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冷たい炬燵

数学の先生から聞いた話
中学一年生の時に数学の先生が授業が早く終わり話をしてくれた。 
仮に井坂先生とします。
井坂先生は男性、二十代後半と若く、熱血タイプの先生で、生徒から人気がありました。
授業も分かりやすく、数学が苦手だった僕も、井坂先生の授業は分かりやすく、楽しかった思い出です。
何故、怪談話の流れになったのかは、覚えていませんが聞かせてくれました。
季節は冬だった。
井坂先生が大学生の時に深夜ドライブに行く事になった。井坂先生と友達二人の計三人。運転は井坂先生がしていた。場所は決めず、ただひたすら車を走らせた。
大学時代は「暇を持て余していて、よく深夜ドライブをしていた」と井坂先生が言っていた。
ドライブをしていると、友達のa君が「近くに心霊スポットがあるみたい」と呟いた。
「へぇ」と井坂先生は興味がなさそうだった。
もう一人の友達のb君は「面白そうだから、行こう」と乗り気だった。
井坂先生は乗り気ではなかった二人に押し込まれる形で心霊スポットに行く事に賛同した。
心霊スポットの場所は廃病院。一つ一つの部屋を入り、二階の部屋でも同じ事をしていくと、最後の部屋で子供幽霊が出るとの事だった。
よくある、都市伝説めいた話だと井坂先生は思った。
廃病院前についた、夜中もあってか中々、の怖さ
車から降り、廃病院に入っていく。
明かりは三人ともタバコを吸っていたので、ライターで各々照らす形になった。
一階の部屋から、入っていく、屋内は取り残された椅子、机、瓦礫の破片、ゴミ、などが散乱していた。
廃病院なのだが、医療器具などは一切、なかったという。
一階の探索を終え、二階に上がっていく
「あんまり、怖くないね」とa君がつまらなそうにいった。
井坂先生も怖いという感じがしなく、「そうだね」と空返事をした。
階段の踊り場に差し掛かり、また階段を上がっていく。
井坂先生は本当にここが心霊スポットなのかと、ぼんやり考えながら階段を上っていった。
先頭で階段を上っていた、b君が急に驚いた様子で足元を見た、見た瞬間、奇声を上げ、階段を急いで下りてきた。
「なになに、どうした?」と声をかけたがb君は意に介さず階段を下りていく。
井坂先生とa君は顔を見合わせて、急いでb君の後を追っていく。
階段から下り、入り口から外に出っていたみたいだ。
外に出ると、車の横で息を切らしながら足元を見てるb君がいた。
「どうした、何かあった?」と井坂先生が聞く。
b君が「あ、あし、足を掴まれた」と声が震えていた。
「最初はいたずらでお前らのどっちかが足を掴んだのかと思って足元を見たら、白い手が足首を掴んでた」と怯えてる様子だった。
「今は大丈夫なの?」かとa君が尋ねる。
「もう、掴まれてない、はやくここから出よう」と焦っている。
井坂先生が急いで、車のエンジンをかけ、その場から走り去った。
車内は重い静寂が流れる。しばらく車を走らせてると、足を掴まれたb君が口を開く。
「二人には申し訳ないけど、今日、俺ん家に泊まってくれない」かと頼まれた。
事情が事情だけに、井坂先生とa君は二つ返事で了承した。
b君のアパートについた。六畳一間の部屋は寒々としていた。
b君はストーブと炬燵をつけ、やかんでお湯を沸かしはじめた。
井坂先生とa君は炬燵に入り暖をとる、b君が熱々のコーヒーを運んでき、三人で黙ってコーヒーを啜る。
体が暖かくなって、少しばかりの緊張が解けてきたのか三人は廃病院の出来事を話をし始めた。
「足を掴まれたって言ってたけど、勘違いじゃない」のかと井坂先生が質問した。
「いや、明かに手で掴まれてる感触だった」とb君が言った後に続けて
「足元を見たら白い手が掴んでいた」とb君が重々しく言った。
「白い手ってなんで分かったの?足元、暗かったじゃん」とa君が聞く。
「それは、なんて言えばいいのか、光って見えたって言えばいいのか…」かと曖昧な感じの返事だった。「でも絶対に白い手だった」と確信をもつ強い言葉でb君は言い放った。
「そうか」とa君は空返事をして、「お祓いとか行かなくていいのかな」とぽっつりと呟いた。
井坂先生が「何かあったら行けばいいんじゃない」と返した。
そこから三人はしばらく談笑をして、男三人、炬燵で雑魚寝する事になった。
冬だったので炬燵は点けたまま、ストーブは消して寝に入る。
井坂先生がうつらうつらしていると、足元が段々と冷えてきて目が冴えてしまった。
a君が「炬燵の電源切れてるよ」と不機嫌な様子で部屋の主のb君に言った。
「ちょっと、待って」と眠たげな声で応答し、確認してる様子だった。
井坂先生はぼんやりと会話を聞いていた。
「あれ、スイッチはオンになってるのに可笑しいな」とb君が呟いている。
右側の炬燵布団がめくられて寒い空気が炬燵に入ってくる、b君が炬燵めくって中を確認しているのが分かった。
炬燵めくった瞬間、b君が奇声を上げ、急いで炬燵から体を出した。
井坂先生は何事かとぼんやりした中、炬燵の中を覗き込む。
白い手が両足を掴んでいた。真っ白い手首、そしてなぜか光ってる様に見えた。
井坂先生は驚いて、炬燵から体をだした。左側で寝ている、a君は状況が飲み込めていないようだった。炬燵の中を覗き込むと同時に驚いた様子で炬燵から体をだした。
a君が「白い手が」と震えた声で呟いた。「部屋からでよう」とb君が焦りながら言ってくる。
a君、b君、井坂先生は急いで上着、財布を取り、部屋から飛び出っていった。
三人は車に乗り込み、急いで車を走らせた。後部座席に友達二人が乗り込んで、足元を確認している。
「手はない」「そうだね」と覇気のない会話が流れる。
「とりあえず、ファミレスに行くから」と井坂先生が言う。
「うん」「分かった」とまた覇気のない返事が返ってくる。
また車内は重い静寂が流れる。無言のままファミレスの駐車場につき、店内に入って行った。時刻は三時過ぎ。人は殆どいなかったが店内の明るさと暖かさに三人は少し安堵した様子だった。
三人は席に着き、重々しい口を開いていく。「bが言ってた白い手が足首を掴んでた」とa君が言った。「俺も掴まれた」と井坂先生が言った。
b君が「どうしよう、連れてきちゃったのかな」と弱弱しい声で呟き、続けて「家に帰れないよ」と悲観のこもった声で言った。
a君が「朝になったら、お祓いに行こう」と提案した。井坂先生とb君も同意して、朝までファミレス時間を潰した。
朝になり、近場の神社に行く事になった。神社につき事情を話して、お祓いをしてもらう事になった。
お祓いが終わった後、神主の方にこっぴどく叱られ、「二度と心霊スポットに行くな」と釘を刺された。
三人は平謝りしをして、神社から去って行った。
b君は神主から塩を貰い、「しばらく玄関に置くように」と言われ、塩を玄関に置くようになった。
お祓いがきいたのかそれ以降、a君、b君、井坂先生に白い手が足首を掴む事はなくなったという。

ちょうどその頃から、怖い話に興味を持ち始めた時だったので、興味津々で聞いた記録があります。
細かいディテールは忘れてしまっていると思うのですが、当時はとてもインパクトがあり、より色んな怖い話を聞きたいと思える出来事でした。
井坂先生は先生をしながら、司法試験の勉強をしていたみたいだったのですが、無事に受かっているのだろうか。

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