ドラマー巡礼⑩: 村上“Ponta”秀一「ウィンディ・レイディ」
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ドラマー名: 村上“Ponta”秀一
曲名: 「ウィンディ・レイディ」
グループ名: 山下達郎「IT'S A POPPIN' TIME」
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いい意味で、見かけと中身、言ってる事とやってる事が違う巨匠ドラマー。
肩で風切って歩く無頼な雰囲気があるポンタさんの事を、ミュージシャン仲間の多くが「ポンタさんは寂しがり屋」と証言。
「俺が俺が俺がというのが俺のドラムだ」とか言いながら「歌詞をあらかじめ読まずに、いいドラムなんか叩けない」とポンタさんはいい、レコーディングを断ってしまったなんていうエピソードがある。どこまでも曲に寄り添い支え切るリズム職人。
だからこそ、郷ひろみ・沢田研二・キャンディーズ・ピンクレディー・山下達郎・矢沢永吉・泉谷しげる・井上陽水・桑田佳祐・ドリカム・氷室京介など、日本の音楽が1番華やかだった時代の屋台骨となり、そのレコーディング総数は1万4000曲を超え「場数王」と呼ばれた。
最盛期は、3時間という時間の中で曲を解釈し、歌詞を読み込み、必要な音を設計し、ワンテイクかツーテイクで次に移るスケジュールだったという。その土台は、中学時代のブラスバンド部に所属し、フレンチホルンを吹いていたことのようです。譜面が基本的にすぐに読めて、歌詞からの世界観への没入に移れる素養を持ったスタジオドラマーでもあったのでしょう。
ポンタさんは、1951年兵庫県西宮市生まれ。生後すぐから4歳半まで京都の祇園の母親の親友「ポンタ姐さん」に育てられたからポンタさん。
巨匠なので、前置きが長くなりました。
ご紹介した「ウィンディ・レイディ」で山下達郎とポンタさんは一緒に歌っているように聴こえる。「ドラムが歌っている」と言われ、歌のバックを支え続けたポンタさんのドラマーとしての生き方が演奏として余す事なく現れている一曲だと思います。
そんなポンタさんのドラムプレイは一言でいうと「風」。その風力のダイナミクスはとても幅広く、ウィンディ・レイディにも聴ける、吹いているか吹いていないかわからないくらいの空気の動きから、頬を撫でるそよ風、そしてビューっと前に進めなくなるようなバシンバシンっというスネアのインパクトまで無限のグラデーションがかかっている。
つまりは、その時にその場に最も必要な風を届ける、とても優しいドラムです。
ちなみに収録アルバムの「IT'S A POPPIN' TIME」 は、1978年3月8日と9日に、六本木のライヴ・ハウス「ピット・イン」で行われたライヴの模様を収録した、2枚組ライヴ盤。そのライブのぴったり43年後の3月9日(2021年)にポンタさんは亡くなった。「巨星、堕つ」とドラムマガジンでも特集が組まれた。
僕らニッポンの元ドラム小僧達は、3月9日になれば、この優しくも激しいライブアルバムを聴き続けるのでしょう。ポンタさん、おつかれさまでした。