旧伊勢屋質店台帳プロジェクト その3
神奈川大学国際日本学部歴史民俗学科の学生が、跡見学園女子大学の学生と共に、文京区指定有形文化財である旧伊勢屋質店の展示コーナーの制作に取り組んでいます。展示は2024年2月から公開予定です。実施にあたっては跡見学園女子大学地域交流センター、テイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部、地元の地域の方々などが連携して取り組む計画です。
今回は、その1、その2に続いて、その3をお届けします。
収蔵だけじゃない。保存し守り伝えるためには?
旧伊勢屋質店には、かつての質屋さんで使われていた資料が収蔵されています。ですが、資料のなかには破損したり、傷んでしまった資料もあります。
今回は、文化財の修復や保存を扱う専門企業の株式会社文化財ユニオン、株式会社上田墨縄堂さんの協力を得て、跡見学園女子大学と神奈川大学歴史民俗学科の学生が古文書の裏打ち体験をおこないました。株式会社文化財ユニオン、株式会社上田墨縄堂さんは、過去には旧伊勢屋質店の台帳修復作業もおこなっています。
「裏打ち」とは、修復する紙に薄い和紙を糊で貼り付ける修復法です。この裏打ちをおこなうことで、虫食いやシワができた古文書を修復することができ、紙を補強することで古文書を長期にわたって保存することができます。今回は古文書の修復作業である裏打ち体験の様子を紹介します。
裏打ち作業の流れ
(1)まずは噴霧器で修復する古文書を全体的にまんべんなく水で濡らします。水で濡らすことで、和紙の特性により紙の折れが伸び、平らになります。
(2)ピンセットで紙が裏返っているところや、向きを直します。
(3)刷毛を使い古文書の表面をならします。
(4)貼り付ける和紙を刷毛でならし、糊を塗り付けます。
(5)木のモノサシで和紙を持ち上げ、修復する古文書に貼り付けます。
(6)貼り付ける際に、刷毛で丁寧にシワをとります。
(7)布で丁寧に水分を拭き取ります。
(8)最後に板に貼り付け、最初に敷いてあった紙を外し、乾燥したら完成です。
以上が体験した裏打ち作業の流れです。
守り伝える技術を学ぶこと
実際に裏打ちを体験してみて、とても難しかったのを覚えています。特に、貼り付ける際に、刷毛で丁寧にシワをとるところは、手先の感覚をコントロールすることが大変で、緊張しました。
今回の体験では、実際に古文書を修復することの難しさ、職人さんの技術の凄さを随所に感じることができました。
学芸員課程を履修している私にとって、実際に古文書修復の作業を経験することができたことは貴重な経験でした。さらに、資料をあるがままに収蔵するだけではなく、修復をおこなうことで歴史史料を守り伝える場面に携われたことは、私にとって有意義な経験になりました。
ご協力いただいた、株式会社文化財ユニオン、株式会社上田墨縄堂さんには感謝を申し上げます。ありがとうございました。(歴史民俗学科2年 中川大資)