嫌われ松子の一生
お薦め度:.★★★★★.
前作『下妻物語』よりもさらに濃くさらにビビットな作り。原作つきとは思えないほど映画的なストーリー展開・ミュージカル調に表現される心理表現。どれをとっても満喫できる作品でした。
宣伝媒体を読んだ時はもう少し重たく湿っぽく展開していくのかと思っていたのですが、最期にオチを呈示し回想録の様に進んでいくので、松子の人生そのものはとてもヘビィなのに何故か笑える。だけど、そのあまりの不器用な人生にやっぱり涙がこぼれてしまう。作りとしては『ムーラン・ルージュ』に一寸似ているかも。
松子の波乱に満ちた…というよりも転落の人生はいかにも女性的で、同性としてはかなり身につまされる物がありました。(男性がこの映画を観るとどう思うのかな?聞いて見たい気もします)なんで彼女はこんなにも不運でぶきっちょでダメダメだったんだろう。彼女が作中で何度も口にする「なんで?」という語りかけはそのまま私自身の問いかけでもありました。
「人間の価値は何をしてもらったかではなく、何をしてあげたか、だ」というセリフが出てきますが一心に愛を捧げ続けた彼女の価値は本当になんだったんだろう。中学生に撲殺されることが彼女の価値だなんて思いたくないし、彼女の最期が本当に幸福感を胸に抱いて逝けたのか私にはどうしてもどうしてもわからない。
小さい頃から愛されることに一生懸命だった彼女。なのに何故かまっとうに愛し返されることが無かった彼女。白雪姫やシンデレラなんて高望みはしない、何も起こらないような一平民並みの幸せも得られない。なんでこんなにダメな男にばかり引っかかってしまうのか。
テレビでそんな話を耳にするたびに「男を見る目が無いからなのかな…」と思っていたのですがこの作品を観て私は何となく一つの回答を得た気がしました。
愛するに値する対象でさえあれば、自分の要求を満たしてもらう(愛し返される)ことはどうでもよくなる…もっと辛い言い方をするならそうなることを諦めてしまうのでしょうか。
その意味では「追っかけ」と言うものはその最たるものですね。最終的に光GENZIの追っかけに走ってしまうのも極自然な心境の流れなのかもしれません。
彼女の人生は本当に悲惨で辛くて辛くてたまらないのですが、でも面白いところは最高に面白くて笑ったり泣いたりとっても忙しい作品。邦画のある一方向としてとても完成形に近いなと思います。下手したらもう一度位見ちゃうかも。
余談ですがこの作品は昭和後期から平成までの社会的時代背景や風刺が非常に聞いています。オイルショックやユリ・ゲラー、スペースシャトル、都会のカラス問題などなど…その辺も注意してみるとまた楽しいかと思います。
日本公開日:2006/05/27
【ストーリー】 不幸って何?女の子なら誰だって、お姫様みたいな人生に憧れる。
昭和22年・福岡県大野島生まれの川尻松子も、そのひとり。でも、現実は……
20代で教師をクビになり、エリートから転落して家を飛び出しソープ嬢に。やがてヒモを殺害して刑務所へ……
(2006,06,06)/(中・感想)
原作など読んでみた感想
嫌われ松子の一生
山田 宗樹 (2004/08)
幻冬舎
会社の同僚が購入・読了したと聞いたので頼んで貸して頂きました。 いやー「赤と黒」を読んだ後だけに気持ちいいほど読みやすくさくさく進みますね。 今日借りてきたのですが上巻は読了しました。 個人的ポリシーとして「映画は映画だけで、なるべくそれ以外の情報は入れない」という考え方なのですが、今回はちょっと勘弁。 「原作どおり」という意見が多かったのですが、結構脚色がおおい映画だったんですね。 細かい点がいろいろ前後していて、映画らしいと言うかドラマテックな展開になっているのが良くわかりました。 松子さんの印象もかなり違いますね。 心理描写が多いせいか、なんだか妙にどろどろと暗い面が多い…(映画はミュージカルタッチなのでその点が救われている気がしますね) 性に対する堕落(なんかもっと良い言い方があればいいんだけどこれしかおもいつかねえ)感が生々しくて正直えぐいです。 これからまだまだ下巻で波乱の人生を歩むことになる松子さんですが、さてはて映画とはどれくらい心境が違うのか…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?