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幽体離脱

sさんが体験した話
sさんが小学五年生の時の出来事。
sさんが通っていた小学校では数か月に一度、児童だけで奉仕作業をしていた。
活動の内容は、校庭、学校の周り清掃活動。休み日ではなく五時限目と六時限目の時間をあてて作業をする事だったらしい。
特に、グループに分けて作業はせず、各々、好きな場所で作業が出来た。
sさんは体育館横にある、駐車場で作業をする事にした。
手袋をして袋を持ってゴミを拾う。タバコの吸い殻、菓子パンの袋などを黙々と拾っていく。
十分程度、作業していたが違和感がわき始めた。
誰一人とも会わない。
駐車場はそれなりに広く、手前に第二グランドもあるのだが誰一人もいなかった。
その時は不思議というより、「こんなに広い場所をなんで僕一人で作業しないといけないんだ!」と苛立ちと焦燥感に苛まれた。
それでも、作業はしないといけないと思い、また再開し始める。作業をしていれば誰かしら来るとも思った。
でも一向に誰も来なかった。ただひたすら一人でゴミを拾う。なんだがとても悲しくなってきた。
屈んでいたのだが、立ち上がり下を向きながら、感傷に浸る。遅効性の毒みたく段々と体を蝕み、気分が落ち込んでいく。
ずっと直立したまま、何も考えないでぼーっとする。意識が遠のく感覚がする。
そうしていると、視点が変わる。直立した自分を上から眺めている。
段々と、自分が小さくなっていく、俯瞰の景色が広がる。
体育館の屋根、校舎の屋上、近隣の家の屋根などが見える。
段々と上がっていっているのだ、上がって行く度に何だが高揚感が高まり、気持ちがいい。
どこまで、上がっていけるのか、ずっと上がっていければいいのにと思った。
自分が小さく見える。最早この高さからでは誰とも認識が出来るものではない。
まだまだ、上がって行く、自分の思いとは関係なく上がって行く。
ぼんやりとこの現状を受け入れてたのだが、ふとこのまま上がって行ったら、帰れなくなるんじゃないかと思った。
いままでの高揚感から一気に緊張感が走った。
どうすれば、下に降りる事が出来るのだろうか、思いとは裏腹に上がり続ける。
体は動かす事が出来ない。目を瞑って、ただ「ここから下して!、ここから下して!」涙目で唱える事しかできなかった。
現状を確かめるため、恐る恐る目を開ける。
駐車場の砂利が目に入る、一人称視点、戻ってくる事が出来ていた。
驚きと安堵だったが意識はとてもぼんやりとしていた。
声が聞こえる。周りを見てみると4グループほど児童がゴミを拾っていた。
さっきまで誰もいなかったのに、なんで急に人が?と混乱したまま、チャイムが鳴り、奉仕作業が終わってしまった。

それ以降はそういった体験はないとの事でした。
幽体離脱のやり方を何個か聞いた事があるのですが、帰ってこれなくなる事があるらしので、僕は怖くて出来ないです。

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