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空飛ぶ物体
昔の話である。
ある侍が宴会からの帰り道を急いでいた。侍の家は海の近くにあった。
ふと、何かを感じ、空を見ると、夜空に妙なものが飛んでいた。椀を逆さまにしたような形をしたもので青白く光っていた。またなにか尻尾のようなものをたなびかせていた。この世のものと思えぬものがふわふわとゆらめきながら飛んでいるのだ。
「怪なり」
侍は刀を抜いた。
彼は刀を前に構え、天空の光る物体をしばし見つめた。
「私の酔いによるまぼろしではない」
侍は刀を大上段に振りかぶった。刀身に念を込めた。
そして一気に振りおろした。
「鋭!」
彼の念は上空にとどき青白く光る物体は真っ二つに切れて浜辺に落ちた。
侍は急に怖くなって、走って家に帰った。
翌朝、侍は昨晩あったことを確認しようと思い浜辺に行った。
砂浜に、二つに切れた大きなクラゲが横たわっていた。
近くに漁師がいたので侍はその漁師に昨晩あったことを話した。
漁師が言った。
「そりゃクラゲでがんす。クラゲっちゅう生き物は考え事に夢中になると空を飛ぶんでがんす」
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