薄氷
手紙を書きたくなる夜のことです
相手の顔は思い浮かばないのです
それでも月明かりの下
書きたい気持ちばかりがよぎります
月を見て思うひとがいます
相手はちがうかもしれません
それは悲しいことではありません
誰かを思うことが私の幸なのです
カーテンを開けたくなる朝のことです
あなたの目は色を思い出せないのです
それでも陽射しの下
細めた目で風を見つけるでしょう
花を見て祈るひとがいます
相手はちがうかもしれません
それは寂しいことではありません
何かを祈ることが私の幸なのです