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福祉現場の実際とは?(福祉現場におけるテクノロジー活用#1)

 私たちかなふくでは、急速に進む高齢化、介護人材不足に対応すべく、持続可能な介護サービスの提供とさらなる質の向上を図るため、介護現場におけるテクノロジー活用を2010年より普及・推進しています。福祉現場のニーズと介護ロボット・ICTの作り手側であるメーカー・ベンダーのシーズをマッチングさせ、真に使える効果的な機器やその活用の仕方、現場で運用する体制整備や職員育成について、そのノウハウや事例の蓄積を行っています。長年、現場目線でのテクノロジー普及・推進を進め、今や全国にフィールドを広げる得永部長のnote新連載です。ぜひご覧ください。


知ってるようで知らない!?介護現場のイメージと実際

 「少子高齢化社会」と言われて久しいですが、社会を支える就業人口の減少が顕著である点は大変憂慮すべきことだと思います。仕事はあっても、働き手や担い手がいないために、事業規模縮小や廃業、倒産へ追い込まれる産業も多く見受けられ、人材不足の状況は、継続的な対策を講じる必要に迫られています。
 サービス業、とりわけ福祉・介護業界を取り巻く環境は特に厳しいものがあります。俗に言われる「2025年問題」やその先の「2040年問題」など、現場の備えや創意工夫だけでは介護サービスの質の向上はおろか、維持することすら困難となりつつあります。
 高齢者を支える生産年齢人口は少子化とともに年々減少。就業人口も減少の一途をたどり、医療費や介護給付費はさらなる増大が見込まれます。2025年時点ではGDP645.5兆円(医療7.5%、介護2.3%)ですが、2040年(想定)ではGDP790.6兆円(医療8.6%、介護3.1%)と規模も割合も増大すると予測されています。
 問題は介護サービスを提供する上での支出だけにとどまりません。医療や介護の担い手となる人材の供給状況も、看護職、医療技術職、介護職ともに2~3倍後半の有効求人倍率であり(訪問介護に至っては15倍以上とも言われています)、担い手不足は喫緊の課題として、国も自治体も様々な施策を講じています。例えば、「多種多様な介護人材の確保・育成」に向けた施策。介護の入門的な知識や技術の習得ができる講座や現場で役立つ研修を提供するなどして、介護・福祉業界の担い手のすそ野を広げています。「介護現場における生産性向上」も大きな施策です。介護・福祉現場におけるデジタル機器の活用を加速させるため、介護給付費算定のための加算や補助金を設け、テクノロジー活用に向けた事業所支援を行っています。また、介護サービスの提供できる量には限りがあることから、そもそも介護サービスを要する状態にならないよう、健康寿命を延ばし、要介護・要支援状態から遠ざける未病やフレイル予防といった施策も進めています。

限られた資源を効果的に活用する

 厚生労働省による雇用動向調査(2024年8月発表)によると、前年の離職率は約15.0%(前年比+0.4ポイント)、入職率は16.4%(前年比+1.2ポイント)。介護・福祉業界に目を向けると、前年の離職率は13.1%となっています(介護労働安定センター介護労働実態調査;2024年7月発表)。
 もしかしたら、介護のネガティブなイメージが先行していることで、離職が多い業界なのでは!?と見られているのかもしれません。しかしながら、実際はほかの産業(宿泊業や飲食サービス業、生活関連サービス業や娯楽業など)と比べても離職が多くない業界であることがおわかりいただけると思います。
 介護職の離職は多くなく、介護の担い手は施策の効果もあり増えている状況です。にもかかわらず、介護人材の不足推計は2025年時点で32万人の不足、2040年時点では69万人の不足と言われています。高齢者の増加は介護職の増加の上をいく右肩上がりであるため、全体的に介護人材不足が止まらないとの見方も根強い状況です。
 
 こうした背景から、国や自治体では介護サービスの提供が困難になるといった事態を勘案し、補助金や助成金等の導入支援を通じて、介護ロボットやICT、デジタル機器といったテクノロジーの普及推進を進めています。

*次回に続きます。