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不言実行と有言実行 道徳的価値観とビジネス的価値観

「有言実行」は、元々「不言実行」という言葉から派生した言葉ですが、
今では完全に「有言実行」の方が市民権を得ています。
NOTEでも「有言実行」で検索すると約10,000件ヒットするのに対し、
「不言実行」は1,000件となっています。

「不言実行」は、
「まだできてもいない事をあれこれ口にするよりも、黙って行動で示す」
と言う意味です。それに対し「有言実行」は、
「口にしたからには責任を持って行動にする」となります。

「不言実行」も「有言実行」もどちらにも共通するのは「言うは易し、行うは難し」と言う価値観です。
言葉にするのは簡単だが、それを実際にやるのは難しいーーー
だからこそ、「不言実行」も「有言実行」もどちらも価値のある素晴らしい行動だと思います。

現在、この二つの言葉を比較すると、
「不言実行」よりも「有言実行」の方がいい、
という考えの方が主流となっているのではないでしょうか。
一つの「不言実行」の裏には無数の「不言不実行」があるのではないか、
それならば、最初に言葉にする方が誠実である、と言うことだと思います。

この記事では、「不言実行」から派生した「有言実行」と言う言葉が
本家を凌ぐような市民権を得るに至った理由を考察してみたいと思います。

筆者がこの「有言実行」という言葉を初めて聞いたのは1990年代前半でした。広辞苑第5版(1998年11月11日発行)には「有言実行」という言葉はまだ掲載されていないため、まだ市民権を得る前だったと考えられます。
高校の部活動の追い出しコンパにて、
卒業生から在校生へのメッセージとして以下のような話がありました。

「不言実行という言葉があるが、
高校生が自らを律して努力を継続していくことは難しいのではないか。
なんでもいい、口に出して背水の陣を引いてみたらどうか。
大会の成績でも、個人の技術でもなんでもいいから目標を口にして、
お互いにチェックして、励まし合ってやってみたらどうか。
つまり有言実行ということだ」

なんとも大人びた高校生だと思いますが、
実際に顎髭を蓄えた仙人のような風貌の先輩だった事を記憶しています。

ここでは、「不言実行」よりも「有言実行」を薦めていますが、意味としては、
「結果を得る方法として、不言実行は難しく、有言実行は易しい」
という事だと言えます。そして
「不言実行ができるならばそれに越したことはない」
というニュアンスも含んでいます。

そう、不言実行は難しいのです。難しいから価値があったのです。
宣言したわけではないので、途中で諦めても手を抜いても誰にも咎められません。
それでも「他の誰でもない、俺自身が見ている」または「お天道様が見てる」と
自らを律してやり遂げることが尊いのではないでしょうか。
つまり、「不言実行」は謙虚さとうちに秘めた使命感からくる「徳の高い行為」であり、
やらざるを得ない状況を利用する「有言実行」よりも価値が高いとされていたと言えます。

しかしながら、成果至上主義となり成果に対する効率が求められる時代になると、
「有言実行」がその価値を上げていくことになります。
「結果にコミットする」とも言える有言実行はビジネス上の「誠実さ」です。
目標を定め、計画・管理しようとした時、「有言」であることが必須となるため、
「有言実行」でさえ、ビジネスでは「不言実行」よりも価値が高いかも知れません。

こうして、今日では「不言実行」よりも「有言実行」が叫ばれるようになったのです。

【まとめ】
徳の高い「不言実行」
結果にコミットする「有言実行」

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