第一話 【宇宙人だった頃に戻ると…】①
1-1-1 人間をやっていると力が出せない
宇宙人だった頃に、一瞬でも戻ると、玲奈はすごくリフレッシュする。
人間をやっていると力が出せない。だから、玲奈は、元の姿に戻る。
シリウス星人たちは、魚が多い。だから彼らは時々、海に潜り魚に還ってリフレッシュするらしい。
宇宙人から地球人に転生してきた魂は、元の姿に一瞬でも戻ると、本来の自分の力を取り戻すことができる。
だから、地球人としての生活に疲れたら、一瞬でも元の姿に還り本来の力を取り戻すといいのだ。
人間をやっていると、無理に人に合わせているから緊張しっぱなしで、本来の自分の力が出せない。
それだけではない。視野が狭くなるし、疲れやすくなる。
見た目は人間でも、中身は宇宙人だから人間に合わせるのはとても疲れるのだ。
1-1-2 想念のゴミだめ?
玲奈が宇宙人だった頃の自分に戻れるようなったきっかけは……友達の梨花に冷たくされたのがきっかけだった。
数日前・・・
もともと、人と会うととても疲れるHSP体質なのだが、最近、玲奈はその傾向がさらに激しくなってきていた。
人と会って疲れるのは、他人の想念を磁石で吸い寄せるように自分の中に取り込んでしまうからだ。
別の言い方をすると、「相手の心が読めてしまう」のだ。
そして、何日もその人の言葉が頭の中で自動的に反芻され、振り払いたくても振り払えなくなる。
厄介なことに、大概の人間は、親切そうな見せかけの行動や言葉の下に黒い心を隠している。
そして本心を読まれることをほぼ全ての人間は嫌がる。知らないふりをして会話していても、なんとなく相手は本心を悟られているのを感づいてしまう。
そんな時の反応は2種類だ。
怒るか、攻撃することで誤魔化そうとする。
そうやって自分の黒い心を認めるのを避けようとする。
そんな調子で人との会話に玲奈はとても疲れていた。
昨日も、友達だと思っていた梨花が怒り出して発した言葉が、心に刺さった魚の小骨のように玲奈の精神活動を消耗させていた。
「やりきれない。ひとりになりたい。人付き合いをやめたい。人に合わせるのに疲れた」
まとわりつく他人の波動。
振り払いたいのに、振り払えないもどかしさ。
玲奈の疲労の原因は、自分が他人の想念のゴミ箱になっているかのような状態にあった。
1-1-3 元の自分の姿は・・・
玲奈は、バスタブにベルガモットオレンジのエッシャルオイルを入れて、ささくれた心を癒していた。
思い返すと、幼少期から玲奈は、この世界の価値観や世界観に大きな違和感を感じていた。
そして「この世界には自分の居場所がない」といつも漠然と感じていた。
本来の自分の居場所はどこだろう? ……戻りたい 玲奈はそう考えた。
静かに目を閉じると、地球とは異なる風景の惑星の景色が浮かんだ。
「懐かしい……あぁ、これが自分の故郷の星なんだな」玲奈は記憶の底から懐かしさが込み上げてきた。
その風景の中に、鏡が浮かび上がっている。
そこに映し出されているのは、巨大な毛むくじゃらのモンスター? 狼の化け物のようなエイリアンだ。
そして玲奈は、どういうわけか、それが〈自分〉の元の姿だと思った。
鏡に映し出されたモンスターの自分は、眼で(つまりテレパシーで)語った。
「そろそろ、本来の自分を取り戻さないと、もうそこは戦場になっている。……あちこちに敵が潜んでいて、お前を殺しにかかっているのだからな」
1-1-4 全転生で起きたことのデータとこれから地球で起こることを
元の本来の自分に還る……。
宇宙人だった頃に、一瞬でも戻ると玲奈は、時間を超越して、これまでの全転生で起きたことの全て、そしてこれから地球で起こることの全てを見通すことが出来た。
自分が誰なのか、なぜここにいるのか、何をしなくてはいけないのか、がわかる。
本来の自分・・・元の自分に戻ることは大切だ。玲奈はそう思った。
人に会うとその想念のゴミをもらうし、3日ぐらいその人の念や波動が抜けなくてツライ。
幽霊に取り憑かれるようなもので、鬱陶しいことこの上ないけど、どうしようもない。
だから、人に会うのが億劫になる。
そして、人の言葉や行いが1週間ぐらい、魚の骨が喉に引っかかっているみたいにアタマから取れない。
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