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茶亭 羽當

大都会の中にひっそりと佇む美しい喫茶店。

扉を一枚隔てたその先には、街中の喧騒とは無縁の空間が広がる。中をそっと覗くと、風格のあるウェイターが颯爽と席まで案内してくれた。店内をぐるりと見渡すと、数々の愛らしい調度品が目に入る。それらの中に混じって向日葵がしゃんと活けられていたのが印象的。古めかしい雰囲気の店内であるのにも関わらず、どこか溌剌とした空気が感じられるのはきっと向日葵のお陰なのだろう。

ふとメニューに目を移すと趣のある書体で綴られた品目が心を捉えて離さない。こうしてじっくり本日の一品を決める時間は何とも贅沢である。吟味した上で、今回は響きが気に入ったスマトラマンデリンと大好きなベイクドチーズケーキを頼むことにした。

ゆったりとした時の流れにぼんやりと身を委ねている内に、お目当ての品が運ばれた。私の元へやってきたカップとソーサーはピンクを基調とし、可愛らしい小鳥が描かれたもので、私の好みにぴったりあっていた。後に知ったことだが、このお店ではマスターがお客さんの第一印象にあったカップを選んでくださるようである。こうした遊び心があるお店、なんて魅力的なのだろうとつくづく思う。
うきうきと心を踊らせながらスマトラマンデリン(なんとお洒落な名前!)を啜ると、苦味の中にほんのりと爽やかな甘みが感じられた。美しい空間で頂く淹れたての珈琲はどうしてこんなに沁みるのだろう…。そんなことを考えつつ、これまた可愛らしいお皿に載せられたチーズケーキに手を伸ばす…柔らかな味わいが広がり、思わず目を閉じる。珈琲と共に頂くと、抜群に相性が良く食後もしばし余韻に浸っていた。

…それから小1時間ほど経ち、店をあとにした。困ったことに、外に出るとたちまちあの空間が恋しくなってしまった。きっとまた近いうちにお邪魔することになるであろう。

名喫茶店は不思議な魅力を纏っている。

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