メニューの文字は、食欲の文字 【文字をめぐる日常 vol.07】
午前中、重めの仕事を片付ける。最近は朝食を少なめにしてるのでもう腹はペコペコだ。いつもより沢山食べたいから会社から少し離れたあの街中華。五目チャーハンに半ラーメン。そう言えばあそこの「うまにそば」ってなんでうま煮じゃないんだろう…気になりだしたらそっちでも良いかも。メニューの文字は、食欲の文字。
文字が食欲として立ち上がってくる
自分は食べる事が好きな方だ。それもチェーンではなく個人店、個人店でも雑多な大衆的な店が好き。飲み屋の好みも概ねその方向なので、自ずとメニューや短冊に勢いがあって手触りのあるものが多くなってくる。
『孤独のグルメ』の主人公、井之頭五郎はライスを頼める居酒屋で「ここに並んだ大量のおつまみがすべておかずとして立ち上がってくる」と言った。そして、世の中には文字が食欲として立ち上がってくるメニューというものが確かに存在する。
判型いっぱいに大きな文字の料理名、そして値段。下線や小さい花のシールが可愛いらしい。もうこのメニューを手渡された時点で勝利は約束されたようなものだ。
とにかく白場を作りたくない!そんな気持ち分かります。一品ごとにキャッチを入れるところに好感。選ぶ楽しみが増してくる。撮っているときには気付かなかったけど左端の縦組みも素敵だ。
こなれたシュッとした手書き文字に鮮度を感じる。仕入れている魚介も良いものそうだ。こういうメニューのグルーブは実際に料理が出てきても裏切らない。
神保町の老舗居酒屋の短冊。大分年季が入っていて店の雰囲気に抜群に合う。何度も書き替えられた末に滲みでた黒の照り返しがなんとも良い。瓶ビール片手にここから料理を選べたら最高だ。
太い明朝体で文字もツメツメの明快なコミュニケーション。こういうメニューを外に出している店は信用できる。赤い値段との組み合わせも大衆居酒屋の“Less is more”の精神ではないだろうか。
東京は大塚が誇る担々麺の名店のメニューは段ボール。ご丁寧に端をガムテープで補強して手荒な客にも安心だ。大きな料理名、大きな値段、大きなメニューは信頼の証。
中野サンプラザの飲食街、なんとはないメニュー、オープンな店構え…だがそれらが渾然一体となって「当たり」感を醸し出す。マニアックな店達の側にのっぴきらないこんな店。
旅行先で結構な距離を歩いた後に見つけた喫茶店のメニュー。店主の独特の感性が光るが、平仮名がなんとも歩き疲れに効きそうだ。
メニューはその店を映す
値段関係なく、メニューが良い塩梅の店は大体ハズレがない。これは一体何故だろう。そこに丁寧さや味への自信が滲みでているのだろうか。自分とグルーブの合うメニューの店をまた探そうと思う。
これは入店をためらう奴だが、味わい深いワードアートメニューだ
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