一人で服を買えたきっかけと、その後の変化
皆さんは、一人で初めて服を買った日のことを覚えていますか?特に発達障害を抱える方にとって、身だしなみやファッションへの関心が希薄であることは、周りの心配や悩みの原因にもなりがちです。
私も身だしなみやファッションは「キラキラキャピキャピした人のするもの、自分とは違う世界の物事」と思い、高校生までは顔は水で洗うだけ、服は1シーズンに2組をひたすら着回すといった有様でした。(顔はニキビだらけで服はいつもヨレヨレでした)
人と一緒に服屋に行っても「アドバイスをもらう」ことに抵抗感があり、結局店の隅で時間を潰しているだけでした。
そんな私が服を買うようになったきっかけは、「服を買おう!」と決心したことからではありません。
大学に入り初めての一人旅で東京を訪れ、Google Mapを頼りに街を歩いていると、偶然見つけたカフェに立ち寄りました。しかしそのカフェ、実は表参道の服屋「rag&bone」でした。未体験の空間に足を踏み入れた私は、店員さんに導かれるまま、気がつくと1本3万円近いジーンズを手にしていたのです。正直、旅の予算をすべて使い切ったことに後悔しましたが、実際に履いてみるとその履き心地に感動しました。「これが良い服というものか」「これが服を楽しむという感覚か」と初めて感じた瞬間でした。
この経験をきっかけに、服屋に臆せず入ることができるようになり、次第に店員さんのアドバイスを受け流す余裕もできるようになりました。また、店員さんに自分から質問することができるようになり、次第に「人に尋ねる」という行為そのものへの苦手意識も薄れてきました。さらに、服に合わせて肌を整えたいという気持ちが湧き、スキンケアを始めたり、化粧の基礎をコスメカウンターで学ぶこともできるようになりました。このように、一つの変化が他の変化を次々と引き出していきました。
こうした気づきから、自分が「キラキラキャピキャピした人」と勝手に線引きして距離を置いていた他人にも、同じような部分があるのだと20歳を過ぎてようやく理解することができました。そして、自分が今まで興味のなかったことも、ある日ふと自分の中に取り入れられる日が来るのだと感じました。
そのきっかけは、意識して多様な体験に飛び込み、偶然の出会いを増やすことで生まれるものです。誰かに急かされるのではなく、自分のペースでそうした変化が訪れることが、きっと大切なのだと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?