料理本リレー
【私の好きな料理本リレー】
主婦と生活社 料理編集部 @ryourinohon さんからスタートした、「私の好きな料理本リレー」
料理本に関わる、料理家、カメラマン、デザイナー、スタイリスト、ライター、編集者が、好きな料理本を紹介する企画です。
私にバトンを渡してくれたのは、ホーローパン考案の藤田裕子さん。藤田さんの『ホーローでつくるパンレシピ』(ナツメ出版)は、ホーローひとつで、簡単なのにめちゃおいしいパンが焼ける、とっておきのパンレシピ本です。こちらもぜひ!
私が紹介するのは、こちら。
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■池波正太郎『剣客商売』(新潮文庫)全16巻+番外編2巻
レシピ本ではないけれど、読む料理本としておすすめしたいのが本書。
池波正太郎の小説は「食べる」シーンがとても多い。良きも悪きも、老いも若きも、人は等しく食事をする。小説に出てくる料理は、質素なものが多いが、どの料理もとにかくおいしそうで、読んでるだけでお腹がすいてくる。
たとえば、「薄めにとった出汁に、千六本に切った大根と浅利をさっと煮た鍋」であったり、「里芋を衣かつぎのまま、ざっとゆでて串に刺し、生醤油のつけ焼きにしたもの」であったりと、旬の食材をいたってシンプルに調理したものが次々に登場する。
暮らしの中で、「食べる」ことがいかに大切か。そして、家族で食卓を囲むことの豊かさ。
池波さんの小説は、心が疲れているときの特効薬としてもおすすめです。ほかに、『藤枝梅安』シリーズの食のシーンも秀逸。
読む料理本としては、『みをつくし料理帖』(高田郁)、
読むマンガ本としては、『きのう何食べた?』(よしながふみ)、
『深夜食堂』(安倍夜郎)もいいよね。
■土井善晴『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)
テレワークや休校が続き、毎日の献立に困っている人も多い。
土井先生は本書で「毎日の献立は、ごはん+みそ汁+漬け物の一汁一菜でよい」と言い切った。「今日のおかずは何にしよう」と悩む、すべての人の肩の荷を下ろしてくれた驚きの本。
もともと暮らしには「ハレとケ」があり、毎日の日常の食事は「ケ」であり、慎ましく、質素でよい。あれこれごちそうをつくるのは「ハレ」の日だけでよいのだ。
みそ汁を具だくさんにして、旬の野菜をたくさん入れることで、栄養バランスは問題ない。一汁一菜の食事に慣れると、焼き魚や豚のしょうが焼きでもついた日には、もうごちそう感がハンパない。
まずは肩の力を抜いて、みそ汁と漬け物を作ることから始めてみよう、と思える素敵な本。
この本が気に入ったら、『おいしいもののまわり』(グラフィック社)もぜひ。
■手前みそ枠
オザワエイコ『だからつくる調味料』(ブロンズ新社)
調味料がおいしいと、料理はシンプルになる。つけるだけ、かけるだけ、和えるだけ。旬の食材や季節感を大切にして仕込む調味料は、おいしいのはもちろん、心を豊かにしてくれると信じている。
すべてはみそ作りから始まった。自分で作ったみそのおいしさにハマり、いつの間にか、いろいろな調味料を作るようになった。
そんな自家製調味料のレシピをまとめたのが本書。発売から5年がたち、おかげさまで現在5刷。
調味料を作るようになると、季節の移り変わりが待ち遠しくなる。もうすぐ出回るのは、山椒の実、梅、ラッキョウなど。旬をつかまえて調味料にして保存し、長く楽しむ。
こんな時代だからこそ、自然に寄り添った暮らしを取り戻してほしいと願う。
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そして、このバトンは、尊敬する編集者、温野まきさんにつなぎます。
雑誌『自然栽培』がすばらしいのはもちろん、
『最初に読む料理本』(古谷暢康/時雨出版)は、これまでの料理の常識をくつがえす一冊。
料理が好きな人だけでなく、これから料理をはじめようと思っているすべての人に読んでほしいと思います。