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スタートアップで6年間を過ごしたデザイナーが学んだこと

はじめに

美大卒 → 出版社1年半 → ウェブ制作会社で受託3年 → スタートアップ1社目(7人目の社員)3年半 → スタートアップ2社目(創業〜解散まで)2年半、というキャリアです。

約6年のスタートアップ期間では、オフィスを6回移ったり、M&AとMBOを2回づつ経験したり、会社の一生を見届けることになったり、様々なステージがありました。その間に、いちデザイナーとして考えたことや実践したこと、学んだことを残してみようと思います。

ビジョンドリブンでのプロダクト開発

スタートアップでは、創業社長が描いているビジョンを原動力にして、事業やプロダクトを作っていくことが多いかと思います。初期の段階で近くにデザイナーがいると、素早くモックアップを作ったり壊したりしながら、構想を目に見えるものとして具体的に練り上げていくことができます。

デザイナーとしては、その段階でビジネス要件の把握をすること、ざっくりした実装のイメージをエンジニアと共有すること、そしてなによりトップのビジョンを理解し掘り下げ、自分の言葉で語れるようになるくらいまで、目線を合わせることを大切にしていました。そして、そのビジョンを主にプロダクトというかたちで表現していくことになります。

事業の可能性を可視化する

デザイナーは、ふわふわとした不確定なものをキャッチアップして具現化することが得意です。経営者やチームメンバーとコミュニケーションを取る際は、なるべく話すことだけでは無く、目に見えるものを何かしら作って、それをもとに素早く意思決定ができるよう心掛けていました。

また、目先の課題解決だけでは無く、新しい価値を作っていくようなこともしたいという想いが個人的に強く、時間を見つけては少し未来のアプリのイメージなども勝手に作っていたりもしました。これは必ずしもすぐに成果に結び付くものではないかもしれませんが、いまの事業にどんな可能性がありそうか、みんなで目線を上げて考えるきっかけにもなるため、やっていて良かったと思っています。

プロダクトポリシーの策定

プロダクトポリシーとは自分が作ったフォーマットなのですが、会社や事業が目指す世界を実現するための、プロダクトの方針を定めたドキュメントになります。

会社が成長して、毎月新メンバーが入社するようになってきたタイミングで、「そもそも」の議論が何度も巻き起こるという事象がありました。議論がされること自体は良いことなのですが、創業期から変わらない想いやスタンスは共有されている状態のほうが、それをベースにより建設的な議論ができるはず。そう思ってプロダクトポリシーを作りました。実際に入社オンボーディングの際に使用したり、施策を決める際の参考資料として利用されていました。

事業の成功確率を上げるために、魅力的なものをつくる

デザインで事業を成功させます!・・と言い切るハードルはなかなか高いかもしれませんが、デザイナーが魅力的なものをつくることで、事業の成功確率を上げることはできると思っています。

どんなに潜在的な需要がありそうな内容でも、表現が適切でなかったら、そもそも何も伝わらないかもしれないし、自分には関係がないものだと瞬時にシャットダウンされてしまうかもしれません。これ使ってみたい!と興味を持ってもらったり、愛着を持って使い続けてもらうために、デザイナーができることは沢山あるように思います。

デザインチームの作り方

はじめは、1人からチームにしていく段階のマインドチェンジに苦労しました。悩みを1人で抱え込んでしまい、自分の自信の無さも相まって、チームビルディングは全く上手くいきませんでした。

スタートアップ2週目では、少数精鋭ではありますが、4名のデザインチームを作ることができました。自分にとっては大きな一歩で、全員が得意なことを軸に活躍している、良いチームが作れたと思っています。上手くいった理由としては、採用に関する意思決定をほぼ全て任せてもらったことと、2人目になんでも率直に話すことができる、属性の近い方に入ってもらったことが大きかったと思います。

意図的にイノベーションを起こそうとすることに伴う覚悟と責任

スタートアップは、何らかの意志を持って、大なり小なり世の中を変えることを目的に作られているかと思います。自分がはじめてのプロダクトリリースに関わったとき、予期せぬ自体が起こったり、意図がうまく伝わらずに様々なご意見を頂いた経験があり、作り手としての責任を強く感じました。

デザイナーは、プロダクト作りを通して、事業と世の中をつなぎ込む役割も一部担っていると思っています。作ったものを世に出すことで、なにが起きるのかを解像度高く想像できるようになること。作ったものの伝え方・届け方までを見通して考えること。そして、世の中に大きなインパクトを与えることを目指すのであれば、それによって世の中をどう良くするのか、覚悟を持って挑むこと。

ビジネスモデルからプロダクトの細部の表現まで、すべて一貫した美意識のもとでしっかりと社会に浸透するものを作りたい。それを実現するためのデザインとはなんだろう。ここ最近は、そんなことをずっと考えています。

これから

世の中を良くすること、誰かを幸せにできることに対してデザインで最大限コミットしたい。その過程のなかで、さらにデザインを理解し続けたい。これは自分の人生を通して変わらない目標になると思っています。

今年後半は、自分にとって大きな転機となりました。温かいお声をかけてくださったみなさま、ご相談に乗っていただいたみなさま、そしてこれまで一緒に仕事をしてくださったみなさまに心より感謝いたします。

来年からは、全く新しい環境でのスタートが待っているのですが、引き続きデザインに向き合って生きていけることがとてもありがたく、とてもワクワクしています!

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