掃除から見る教育の違い
私は生まれも育ちもずっと日本です。
そして教員としての経歴はこんな感じ。
·青年海外協力隊 マラウイ共和国 セカンダリースクール(中高)
·日本語学校(中国系)
·J-LEAP (国際交流基金派遣)ハワイ州高校
·インターナショナルスクール(中·高/日本)
今回は、中高の掃除事情を比べてみます。
日本の場合
日本の学校での教員経験はないため、生徒として経験したことになります。
小学校低学年の頃、担任の先生が教室や廊下の掃除の仕方を教えてくれたと記憶しています。
また、その後高学年になっても、中学・高校へと上がっても生徒が掃除を行う時間がお昼休みの後にありました。先生たちは毎回ではないもの、顔を出して声をかけてくれたり、一緒に掃除をしてくれたりしました。
私の持っていた学校の掃除のイメージは
使うみんなで掃除をする
先生も時間があれば参加してくれる
マラウイ共和国の場合
今でも鮮明に覚えています。
緊張の学校初日、夏休みを終えた生徒たちや新しく入学してくる子たちが、ぞろぞろ学校の中庭に集まってきました。
そこで最初に出た指示は学校の掃除を行う事。
私が勤務した学校は公共交通機関も通っておらず、国道から1時間自転車タクシーで入っていった田舎でした。当時は電気も通っていないようなところ。建物はレンガと土壁、窓にも隙間があり、屋根はトタンです。
夏休みの間ほとんど使われていなかった校舎は砂埃だらけ。
そこで生徒たちは自分たちの使う教室を掃除することから1年が始まります。そして、学期中は毎日掃除の時間がありました。
マラウイも日本同様、学校の掃除は生徒の仕事のようでした。
学校初日、日本で育った私がまず考えたこと
・一緒に掃除をする (生徒のお手本となる行動を)
・掃除をしながら生徒とコミュニケーションを図る
何の迷いもなく、むしろ生徒と話をするチャンスだとばかりに図書館の掃除に混ぜてもらっていると校長から直ぐに呼び出されました。
「威厳がなくなるから掃除をするな」
見ると、どの先生も全ての教室が見渡せる中庭に集まって紅茶を飲みながら談笑中。誰かに指示を出したい場合は、そこから一歩も動かず生徒を使って必要な生徒を呼び出します。
質問のある生徒はそこに来て膝をついて話しかけます。
勤務初日早々にショックでした。
なぜ?
中庭にいるよう指示をされ他の教師の談笑を聞いているのは、とても居心地が悪かったです。
一生懸命掃除をしている生徒を横目におしゃべり、指示だしの輪にいる自分が凄く偉そうにしているように感覚に陥り、
悔しい
こんな風に、こんなことで威張っていたくない
たかが掃除と言われればそれまでですが、歯を食いしばりたくなるほど嫌な気持ちになりました。
マラウイでは、とにかく学習面だけでなく全てにおいて教師>生徒です。
教室だけでなく、職員室を掃除するのも生徒
教員のおやつを買い出しにいくのも生徒
生徒に掃除をさせる
一見日本とマラウイ同じことをしているように見えますが、その意図は全く違うようです。
日本、特に義務教育の小中学校では教育の一環として性質が強いと思います。
マラウイは単に生徒を使っているだけ。教育より威厳が大事。言い方は悪いですが奴隷にしているだけの印象です。
アメリカの場合
ハワイ州の高校で一緒に働いていた教師はJETプログラムで2年日本の学校で働いたことのある人でした。そして、彼は、海外でも評価されている日本の学校の掃除文化に感銘を受けている一人でした。
そこで、勤務先の学校でも生徒が教室、学校の施設を掃除する時間を設けてはどうかと校長に提案することに。
校長からの返答は
「虐待になるからできない」
生徒に掃除をさせることが虐待?!
そうか、アメリカではそんな風に捉えられるのか、と衝撃でした。
掃除を強要することになる点
汚いものを触らせて病気になるリスク
これらを考えると、全員参加での掃除はできないそうです。
アメリカの学校では、別途掃除の人が雇われています。
それもあり、学校の施設をきれいに使おうという意識は生徒にはありません。
特にランチ後、1m先にゴミ箱があっても階段にスクールランチを放置する子がたくさんいます。
朝はそれなりに綺麗になっていますが、午後は至る所に食べ残し、飲み残し、ごみが放置されています。
勉強する人(生徒)
学問を教える人(教師)
心のケア・進路指導(カウンセラー)
掃除の人
スポーツのコーチ
などなど、それぞれ学校にいる意味、役割があり、それ以外のことを他人に求めることはできない。個人主義、分業主義がよく表れているように思います。
それにしても、自分で出したゴミくらいは・・・と思ってしまうのは日本人だからでしょうか。
インターナショナルスクールの場合
日本でも殆どのインターナショナルスクールでは、掃除の人が雇われています。アメリカと同じです。
保護者の国籍・文化も様々なので、広く色々な文化に適応するような規則になっている学校が多いのではないでしょうか。
日系のインターナショナルスクールかアメリカ系、イギリス系かなどでも変わってくると思いますが、外国資本の学校では特に生徒による「掃除の時間」がある学校は少ないと思います。(むしろほぼ0?)
ここからは、私が勤務した学校の話です。
この学校でも生徒による一斉の「掃除の時間」はありませんでした。
むしろ、教室をきれいに保つのは、教師の仕事という雰囲気がありました。
なぜなら、これは日本の学校と大きく違うところですが、教師が教室間を移動するのではなく、生徒が教室間を移動する形式だからです。(アメリカも同様のシステム)
結果、生徒が教室をきれいに使ってくれないと、次の授業に支障がでて困るのはその教室の教師です・・・
そのため、授業が終わる少し前に、使った机回りを掃除させる教師は多かったように思います。(全員ではありませんが)
アメリカでも同様の雰囲気はありました。しかし、教室を一歩出た先、廊下やトイレは我関せず。
このようなシステムでは、生徒は自分の机・自分の教室がないため、自分の責任できれいにという意識は持ち辛いと思います。
机の上に消しゴムのカスが大量に残っていたときは、よく生徒に「先生、ちゃんと前のクラスの子たちに掃除させてよ~」なんてよく突っ込まれていました・・・
教師によっては帰りの会のときに掃除の時間を作っていました。
教師の国籍も様々なので、その理由も様々。
・みんなで使う教室だから
・後で自分が片付ける、掃除するのが面倒くさいから (教師都合)
などなど
インターナショナルスクールもアメリカも同じような感覚かなと思います。
生徒に強制はできない
しかし、教師と生徒間での同意があれば自由に自己責任で
ただ、日本のインターナショナルスクールはみんな日本に暮らしているからか、少しだけアメリカより生徒も掃除に参加する/させる意識が高いように思います。