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《神戸智行―千年を描く》展 高崎市タワー美術館

日本画家・神戸智行(Kanbe Tomoyuki)氏が大宰府天満宮からの依頼を受け、大宰府に居を移し、10年の歳月をかけて描き上げた襖絵24面となる大作《千年後の未来》が、全国に先駆けて展示されている。今後、岐阜県立美術館などを巡回した後、襖に仕立てられ、菅原道真公薨去(こうきょ)1125年となる令和9(2027)年の大宰府天満宮式年大祭に際して奉納され、天満宮の「文書館」を彩ることになるという。

同展では、《千年後の未来》(2023年)を中心に、故郷を流れる長良川をモチーフに制作された《静謐Serrenity》(2001年、作家蔵/高崎市タワー美術館寄託)から、横3mを超える大作《彩れる水面 桜色のソナタ》《彩れる水面 紅色のシンフォニー》(2003年、同館蔵)、《陽のあたる場所》(2006年、作家蔵/高崎市タワー美術館寄託と2010年、太宰府天満宮蔵の2点)、四季4部作《芽吹く生命―春》《輝く生命―夏》《繋ぐ生命―秋》《託した生命―冬》(2016年)などで構成され、神戸氏の画業を辿っている。

神戸氏は1975年、岐阜県生まれ。多摩美術大学院日本画専攻終了。下地の箔に極薄の和紙を貼って彩色、さらに上に和紙を重ねて彩色、それを繰り返すという独自の技法を駆使し、箔と和紙の薄層の褶なりが生みだす繊細な光と翳りを表現されている。そしてその画の風景の中には、故郷の長良川近辺で幼少の頃から慣れ親しんだ植物とともに蝶や虫などの小さな生き物や魚、金魚たちがひそやかに、しかし生き生きと息づいている。

2008年のボストン留学を経て帰国された後、2010年に制作された《白い影Reflected Mist》では、《静謐》(2001年)と同様、原風景である長良川中流域の川原をモチーフに、石とハグロトンボやトカゲが描かれている。薄い和紙に銀箔を貼り、和紙の裏から彩色した後、銀箔を削ったり、線香で穴をあけたりして石の表情をつくり、ひとつひとつ石の形に切り出したものを画面に貼るという手法によって、川霧か朝靄に薄く包まれたような静謐な川原の雰囲気を醸し出されている。幾重にも透けて重なる水の皮膜を通し見ているようだ。

襖絵原画《千年後の未来》の一部、横7mを超える大作では、樹齢千年を超える大宰府天満宮の樟(クス)の樹の森が池の水面に映り、その下を白い鯉がゆらめいている。しんとした静けさの中、樟の樹々の葉擦れの音、水のそよぎがかすかに響いてくる。

神戸智行 襖絵原画《千年後の未来》(一部) 縦190.3×横748.0cm
「神戸智行 千年を描く」展 高崎タワー美術館 展覧会チラシ(表)
「神戸智行 千年を描く」展 高崎市タワー美術館 展覧会チラシ(裏)

展覧会は高崎市タワー美術館で、6月23日(Sun.)まで。
学芸員による作品解説会も開催される。


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