『KAGAYA 星空の世界展』によせて
─はじめに─
2008年、私がジグソーパズルの会社でKAGAYAさんの絵や写真に出会ってから十四年になります。
当時、KAGAYAさん監修『3Dパズル ブルーアース ─地球儀─』や、KAGAYAさんアートの『THE EARTH ─青い地球─』が発売されたばかりでした。なんて美しいパズルだろう、と思いました。
KAGAYAさんのアートは衝撃的でした。正確、かつ劇的でした。デザイナーとして入社後まもなく、KAGAYAさんのPOPデザインを頼まれるようになりました。以来、KAGAYAさんの星や宇宙は、私を作っているものの一部になりました。
私のお師匠さんは「今の自分は他人が作っている。もちろん自分が作ってるんだけれども、他者が居なければ在りえない。全て他者から作られている。」と言います。
今の自分は他人が作っている。
ある種の衝撃的な、ある種の破壊力をもった言葉やアート、出会った人によって、いつの間にかどんどん自分が構成されていくのは、怖いけれどおもしろいです。
アートをみて、今すぐなにかの役に立てようとは思わないけれど、すごくよかったなあ、という印象はたまっていきます。すっかり記憶から忘れたように思っても、どこかに蓄積されていて、いつの間にか自分の内側のなにか、たとえば自分の価値観や指向性になるのだと思います。私の場合、まちがいなくKAGAYAさんのアートはその一つです。
実際、星空の美しさをKAGAYAさん以上に写し出せる方をみたことがありません。だから、私にとって星空のいちいちは、みんなKAGAYAさんのそれです。
何しろ印象的でした。KAGAYAさんの絵とも写真ともわからない美しいアートに目をみはり、その商品を引き立てるためのPKGやPOPを正しく作るデザイナーであることに憧れました。
前置きが長くなりましたが、『KAGAYA 星空の世界展』によせてnoteを書きます。KAGAYAさんの写真は、比類なく綺麗です。
先週、『星空の世界展』に2回行ったのですが、2回目で音楽が流れていることに気づきました。1回目は無音、何も聴こえない気がしたのだけど、見ることに熱中して聴こえなかったのかもしれないし、KAGAYAさんの撮る写真から無音が聴こえるのかもしれません。
─『KAGAYA 星空の世界展』によせて─
こんなにロマンチックな世界をみたことがない。そう思いました。展示会場はうすぐらくて居心地がよく、別世界のようでうっとりしてしまいます。出不精なのかもしれないけれど、あえてその場に行かなくてもみることができる喜びというのが、無性に好きです。
KAGAYAさんの写真を展覧会場でみる価値の一つは、それだと思います。KAGAYAさんの写真はどれも、この「この世あらざる不思議な世界を、最も美しい状態でみせてもらえる喜び」が、ぎっしりとつまっています。
いちばん好きな写真
KAGAYAさんといえば、星や宇宙、神話をテーマにしたデジタルアート作品。私の認識ではそうなっていました。
けれど、おもしろいというか、今いちばん好きな写真は『タッチ・ザ・スカイ』です。海のシリーズはみんな好きで、『魚たちの楽園』や『エンジェル』もとても好きです。
あかるい水色も、海というロケーションも、躍動感も、心愉しい。
美しいなあ、と思いました。この世は、美しい世界だなあ、と。地球の一部にいる、という感覚を、KAGAYAさんの写真で初めて味わいました。
とくに、『タッチ・ザ・スカイ』。心惹かれて私は立ちどまり、絵にぴったりくっついて、しげしげ、つくづくと眺めました。
だいたい、KAGAYAさんの撮るクジラ写真、というだけで興味があります。クジラの写真なんて、あまりみたことがないですし。
『タッチ・ザ・スカイ』のクジラの、フォルムがまず私は好きです。お腹を見せているところとか、水色なところとか。まるでこのあと、ジャンプしそうなところとか。『タッチ・ザ・スカイ』というタイトルがぴったりで、ユーモアを感じるところとか。
じっとみているうちに、撮影しているKAGAYAさんの気持ちになって、ちょっと怖い気持ちになります。チャレンジングな気持ちです。勇気づけられる気持ちです。
この写真と波長が合うのかもしれません。好き嫌いとは別の、もっと生理的なものです。写真のなかの気配と自分の中の気配が今はしっくり合う、というか、肌に馴染む、というか。私にとって、『タッチ・ザ・スカイ』はそのような写真です。青の持つ優しいあたたかさが心をなごませてくれるし、無情な日常から逃避させてくれます。
この写真を忘れられないのは、もう一つ。地球の一部として自分が「いる」感覚になるからです。予防医学者の石川善樹さんが、こんなことを書いていました。
地球の一部として自分が「いる」感覚。私も写真を見て、そんな感覚を初めて味わいました。
幸せの研究者、前野隆司・前野マドカさんは、こんなふうに書かれています。
KAGAYAさんの写真をみて不思議にロマンチックな気持ちや幸せな気持ちになるのは、ただ綺麗なアートというだけでなく「地球や宇宙の一部として自分がいる」という、もう少し大きな何かがあるように思います。宇宙という巨大なものの中にある自分をとらえるなんて、KAGAYAさんを知らなければ考えることもありませんでした。
私はKAGAYAさんの動物や海の生物が写り込んでいる写真が好きです。生命力を感じるという点でいえば、たとえばKAGAYAさんの花や樹や草も生きています。風景から生きている地球を実感できるアイスランド『神話の舞台』は、エネルギーにあふれて家に飾りたいと思う写真の一つです。星空を見ると高揚して、すごいものをみることができて良かったと思います。
けれど私の場合、生命力を感じる筆頭は『タッチ・ザ・スカイ』、そして『エンジェル』です。全ては一瞬のうちに尽くされている、というのもほんとうにいいです。目とか心で判断する前に、肌、皮膚そのものが感じているのだと思います。内に灯がともるみたいな不思議な感じで、ぽつぽつと元気が湧いてきます。
KAGAYAさんの青は不思議です。青というより紺色だけれど、これほど深くクールで澄んだ青は他にない。落ち着くし、高揚します。高揚するというのは、精神が研ぎ澄まされる感覚です。
作品点数はとても多く、「2時間くらい経ったかな」と思うと気づけば4時間も経っていました。
2日目に展示会場をみて、びっくりしました。自分が撮った画像よりも、遥かにずっと美しかったからです。KAGAYAさんのアートは、いつか間近でみてほしいです。みていると、しみじみ胸がいっぱいになります。
アングルも色彩も時間も、すべてが正確に計算された写真。タイトルとキャプションもシンプルで詩情があふれています。勿論それをKAGAYAさん自身たのしみながら、ときに大変な苦労もされているようです。(私の大好きなインタビュー記事です↓)
KAGAYAさんのプロ気質が、私は大好きです。
それこそが、KAGAYAさんの原動力のようです。
KAGAYAさんの在り方を見て、KAGAYAさんのストーリーを自分の人生に取り入れて、新しい何かが生まれるよすがとなるかもしれない。そんなふうに思いながら、星空の世界展によせてnoteを書きました。
【展示作品】
ここからは、展示会場の写真をシェアさせていただきます。これまで絵葉書でもなければ美術館からアート作品を持ち帰ることはできなかったけれど、時代は変わりました。会場でみた写真たちは、一つずつ思い出すだけで心愉しいです。ここにとどまってくれて、物語をみせてくれて、本当にありがとうございます、という気持ちです。
美術館のように気持ちが高ぶったり、ほっとしたりするかはわからないけれど、KAGAYAさんが何を見て何を感じたかが、伝わったらいいなあと思います。
─四季の星空─
─月のある空─
─天の川を追う星の旅─
─星の旅体験エリア─
─オーロラ─
─一瞬の宇宙─
─おわりに─
真空パックみたい。ここにはったKAGAYAさんの写真をみると、そう思います。映像作品をみたことがなければ、時間が止まっていているような無音な世界かもしれません。星か太陽の光かがみちていて、その真空パック感を高めています。
KAGAYAさんの写真に写る風景が、内面をさらけ出すことはありません。旅人のKAGAYAさんとは少し距離がある感じ。それが、あの美しさを生むのではないかと思います。
KAGAYAさんの写真に写る景色は、観る人をひきこむし、一人ぼっちにもします。自分がいようがいまいが、世界は本来こんなに美しいと気づきます。
そして、この美しい楽園地球にいて、世界を、宇宙を、KAGAYAさんのおかげで安心安全の場所で楽しむことができるのは、とても幸せなことです。
─撮影現場のKAGAYAさん─
─展示作品の撮影地─
─展覧会場外にて─
『星空の世界展』に行かれる方、楽しんで行ってらしてください。
映像も音楽も、とても美しいです(^^)
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