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都知事選2024非公式CMを勝手に作ってみた動画投稿者の制作秘話


2024年東京都知事選の立候補者であった石丸伸二は、YouTubeやTikTokなどの動画によるPR戦略が話題となりました。

公式なものだけでなく非公式の動画も多く、総再生回数は2億回といわれています。

私が作成した非公式の動画は、選挙期間中の合計で約32万回再生程度ほどではありますが、いかにして石丸伸二を勝たせるべく考えていたのか、その思考全体を記録もかねて解説します。他の候補や次回以降の選挙で再現性がある保証は一切ないことはご理解いただきたいと思います。

今回解説に取り上げる動画はこちらです。YouTube版は一番下にリンクを置きます。

動画制作環境

こちらの動画は、スマートフォンで作成しています。

機種:iPhone 13 Pro
アプリ:CupCut(有料版)

普段はAdobe Premier Proを使用していましたが、ボランティア活動から帰宅した後に、ごろ寝しながら身体を休めつつ作りたかったのでスマホでの作成作業としました。

制作時間

8時間程度。
選挙終盤7/3の夜に作成開始し、翌7/4早朝に公開しました。アドレナリンが出まくっており、徹夜でした。1秒でも早く公開して1回でも多く回さないと、一票を逃してしまうかも、という気持ちでした。

前提の思考

支持者の動画戦略としての多くは、ライブ配信や、演説の切り抜きなどの形式でしたが、私の場合は非公式CMという形をとりました。

理由として、既に相当数の配信や切り抜きが上がっており、同時接続者数も毎回数千~数万と新規参入するにはレッドオーシャンであり、充分すぎるほどでほぼ飽和状態だったからです。

また、個人的にはボランティアとして最も候補者から遠いところ、かつ一票につながる確率が比較的高い確認団体ビラのポスティング作業と両立する手法が必要でした。

この観点で、以下2つが要件でした。

①自身が動いていないときでも回るように、1つの動画が多く回数が回る、汎用性の高いものを作りたかった。

②演説を継続的にチェックする工数、数多く作成しなければならない工数など時間的拘束を避けたい。

結果として、演説を毎回チェックする時間が惜しく、自分が町を走っているときにも効果が最大化出来る何かを模索した結果がCMという形態でした。


非公式CM第1弾の各シーン制作意図

いくつか先んじて動画は公開していましたが、本格的には告示日6/20から数日経った、7/3に非公式CMの編集を行い、7/4に一つ目を公開しました。

こちらは後援会の公式Xでも紹介いただき、YouTubeとTikTokだけではなく主にXで広がりを見せることができました。

以降の解説は随分とボリュームのある文量になるのですが、これらの理由で一球入魂するために設計した内容になります。

本来はもっと気軽に短時間で作成するのが、動画投稿者として継続するコツだと思うので、初級者向けではありませんし、プロはさらに考えに考え抜いて作成するため、時間が限られている状態での中途半端な例だと思って頂ければと思います。


テーマ:「見たことのない選挙」

まず、「東京都知事選の非公式CMを作ってみた」という立て付けにしました。

見れば石丸伸二さんだということは分かるのですが、「今回の都知事選は、見たことのない選挙だ」という驚きと衝撃を表現したいと考えていました。

選挙と言えば、政治家たちが小難しい話を演説するというイメージがあると思いますが、全く違う手法で街頭演説を立ち回ったのが石丸伸二です。

石丸伸二は「政治は楽しい、選挙を楽んでください」と聴衆に語りましたが、これは従来の退屈な政治のイメージや、国政政党による腐敗した政治に失望している有権者へもう一度政治への興味を取り戻そうとした意図がありました。

また、「東京都民の奮起に期待しています」「かっこいい大人になってみせましょう」と聴衆に語り、応援してもらうはずの立候補者が逆に有権者たちを応援するという構図を演出して見せました。


従来の政治家は「私に一票を」「私を勝たせてください」というお願いがメインでしたが、敢えてその言葉は使わずに、有権者こそ民主主義の主役であることを強調しました。

これは石丸伸二の標語である「政治屋の一掃」につながります。石丸伸二のいう「政治屋」の特徴の一つとして、選挙の時だけ下からものを言い、当選したら上から目線で裏金や都合の良い政治を行ってきた政治家が挙げられます。

そうした古い従来の「いわゆる政治家」へのアンチテーゼとして「政治屋の一掃」を掲げている以上、当然自身はその逆をいかなければなりませんでした。

このように今まで全く違う選挙として2つの特徴があったことが分かります。

①政策論を語りかけるよりも、選挙を楽しむことを訴えた
②一票のお願いよりも、有権者が主役であるということを訴えた

この2つを取り入れつつ、それこそが今回の都知事選自体の最大の特徴であるというアピールをしたいがために、「今回の都知事選は、見たことのない選挙だ」というメッセージを込め「都知事選の非公式CM」と謳うことにしました。


選曲:青のすみか / キタニタツヤ

石丸伸二が漫画賢者であることが有名なことから、何らかのアニメから楽曲を取りたいなと思い、昨年夏に話題となり紅白でも演奏された呪術廻戦OP「青のすみか / キタニタツヤ」の歌ってみた用音源を採用しました。

アニメや曲が夏を彷彿とされ、都知事選の時期にもぴったりであり、爽やかなイメージは石丸伸二のルックスに合っていること、アップテンポであり「選挙を楽しむ」ということが表現できそうだったと考えました。

石丸伸二が引用することが多かった鬼滅の刃などのテーマ曲も検討したのですが、イメージに合わず断念しました。

CMであるので、フルコーラスではなく、アニメOPと同じワンコーラスに楽曲は編集させていただきました。


映像:スライドショーと音楽のシンクロ

映像の素材は後援会が公開した写真を使用することにしました。

後援会の方々が撮影された写真がそもそも素晴らしいものばかりであり、私自身が、Xに投稿された写真をスライドショー感覚で眺めるだけでも、酷暑の中で街頭演説で懸命に訴える石丸伸二の本気を感じることが出来たからです。

この「スライドショー感覚」を音楽と一致させて強化することで、テーマを表現したいと考えました。

ボランティア参加者も5000名を超え、日本全国から総出で応援されていた石丸伸二さん。7/3の時点ですでに写真を見るだけで泣けてくるという選挙運動と化していましたので、この事象をまだ気づいていない人に伝えたいという思いもありました。


映像:イントロ~Aメロ(~0:34)

アバンタイトルまでの激しくも静かさもあるイントロでは、石丸伸二本人を大々的に登場させることを避けました。都知事選ではあるものの、誰の映像であるのかを明らかにせず、視聴者を引き付けて離脱率を下げるためです。

スマートフォン越しに撮影する人々を最初に持ってきたのは、インパクトが欲しかったのと、動画を介して拡散されている石丸伸二ブームを表現したかったのが理由です。

ボランティアさんたちの後姿を採用したのは、「#東京を動かそう」のメッセージをまとう人々を画として入れることで、ネットとリアルの融合が起きている様子を表現しました。必死で闘っているボランティアさんたちも、選挙の主役なんだという意図もあります。

アバンタイトル「東京都知事選2024」が出る直前から、なるべく遠い画角から徐々に石丸伸二を登場させていています。だんだんと誰なのかが察しがつくようにする意図です。

大きく本人が登場するのはAメロの2コーラス目なので、1:35の全体のなかで、0:25まで登場しないという構成です。主人公が1/4経過するまで登場しないCMというのも果たしてどうかという挑戦でしたし、主役は有権者なので政治家の顔を売るのは二の次にしていいだろう、と考えていました。

いくつか写真メインの似たようなショート動画は見ていたので、それらとも差別化したかったというのもあり、アピールすぎず、アイドルっぽくもなく、結果的にAメロが終わるまでがシックな(落ち着きのある、粋な)雰囲気にまとめられて満足しています。

映像:Bメロ(0:35~0:47)

4拍子が印象的なBメロは、この拍に合わせて写真を展開させました。

選定した写真は、以下の流れとするものでした。

 街宣の遠目と近め
→聴衆とのコミュニケーションの様子
→街宣主要メンバー

地道に有権者と接していく中で、仲間との絆が徐々に確固となっていく様子を表現しました。

個人的にはここの一人一人と握手したりする写真をつなげていく作業で、勝手に胸が打たれて感動し、何度も涙しながら作っていたのを覚えています。

地上戦を誰よりも頑張っている様子が分かるので、映像をテストするたびに涙腺にキてました。すっかり涙もろくなったのは石丸伸二さんのせいです。

映像:サビ前半(0:48~1:01)

サビは初めの静寂には、4年前の安芸高田市で遠く離れた民家に向かって街宣を行う石丸伸二さんの後姿の写真を入れました。

これも理由は二つ。
一つ目は、4年前の安芸高田市長選と、今回の都知事選での公約を大きく変えず一貫性があることを表現したかったという理由。

二つ目は、政治活動のスタート地点と、今。
誰も聴衆がいない状況から、これだけ多くの聴衆を引き付ける政治家になったことを表したかったという理由です。


サビは右から左へ写真をスライドさせて切り替えています。動きを出して、派手さを出したかったという理由もありますが、視聴者が手元のスマホを操作しているかのような身近さを表すことで「自分も選挙に参加している」と感じてほしいという意図を込めました。

そしてサビの前半では、たくさんの聴衆との写真を採用することで先ほどの4年前との対比をしつつ、どの地域でもこれほどの盛り上がりになっているという、言わば社会現象、異常事態クラスのブームになっており、「これだけの人が選挙を既に楽しんでいる、今までにない選挙」であることを表しました。

「この祭りに乗り遅れるかもしれないな」なんて思ってくれたらいいなと考えていました。


映像:サビ後半(1:02~1:07)

サビの後半ではまず、石丸伸二さんが楽しんで選挙活動を行っている様子を多く取り入れました。

これは呪術廻戦アニメOPでも、主人公たちが楽しそうに青春を謳歌している様子が映像のカットとして流れていたので、似たような雰囲気にすることで大ヒットアニメを見ていた人たちの楽曲イメージと違和感がないようにしたかったためです。

政治は楽しい、選挙を楽んでください」と訴える石丸伸二さん。その本人自らが選挙を楽しんでいることの表現もできますし、視聴者も楽しそうだなと感じてもらいたいと考えて演出した部分です。

ちなみに東村山で志村けんの物まねをしているシーンは絶対入れたかった一枚です。

映像:サビ終盤(1:08~)

終盤にかけて、聴衆目線の写真を多く配置しました。

そして最後には「主役は、あなた」の文字を入れましたが、これは自然と出てきたワードでした。

まず全体を通して、タイトルと最後以外に文字などは入れないように心がけていました。いちいち言葉で押し付けるのではなく、視聴者が自分の大剣として自然に映像から感じとってほしかったためでです。

CMとして投開票日と、期日前投票受付中であることを出して締めくくりたいと思っていた時、そこにつながる最も言いたい主張だけ最後に入れようと決めて、瞬間的にこの言葉がでてきました。

自分としてもこの動画で最もかっちりと趣旨が収まったなと思ったのがこのラストシーンでした。

終わりに

YouTubeには横で見れる映像もアップしております。スマホ向けに作っていたため、少し映像が荒い箇所があるのが悔やまれます。

Xではその後も複数回にわたって拡散投稿を行うことで視聴回数を増やしました。有難いことに、他の支持者の方々がリポストなどで拡散して頂くことで多くの方にX上で見て頂くことが出来ました。

TikTokのコメントには盛り上げて頂けるメッセージを沢山いただき、嬉しかったです。以下のコメントを頂いたときは鳥肌が立ち、涙が出たことを覚えています。

長くなりましたが、読んで頂きありがとうございました。

ちなみに他の動画もあと2本ほど解説したいと思っております。なんちゃってクリエイターのkanachiでした。


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