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普通にいる

老人ホームで働いている女性から聞いた話
お二人から聞いた話なんですが、aさんとbさんは違う老人ホームで働いている。
aさんは現役で働いており、bさんは結婚、子供を出産を機に老人ホームはもう辞めていた。
「老人ホームで何か不思議な事や、怖い事はありますかと」と尋ねた。
「深夜、昨日、亡くなった人が廊下を歩いていたり、誰もいないのに、明らかに人の気配がしたりするよ」とaさんが答えてくれた。
bさんも続けて「そうそう、私もよく見たり、気配が感じたりしましたよ」と続けた。
「怖くはないんですか?」
「最初の頃は怖かったけど、慣れて来て、今は全然だね」
「私も、そうですね、もう普通にいると思っているので怖くはなかったですね」と続けて話してくれた。
「あっ、一度だけ肝を冷やした事があった」とaさんが教えてくれた。
数年前の出来事、aさんは夜勤で新人の方と一緒だった。
新人の方が見回りの時間になり、aさんは事務作業をしていた。
十分くらいした頃、新人の方が急いでaさんの元に帰って来た。
「大変です!、入居者の人が外に出てます!」
「えぇっ!ほんと、急いで行くね!」
老人ホームで入居者の方が勝手に外に出て、怪我や亡くなってしまったら、施設側に責任を負う形になる。
以前、他の施設で事故があり、会社から十分に注意してほしいと言われていたと事だったので緊張が走る。
aさんは急いで、入居者を見たという場所に向かったのだが、到着した時は姿がなかった。
「誰か分かる?」と尋ねる。
「すいません、入ってまだ浅くて」と暗い顔で答える。
「どんな格好してた?」
「おばあさんで、紫のカーディガンで胸元に花の刺繡があって、少しぽっちゃりした」
「眼鏡かけてた?」
「はい!眼鏡かけてました」
「そう、多分ね、あなた来る前に亡くなったtさんだね」
「あっ、はい、えっ?」
「戻って、部屋の確認しましょう」
「はい、…」
新人の方と入居者の部屋を見回る。チェックが終わり、全員いる事が確認が取れ、安堵する。
「よくあるんですか」と曇った顔でaさんに聞く。
「亡くなった方が部屋、廊下に出たり、誰もいないのに気配がする事はしょっちゅうあるかな、まぁ、慣れるから」と伝える。
「はぁ、」と声にならない相槌が返ってくる。
「でも、今回は焦ったよ!出てきてくれるなら、室内で出てほしいね」と笑いながら話を聞かせてくれました。
aさんに、もし幽霊見たいなら、紹介しようかと言われたのですが、顔を立てに振る事は出来なかったです。

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