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緑の少女
その少女はエメラルドの瞳を持っていた。
一際異彩を放ち、宝石のように光を反射している。
いや、「ように」ではない。宝石そのものなのだ。
義眼ではなく、生まれた時からその瞳で生きてきた。
少女に聞いた。
「私たちと同じように見えるのかな?」
少女は躊躇うこともなく言ってくれた。
「多分、同じだと思うよ。色彩も形も理解しているし。何か特別な能力があるとか言われるけど、そんなこともない。透けて何か見えるとか、遠くのものが見えるとか。そんなこともない」
「不思議だね」
「不思議かな。大勢と何かが特筆して違うだけで特別だとか不憫だとか思う方がどうかしてる。たまたま見え方が違う方向で生まれただけ」
少女は淡々と言う。
彼女はまさにそういう対象ではあった。後ろ指を刺されることもあったし、白い目を向けられることもあった。そして逆に好奇の目で見られたり、神格化されたりもした。
それは本人にとっては煩わしいことだっただろう。
「他人を信じられなくならない?」
「……そうかも。自分自身が1番信じられる」
「じゃあ私のことは?」
そう聞いた途端、少女はその光り輝く瞳を私に向けた。私は真っ直ぐに少女を見つめる。
「あなたは信じられる。だってあなた……」
少女はそのまま続きを言おうとしたが、口を噤んでしまった。
遠くから少女の名を呼ぶ声がする。
彼女は噤んだ口をまた小さく開いて、つぶやく。
「私と同じだから」
そう言って彼女は呼ばれた方向へと走っていく。
近づいた少女に気づいた人は、親だろうか。少女を呼んだくせに顔を背けて先に進んでいく。
まるで居ないもの扱いだ。
私と同じように。