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スコッチウイスキー研究の面白さ|中村隆文
「ウイスキー」といえば、「オジサンくさいお酒」「強くて苦い」などといったネガティヴなイメージを持つ人もいれば、「なんかカッコいい」「違いが分かる人が飲みそう」という憧れめいたイメージをもつ人もいるだろう。しかし、そもそも、世の中には、ビール、日本酒、焼酎、ワインといったいろんなお酒があるわけだが、なぜ、わざわざウイスキーのような茶色の(あるいは琥珀色の)アルコール度数が40%以上もあるような蒸留酒がつくられるようになったのだろうか。その起源はどこにあるのだろうか?
その手がかりは「スコットランド」という国にある。もともと、ウイスキーという言葉は、そこの先住民であるケルト系住民たちが話すゲール語の「ウシュケバー」に由来する。つまり、ケルト系住民たちが、蒸留器を使ってわざわざアルコール蒸留をしてつくったものがウイスキーの元型であったのだが、実は、そこには錬金術的な「生命の水(アクアヴィテ)」を生み出す技法に基づく薬用酒的な意味合いがあった。それが、18世紀になりイギリス政府の監視のもと、ひそかに作られ続け、19世紀に表舞台に返り咲き、20世紀以降ブランド化されたわけで、そこにはスコッチウイスキーとそれを作り続けてきたスコットランド人たちの苦難と抵抗、そして創意工夫の歴史がある。スコッチウイスキー自体は単なるお酒ではあるが、それについて学ぶことは、スコットランドという国、そしてスコットランド人を理解するための一つの視座を提供するものである。
筆者によるスコッチウイスキー研究として、最近刊行された『スコッチウイスキーの薫香をたどって――琥珀色の向こう側にあるスコットランド――』(晃洋書房、2021)がある。そこでは、スコッチウイスキーを生み出したスコットランドの「大麦とオーツ麦」の食文化について詳しく解説している。お酒にはあまり興味がない人も(あるいは飲めない人も)、スコットランドという国を知るための一つのきっかけとして、また食文化研究というものにどういう意義があるのか、その理解のためにも、手に取っていただければ嬉しい限りである。
拙著『スコッチウイスキーの薫香をたどって』(晃洋書房、2021)の内容をまとめた動画をYouTubeにアップしてありますので、よろしければご視聴ください。