機械仕掛けの街5
「あ、アルファ?」
星野瞳はカゴいっぱいに花を敷き詰めて抱きかかえ、街を歩いている。道は殺風景で、植物一つもなく、金属で作られていて無機質だ。建物は機械仕掛けで歯車が回っている。街の中央には大きな時計塔が聳え立ち、その大きな建物も大小様々な歯車で動いている。
その時計塔の傍では唯一知っている機械人間。確かアルファと呼ばれていた。その影に気づき、近づいてみる。
相変わらず、紙が大好物のようで紙片を撒き散らしながら私と向き合う。
「おや、星野瞳。見慣れないものを持ってどうしたんだ?」
アルファは早速、星野瞳が抱えているカゴの中身をまじまじとみている。よほど珍しいのだろう。
「お花って言うんです。生物でも機械でもなく、植物という部類なんですが、お部屋に飾るも良し、紅茶に煎じても良しでリラックス効果ありありなんですよ!」
「ふぅん……」
やはりというか何というか、人間様から言われた通り、何にも興味を持っていない感じだ。すぐに目を逸らしてしまう。
と思ったが、そんなことはないようだ。
「紅茶ということは、飲めるんだな? どんな味がするんだ?」
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