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二宮金次郎の像

sさんの実体験の話です。
学校七不思議のを著書で読んでいた時に、ふと自分が通っていた学校の七不思議って何だっけと思い返してたら、思い出したそうです。
sさんが通っていた学校の七不思議は、トイレの花子さん、夜中校内を歩き回る人体模型、テケテケ、音楽室の肖像画が動く、開かずの間、深夜のプールに人影が出る。と一般的な七不思議。
でも一つだけ、変わった話があったのを思い出した。
それは、校庭に二宮金次郎の像があったのだが、二宮金次郎が担いでいる薪が増えるという話。
二宮金次郎の像が校庭を走るという話は聞いた事が、あるが薪が増えるの聞いた事がなかった。
小学五年生のときだったと思う、もしかしたら多少前後はあったかもしれない。
朝、教室に登校したら、すでに持ち切りの話だった。
「えっ!まじで」「なにそれ!」「増えるの?」「確かめよう!」と興奮してる声があちこちから飛んできた。
状況が呑み込めなかったので、仲が良かったa君に話を聞く事にした。
「どうしたの?何があったの?」
「b君が話をしてくれたんだけど、二宮金次郎の像あるでしょう」
「うん、正門の所にあるね」
「薪を背負ってるじゃん、朝、12本あるんだけど、帰りの下校の時に確かめると13本になってるんだって!」
「誰か、見たの?」
「b君のお兄ちゃんが見たんだって、明日、確かめて見ようよ!」
「面白そうだね、分かった、明日、確かめよう!」
a君と約束してるとチャイムが鳴り、席に着いた。
二宮金次郎の像は正門の付近に立っている。正門から登校する生徒には目に付く所にあった。
sさんとa君は正門側から登校していたので、確かめる事は容易にできた。
下校時間になり、a君と再度、約束をする。
二人とも、怖いという感情は一切なく、好奇心でいっぱいだった。
下校の時は二宮金次郎の像をあまり見ない様にして帰って行った。
翌朝、登校時になり家を出る。
sさんの家から学校までかなり距離があり、(時間にして50分はかかった)朝は少しばかり憂鬱なのだが、その日はとてもワクワクしながら通学路を歩いた。
学校が見える所まで来た。緊張感が増して来て、「もしかしたら薪の数が13本だったら、どうしよう」と色々と思い更けていると、等々、二宮金次郎の像の前まで来た。
恐る恐る、薪の数を数える。「1、2、…7、…10、…12」12本だった。
「よし」と心の中で頷き、二宮金次郎の像の前から離れていく。
教室に入る。a君が先に登校していた。ランドセルを背負ったまま、a君の元に駆けていく。
「12本だった!」興奮気味にa君に告げる。
「俺も12本だった!」a君も興奮気味で返答が返ってく。
「帰り一緒に確かめよう」
「うん、分かった!」と約束をした。
クラス中でも同じ話をしてる、子達が何グループかいた。ちょっとした一体感があり、より気持ちが高鳴った。
放課後になり、下校の時間となった。sさんはa君と一緒に二宮金次郎の像まで向かっていく。
「なんか、緊張するね」
「他の人達はどうなんだろうね」
「増えてたらどうする」
「その時はその時だよ」
他愛もない話をしていると、二宮金次郎の像の前まで来た。クラスで話をしていた子達の姿はなかった。
「よし、数えよう」「うん」緊張感が増してくる。
「1、2,3,4,…8,9,10,11,12,13、13!」
13本ある、数え間違えたのと思いもう一度、数える。
「1、2,3,…10、11、12、13」
13本ある。数え間違えではない、a君の方を向く。
a君は茫然と立ち竦んでいる。
「a君、13本あった」
「僕も数えたら13本だった」
「二人で数えてみない?」
「そ、そうだね、それだと確実だもんね」
「じゃあ、数えていくね」sさんは薪を指をさして一緒にa君と数えていった。
「1、2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13」
二人で数え終わった。13本だった。二人共、その場で立ち竦む。
段々、気持ち悪さと怖さに包み込まれていく。数を確認する前まであんなに楽しかったのにと打ちひしがれていると突然、a君がその場から走って去ってしまった。
sさんもa君を追うようにその場から走り去った。
a君は分れ道の所で息を切らしながら止まっていた。
sさんが追いつき、息を切らしながらその場に止まった。
二人共、何も言うべきか言葉を探っている。
a君が口を開ける「じゃあ、また明日ね」
「うん、また明日」とお互い精一杯の言葉を交わし各々の帰路を歩いていった。
翌日、教室に入ると僕達と同じ様に二宮金次郎の像の薪を数えた子達が話をしていた。
「増えてなかった」「嘘じゃん」「ほんとにb君のお兄ちゃん見たの」
など他に見ていた子達は薪の本数は増えてなかった。
a君と目が合う、「おはよう」「おはよう」とそれだけ交わして席についた。
二人共、何故か薪が増えていた事は他言無用と暗黙の了解だった。
それから、a君とはあまり話をしたり遊ばなくなったのだが、時間が経つにつれ、以前のような関係性に戻っていった。
関係性は戻ったが、二宮金次郎の像の話は一切しなかったそうです。


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