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CHAPTER2:秘境の春-second season-
早くも季節は一巡り。環境にも慣れはじめて、1年目には持てなかった心の余裕と、周囲の人々と交流する時間を少しづつ持てるようになったのもこの頃か。なにしろ3年日記を1か月くらいでやめたほどの三日坊主で、過去の思い出を辿るとき、参考にするものがfacebookの投稿くらいしかない。しかも、当然ながら調子のよい時に良いことしか書いていないのが、SNS。
公用車の運転も少しは上達して、村内を回れるレベルにはなった。桜、花桃、ミツバツツジ……植物名には明るくない私だが、秘境の春の美しさは言葉に代えがたいものがあり、ついついよそ見運転常習犯になってしまう。手つかずの自然とはこういうことなのだろうか。生命を燃やしながら、ひっそりと静かに咲きほこる可憐な山桜の健気さには心を打たれる。
実家への帰省時に、新宿のギャラリーで見た写真展が非常に素晴らしくて、在廊していた写真家の方に思い切って声をかけてみたら、なんと村に撮影に来てくれることに決まった。しかも著名な民俗写真評論家(?)の方も一緒だそう。撮影以外にも、地元のお年寄りに昔の話を聞いたり、思い出の写真を見せてもらったりしたいとのこと。
人と人とのちょっとした出会いは、まさに点と点が繋がる瞬間であり、その結果がこうして予想外の出来事を引き起こすのだなあと改めて思う。「縁」というものは、一度いただいたものを長く繋いでいくことが重要と思っていたのだが、必要な時に現れて、時期が終わったらすっと消えていくものもまた存在するということに気が付いた今日この頃。
どちらの「縁」も大切である。
春がこんなに美しい季節だなんて、今まで気づかずに生きてきた。