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中嶋中春『White, White, White』を読みはじめる前に

詩人の峯澤典子さんをはじめ、何人かの方がX(旧Twitter)で紹介されていて、ネットで注文、昨日、届きました。


中嶋中春『White, White, White』(表紙)

中嶋中春——苗字と名前が「中」の字で始まり、中原中也みたいだけど、中原中也は「なか」「チュウ」と訓音読みで、中嶋中春さんは「なか」「なか」の訓訓読み。いい名前だなあ。

判型はB5。写真ではわかりにくけれど、表紙の白い紙は目の細かいサンドペーパーのような凹凸があり、手触りが心地いい。タイトル「White, White, White」が上右寄りに横書き、作者名のローマ字が「Nakaharu NAKASHIMA」と左に縦書き、漢字の「中嶋中春」は右下に横書き。ともに細い線で縁どりされたゴシック体の白抜き文字。「中嶋」は「なかしま」と清音で読むんだな。作者名の漢字の「嶋」の4つの点が一本の線になっている。こんなフォントがあるのかな? Illustratorで作字されたのかな? 点4つよりすっきりしている。タイトル上の細い線でつくられた矩形は、上の線が背との境で上に伸び、下の線は背で切れている。


同書の扉

表紙をめくると見返しに黒い紙が2枚あり、そのあとに扉。これは光沢のある半透明の薄葉紙で、次のページの細い横線が透けて見え、表紙と同じ書体で、タイトルが「White,(改行)White,(改行1行空き)White」と横書き、作者名がローマ字と漢字で横書きされている。ローマ字は「Nakaharu」の後ろと「NAKASHIMA」の初めが重なっている。

「White,/White,//White」——ノーベル文学賞を受賞されたハン・ガンさんの著書『すべての、白いものたちの』を思い出す。原題は『흰』。韓国語で「白」を表す言葉には、真っ白を表す「하얀(ハヤン)」と様々なニュアンスの白を表す「흰(ヒン)」があるそうで、中嶋さんの本書でも、微妙に質の違ういろいろな「흰」が表現されているのだろうか。


同書の目次

目次のページは見開きを縦にして、文字は細ゴシック体で横書き。ノンブルを表す文字は表紙・扉と同じ書体。それぞれの作品タイトルは頭揃えではなく、凸凹に配置されており、「A POOL WITHOUT WATER」という文字はノンブルの文字に被っている。


同書の1作目

1作目「Star overhead」のページ。横書きで細ゴシック体の12級ほどの小さな文字。タイトルは右下にある。どの作品も、細ゴシック体の12級ほどの文字のようだ。詩集や小説では、書体は明朝体のものがほとんどで、部分的にゴシック体を用いるものはあっても、全篇を細ゴシック体にしたものは珍しいのでは。妙に「詩」に傾がずに、ニュートラルな姿勢をとろうとしている感じがする。


同書の9作目

9作目「シティライツ」のページ。縦書き・横書きが自在にレイアウトされている。タイトルが上にあるが、文字の上下が逆になっているので、本を上下逆さまにして読むのだろう。作品はすべて白い紙に印刷されていて、作品ごとに黒い紙が挿入されている。ノンブルは白い紙にはなく、黒い紙のところどころに打ってある。例えばこの「シティライツ」の左側の黒い紙には、左上隅に「54」(90度左回転)とある。

最後のページに、「編集・組版 中嶋中春」「装幀 中嶋中春」とあり、DTP作業をすべて自分でこなされたようだ。奥付には「発行 中嶋中春」「印刷・製本 株式会社イニュニック」とあるが、出版社の名前はない。でも、ISBNが取得されているから、中嶋さん個人で「出版」登録されたのだろう。


同書の裏表紙のISBN

レイアウト・装幀がユニークで興味深かったので、読む前に「本」を眺めてひとこと書きたかった。

さて、ではゆっくり読みはじめよう。


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