。ちょっと感動してしまった。


そういえば先日、三女がママ友に車で送ってもらった時「うちの子ちゃんとしてましたか〜?」と私が聞いたら、

「三女ちゃん、この前車に乗せた時も、敬語でハキハキとお話ししてくれてたし、連絡事項もちゃんと伝えてくれたし、私たち親が心配する以上にきっと、子どもたちはキチンと外の顔を持っていて、礼儀正しく出来てるものよ!」と言われた。

確かにそうかもしれない。嬉しかった。
そして、ちょっとだけ反省した。
親が心配してるよりも、子どもたちは、意外とわきまえてるのかもしれない。

晩御飯にお菓子だけなんて、本当は体に悪い事。
好きな物を食べる時も、栄養バランスは考えた方が良い事。

意外と、普段母が口にする小言は、ちゃんとこの子たちに染みてるんだな。不真面目なのは母だけでした。すみません。

いつもは、勉強しないとか、
夏休みの宿題をしないとか、
朝起きないとか、多少は、いや、たんまり小言はあるけど、でも出来ることや得意なこと、親が思っている以上にわきまえている事も、きっと私が気づいてないだけでたくさんあるんだろうな。

腹立つ事に紛れて、見失わないようにしないと。褒められることは、たくさん褒めてあげたいから。



さて、みなさんお気づきだろうか。

我が家には双子の他に、もう一人娘がいる。


長女だ。



21時頃、部屋から降りてきた長女に、
「晩御飯、結局何食べたの?」と聞いたら、

「朝、双子がチャーハンとサラダ作るって言ってたから、私の分もお願いしといた。」だってさ。

うわー、ずる賢いなー!
そんなんも、ありなのか。


長女は、妹たちが二人で歩いて買い物に行き、せっせと晩御飯を作っている間、自分だけ部屋でゆっくりしていて、出来るやいなや、リビングに下りて来てさっさと食べ終え、そしてまた部屋に戻っていったらしい。やるな、お主。

十人十色。
三姉妹も、三人三色。

面白いなー、子育てって!


追記。

朝に置いてった¥3,000は、半分くらい余った。

おつり、返ってきた。

そして、チャーハンとサラダをありがたく食べ終わってのぞいたキッチンには、元チキンラーメンの残骸と千切りというよりみじん切りのキャベツが、上に下にたくさん散らばっていた。

わぁーお


まぁ、それでも、よく頑張ったよな。
おつかれ、ふたり。

ふたりは「洗い物もするよ!」と言ってくれたけど、母の分も作ってくれたお礼に、私は(仕事終わりの疲れた体で、めっちゃ汚れたキッチンと山のような洗い物と、床にも散らばっているベビースターもどきを)片付け始めた。


第1回、好きなもの食べて良い選手権。
楽しかった!!また、やろー!

(そしてゆくゆくは、晩御飯を家族みんなの曜日担当制にしたいという母の魂胆)

母の試行錯誤はつづく!


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