飛行機はいいね。
飛行機は良いなぁ、と思う。
帰省のたびに飛行機を使う。わたしひとりで娘たちを連れていくのでそれはそれは大変なのだが、それでも毎回、飛行機は良いなぁと思う。
ヒィヒィ言いながら、大荷物と娘たちを抱えカウンターへ向かう。巨大なトランクを預けた後の解放感が最高だ。窓口の素敵な女性が、細い腕でひょいと荷物をベルトコンベアに乗せる姿に、毎回感動する。
空港で働く方々というのは、どこを誰を見ても無駄がないというか、プロフェッショナルな空気で溢れている。そんな姿に胸がジーンとする。
娘たちは、機内のドリンクサービスを至高の一杯だと思っているらしく、小さなカップに注がれたジュースを、それはそれは慈しみながら飲む。ひとくち飲むごとにドリンクホルダーにきちんと収め、ちびちび味わう。美味しい…!といちいち呟く。空の上の一杯は、地上のそれとは一味違うらしい。
着陸が近づく時が、特に良い。高度が下がり始める。すると、乗客である大のおとなたちが、一斉に窓を覗き込む。
まるでミニチュアのような街並み、流れる車、人々の営み、これから降り立つ地を、熱心に俯瞰している。
窓枠にかじりつくおとな達の後頭部が並ぶ。そんな後ろ姿を見るといつも、人間ってかわいいな、と思う。
そして毎回、飛行機の外側から、あのおとな達を見てみたい、と思う。どんな顔で、外を、下を見ているのだろう。それは絶対にかなわないのだけれど、想像するだけで楽しい。
ズン、と車輪が地に着く振動を感じた瞬間、機内に流れる安堵感も良い。到着アナウンスが流れみな一気に弛緩する感じも、妙な一体感があって良い。
そして到着口。これはまた違った良さ。
到着ゲートの向こう側は違う世界。「向こう側」の人たちの姿。そこは人待ち顔で溢れている。これが良い。不特定多数の乗客の中から、出迎える相手を探す人たちの顔が良い。首を伸ばして、集中し「こちら側」に目線をめぐらせている感じ。見つけた瞬間、表情が変わる。ほころぶ。あの一瞬が見られると、すごく、良いものを見た気がする。
わたしは自分の出迎えを探すふりをしながら、見ず知らずの人々の、待ち人を探す真剣な顔を眺めている。
飛行機にかかわる人たちも、あの空間も、とても良いんだよなぁ。