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ダブルクロスおもしろいよ、という話
†はじめに
この文章は、『ダブルクロスって名前だけ聞くけど、なんなんだろう……モンスター狩るゲーム……?』という方向けに、TRPGである“ダブルクロス The 3rd Edition”に関して解説するものです。
†TRPGとは
“テーブルトークRPG”の略称です。
テーブルトークじゃない、画面とコンピュータを使うRPGとしては、竜王が世界の半分で交渉してきたり最後と言いつつ十回以上幻想を紡いだり最近では王になれ王になれといいつつ王って何なのかさっぱり説明してくれなかったりするアレが有名かと思います。
TRPGとはそういったいわゆるRPGの原型、コンピュータの代わりに脳みそで数値を計算し、画面の代わりに紙にものを映し出し、声優の代わりに己の言葉でキャラに命を吹き込むゲームを指します。“最高級ごっこ遊び”“即興演劇(ほぼ全員アドリブ)”とか言うとなんとなく伝わるかもしれません。
数十年の歴史を持つだけあってコンピュータゲームと同じく無数に種類があり、剣と魔法の世界の冒険でも銃はアリか機械はアリかなどなどで分かれ、ホラーと一口に言ってもゾンビに吸血鬼に人狼に邪神。世界観とルールをまとめた“システム”が公式に同人にゴリゴリ出版され、その中で動く筋書き“シナリオ”の数ときたらなんともはや。
なにより、そのすべてに関して、“遊び仲間等の了解が取れていれば、改変自由” というのがウリです。──もう、“いやそこでそうは言わんやろ”なキャラクターたちにやきもきする必要はないのです。
†購入と遊び方
TRPGを遊ぶには、紙やペン、テーブル、一緒に遊んでくれる友達のほかに、いくつか用意すべきものがあります。
最たるものは“ルールブック”です。その世界では何ができるか、数字的にはどう処理すればいいか、などなどが書いてあるため、少なくともプレイグループに1冊はないとゲームが始められません。
加えて、TRPGでは“できるかどうかわからない”ことを決定するため、サイコロを用います。攻撃が命中するかどうか、ダメージはいくつか、そのたもろもろです。
さらにオンラインチャット形式で遊ぶ場合、web接続と画面を持った機器も必要でしょう。
なお、ダブルクロスのルールブックは入門用が2000円ほど、サイコロは10面体のものが1個100円程度で手に入り、10数個必要です。ソーシャルゲームのガチャを一回我慢すれば買えるお値段ですね。
†ダブルクロスとは
ダブルクロスは日本産のTRPGシステムです。
剣と魔法のファンタジーでは(基本的には)ありませんし、邪神や魔術には(拡張ルールを導入しない限り)縁がありません。
……すればあるんだよな……。
その代わり、この世界に存在するのは“超能力”。ともすれば世界を滅ぼしかねないその力から表社会を守るため戦う、というのがプレイヤーの主な目的になります。
ダブルクロス The 3rd Editionはダブルクロスシリーズの3代目にあたる商品で、3rd単体で遊ぶことができます。
†世界観とあなたの役割
舞台となるのは20XX年。ほとんど現代と変わらない世界。
しかし、その世界は既に変貌しています。
“ウィルスのようなもの”が全世界に拡散し、ごくわずかな人間が、超能力に目覚めたのです。その力は鋼鉄を飴のように融かす超高温、あるいはどんな獣をも超える超怪力、時間や空間をゆがめることにまで及び……そして皆、なかば不死身でした。
世界は混乱しました。これを重く見た政府機関や財閥と一部の“まともな”超能力者は結託。超能力による事件を解決・隠蔽し、“表向きの平和”を保つことにしたのです。
それから20年。超能力規制機関と、超能力により利益を得て、破壊活動をも行うテロ組織を中心に、世界の闇で戦いは続いています。
この世界のルールは3つ。
だれであれ、超能力に覚醒しうること。
超能力の過剰使用により、永遠に理性・人間性を失い、怪物と化すこと。
そして“超能力病”には、いまだ治療法がない、ことです。
†関係性と世界滅亡の危機
超能力者の末路についてもう少し語りましょう。
彼らが超能力を使うたび、ウィルスによる侵蝕、病としての症状が進行していきます。侵蝕は暴走、攻撃的な精神性の発露を招き……最終段階まで至った場合、治療手段はありません。
なお悪いことに、暴走が永続化したとしても、知能が落ちるとは限らないのです。最悪の場合、己の内なる衝動に任せ、なんのためらいもなく超能力を振るい、そのすべてを高い知性・計画性でもって運用できる怪物が生まれます。放置すれば、超能力の秘匿は破られ、多くの犠牲者が出るでしょう。
プレイヤーの分身たるキャラクターは多くの場合暴走者と戦うことになりますから、限界を超えて超能力を使い、暴走してしまうリスクと隣り合わせにあります。これはルール上明言……というか数値的に保障されており、超能力を使うたびに蓄積する“侵蝕率”が一定のままゲームを終えると、暴走しキャラクターとしては再起不能になってしまいます。
これに対抗するのが、キャラクター同士の“関係性”。ゲームの終わり際、ゲーム中に結んだ関係性の数が、侵蝕に抗う力になるのです。数値的に。
……その絆自体、相手が死んだり裏切ったり、あるいは自分自身の覚悟の糧となって消えてしまうのですけれど。数値的に。
†超能力と数字バトル
数値の話が出ました。
このゲーム、超能力を“複数組み合わせた”ド派手なバトルがウリです。
筋力強化と機械操作を組み合わせれば、サイボーグメタルモンスターに。熱量操作と広域支配を組み合わせれば、天候操作!!てなもんで。これは各能力カテゴリに数十存在する能力を組み合わせることで表現され、実際に数字としてどんどん巨大な値が扱われることになっていきます。
実際のところ、システム自体が戦闘を前提として作られているだけあって、慣れれば簡便に運用できるルールとなっています。
†おわりに
表社会の平和、日常を守るためには、己は影に潜み、非日常のなかで戦わねばならない。
超能力者の末路、怪物と戦うためには、自身もそれ以下の怪物に堕ちる可能性を呑まねばならない。
ぶっちゃけダブルクロスというゲームは、うすぐらいバイオ異能力系の偏った作品です。あるいは、でした。
しかし、人間関係がガッツリゲーム性に絡む部分、そして本当に豊富な超能力が評価され、今日では日本で最も遊ばれている“現代異能もの”システムになりました。
もしも。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日。繰り返し変わらない世界の裏で、戦おうという意思があるならば……
ようこそ、裏切り者。歓迎します。