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「夢」を持てないあなたと夏美へ【世界一長い『ラブライブ! スーパースター!!』考察②】
どうも、一般オタクのNDです。ギャラクシー!
今回は「世界一長いスパスタ考察①」の続きで、スーパースター2期の考察&感想を語っていきます!
冒頭で振り返りを入れていますが、前回記事の内容を前提に進みますので、ぜひそちらもお読みください!
この記事を読めば、
・四季とメイは本当に「似た者同士」なのか?
・夏美はなぜLiella!に加入できたのか?
・ウィーンはどうして敗北したのか?
・Liella!はなぜ澁谷かのんが抜けてもLiella!として存続する道を選んだのか?
というような疑問も解決する……はずです!
2期も本当に素晴らしいです……!
ちなみに今回もオニ長いのですが、スーパースターが面白すぎるのが悪いので、どうかご勘弁ください!
0.前回のスパスタ考察!
さて、1期の考察のおさらいです。
①「私(=夢)」を叶えたくて頑張ったけど無理でした。どうしたらいいですか?
②「私を求めてくれる貴方のために」という小さな輝きを放とう!
③ 5人が互いに手を取り合い、「後ろ向きな連帯」によって、ひとつのスーパースターが出来上がる
④「貴方のために」の連帯は学校全体に拡張し、Liella!は「ラブライブ優勝」を目指して、μ'sのような「団結」に至った!
ざっくり、こんな感じの話でした。
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しかし、ここで2つの問題が浮上します。
Ⅰ.かのん達は結局「能力」があったけど、本当に何の力もない我々はどうすれば輝けるのか?
Ⅱ.そもそも夢を持たない人間はどうすればいいのか?
2期では主にこの2点の解答を描いており、異なる背景を持つ全員の「この場合はどうしたらいいですか?」という問題にすべて答えていきます。
今は意味不明かと思いますが、以下の表をご覧ください!
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なんとなくパターンを網羅しているのがわかりますでしょうか。
そう、2期が目指すのは、完璧な「全員救済」です!
今回は、時系列順で2期生の加入経緯を考えつつ、ウィーンとの戦い、そしてかのんの「留学」について、どのような意味があったのか語ります!
1.Liella!はなぜ桜小路きな子を救うのか?
・スターとなったLiella!
2期が始まった瞬間、とてつもない変化が起きます。
メイ「Liella!は結ヶ丘の期待の象徴。スターなんだよ、今のLiella!のメンバーは」
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1期では事あるごとに「スターではない」と強調された5人が、2期では学校の全員から「スターだ」という扱いを受けているのです。
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しかし、実は1期と言っていることは変わらない。
1期でかのん達が輝きを得る物語は、いわば「能力がない者の生存戦略」として描かれていました。
しかし、2期では「能力があったけど埋もれていた」と認識を変えているわけです。
1期の記事で、一番最後に「結局かのん達は能力があっただけでは?」と提示しましたが、そんな感想に対して2期では「その通りです」と認めているイメージです。いや認めるんかい!
では、「本当に能力がない者」は、夢を叶えることができないのでしょうか?
そこで我々を救ってくれるのが、桜小路きな子です。
きな子には「能力」がありません。
都会に憧れて上京してきた「普通の子」で、勉強も運動も苦手です。
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むしろ能力がなくても輝く姿に胸を打たれる
そんなきな子が、Liella!を見て「スクールアイドルをやってみたい!」と思うところから、2期の物語は始まります。
・「向いていない」という幻想
ところで、スーパースター2期では「私には向いてない」という台詞がたくさん出てきます。1話のきな子、4話の四季とメイ、千砂都など。
「向いていないことでもみんなと頑張ればできるようになる」
「向いているかより好きかどうかが大事」
一面的に受け取るとこんな感想を持ちそうですが、これはスーパースターが描いている内容とはまったく異なります。
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実は「向いているかどうか」という話は、実際の能力の問題ではなく、心理的なハードルの問題として描かれているのです。
よく思い返してみると、「私には向いてない」という言葉は、何かを始める前にしか登場していません。
きな子や四季とメイはスクールアイドルを始める前、千砂都は部長になる前の発言です。
そして、実際にやってみた後は、「私には向いてない」という言葉は出てきません。
つまり、『ラブライブ!スーパースター!!』において、「向いていない」という言葉は、「あと一歩の勇気が出ない」という弱気の言い換えに過ぎないのです。
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千砂都「できるって思えば、できるかもしれないのに」
これは2つの意味を持っています。
1つ目は「向いているかどうかはやってみなければわからない」ということです。
1話できな子が「やってみたいけど向いてなさそう」と迷う場面で、通りすがりの夏美が声を掛けます。
夏美「やってもないのに、向いているかどうかなんてわからないでしょ?」
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これは夏美CEOのおっしゃる通りですね。
厳然たる事実です。
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メイ「どう考えても向いてないだろ」
かのん「やってもないのに向いてないは禁止だよ」
重要なのは2つ目で、「向いているかどうかは関係ない」ということです。
「向いていないかも」と思っていたスクールアイドルが、やってみたらできた。
これは「やってみたら向いていた」という話ではなく、「本当に向いていなかったとしても大丈夫」という、非常にパワーのある結論です。
例えば、きな子や夏美は、「スクールアイドルに能力的に向いているか」で言えば、間違いなく向いていません。
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しかし、スクールアイドルを始めた後に、「やっぱり向いてなかったのでやめます」という話には絶対にならないのです。
「向いているかどうか」とは、一言で言えば「能力」ですよね。
つまり、最初の問題Ⅰ「かのんと違って能力がないのですがどうしたらいいですか?」に対しては、「能力の有無は問題ではない」がスーパースターの解答です。
思い返してみれば、かのん達も「自分達に能力がある(=スクールアイドルに向いている)」と思ってスクールアイドルになったわけではありません。
むしろその逆で、「能力がない」と思っていたからこそ、Liella!というグループが出来上がったわけです。
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才能の差は間違いなくある。それでも関係ないと言い切ってみせるのが、『ラブライブ! スーパースター!!』が描く、厳しくも眩しい希望の光です。
この結論のヤバさ、伝わっているでしょうか?
私はラブライブ!シリーズにしかできない物語だと感じます。
能力(=向いていないこと)と向き合う物語は数あれど、「そんなこと関係ねえ! まず頑張れ!」と言い切れるのは、『ラブライブ! サンシャイン!!』などで「もし結果が出なくても、無駄な努力は決してない」と描いているからです。
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頑張りたい人の背中をどこまでも押してくれる、なんて素敵な作品なのだろうと感じます。
・Welcome to 僕らのセカイ
能力がなくても問題がないことはわかりました。
しかし、スーパースターにおいては「貴方のために」という繋がりがなければ、輝くことはできません。
そこで「きな子の加入」について、きな子ではなく、きな子に手を差し出したLiella!の視点で見てみましょう。
2年生となったかのん達5人は、本気で「ラブライブ優勝」を目指しています。
実力面だけで言えば、きな子の加入は完全にマイナスです。
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きな子の加入にあると示唆される
それなのになぜかのんは、きな子をLiella!に誘ったのでしょうか?
もっと言えば、どうして「新メンバー」を受け入れられたのでしょうか?
ここまでクソ長い考察を読んでいただいた方には、もうおわかりかもしれません。
それは、Liella!が手を伸ばしあって生まれたグループだからです。
μ'sやAqoursのような「団結」は、後からメンバーを追加するのが困難です。その「9人」での活動に絶対的な意味がある。
μ'sが3年生の引退と共にμ'sそのものを解散したのは、「μ'sはこの9人」という意識があったからです。
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しかし、Liella!は違います。1期を経て「団結」の次元に至ったとはいえ、互助組織であるという本質に変わりはありません。
手を伸ばしあってできたグループだからこそ、どんどん手を繋いでいける。
そして、きな子のように「頑張りたいけどどうしたらいいかわからない」という人間は、かのん達が最も「助けたい!」と思う存在です。
何故なら、かのん達自身が、そんな挫折の中で「貴方のために」というLiella!のシステムに救われたからです。
きな子に手を差し伸べるという行為は、いわば昔の自分を救い出すのと同じことなのです。
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『Welcom to 僕らのセカイ』を披露したかのん達は、きな子に手を差し出します。
かのん「これがスクールアイドルの魅力。みんなと結ばれて作る新しい未来」
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かのん達は「学校のみんな」がくれる輝きも合わせてステージに立つと決意しているものの、実際には数百人の輝きを5人で担うのは無謀
単純に人数が増えれば、一時的には実力が低下するとしても、長期的には理想の実現に近づける
2.四季とメイは「そっくり」なのか?
・四季≠メイ
きな子の次に加入するのが、米女メイと若菜四季です。
ふたりについて、かのんはこんな風に言います。
かのん「ふたりはそっくりだもん」
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また、メイも四季に言います。
メイ「せっかく似た者同士が出会えたんだ。少しだけ素直になってみないか? 四季が傍にいてくれたら頑張れそうな気がするんだ」
4話『科学室のふたり』では「鏡」がキーアイテムとして登場しており、ふたりが「似ている」ことが強調されています。
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しかし、冷静に考えてみれば、このふたりはまったく似ていません。
正確には、似ていたのは「互いに互いを想っていた」という1点のみで、ふたりが持つ背景はまったく異なるのです。
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例えば、そもそもメイはクラス内のグループに属していたような描写があり、最初から自分の世界で過ごしていた四季とは雲泥の差があります。
──というような、キャラクターとしての四季とメイの違いや、四季メイの関係性についての話は別記事でまとめるとして……
四季とメイのふたりは、2期のテーマ的な観点で考えて、決定的に違うところがあります。順を追って考えてみましょう。
米女メイは、最初から「夢」を持っている人物でした。
可可に迫る熱量で「スクールアイドルになりたい」と思っており、結ヶ丘に入学した理由も「スクールアイドルをやってみたいから」と明言されています。
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あとは「一歩の勇気」を出せばいいだけというか、結ヶ丘を選んだ時点でほとんど踏み出しているようなものです。
それでもメイがLiella!に入らないのはなぜか?
それは、四季がいるからです。メイは「四季のため」にスクールアイドルを始められません。
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四季とメイは誰がどう見ても「貴方のため」と想い合って連帯が成立しているのに、輝きを放つことができないのです。
一体、何が起きているのでしょうか?
・「貴方」の夢
ここで確認しておきたいのは、すべての努力の原動力になるのは「夢」だということです。
『ラブライブ!』シリーズは「努力を肯定する物語」ですが、人間が一生懸命に頑張れるのは「夢」があるからです。
逆に言えば、何かを頑張りたいと思っていても、夢がなければ何をしていいのかわかりません。
メイにはスクールアイドルという「夢」があります。
しかし、四季には「夢」がないのです。
この「夢」の有無こそ、メイと四季を隔てる最大の違いです。
メイは、夢を持たない四季と「貴方のため」で繋がったため、あと一歩を踏み出せないわけです。
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現代に生きる我々の悩みは、この「夢がない」というものが結構多いように思います。
冒頭で問題Ⅱとして挙げた、「そもそも夢を持たない人間はどうすればいいのか?」という話ですね。
夢中になって頑張れる「何か」を見つけられない。
この危機的な問題にスーパースターは2つの解答を与えており、四季の在り方はその1つです。
四季の取った行動。それは「夢の模倣」です。
自分には内発的な「夢」がない。だから、メイの夢を模倣して、自分もスクールアイドルになろうと決意するのです。
四季はメイに対して、「(スクールアイドルは)別に好きじゃない。ただメイが興味あるみたいだから調べていただけ」と言います。
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明確な描写こそありませんが、四季がスクールアイドルを知り、興味を持ったのは「メイが好きなことだから」でしょう。
「夢」と聞くと、心の内から湧き上がる衝動のようなものがあって、それを見つけられなければ終わりのように思える。
でも、心配しなくても大丈夫。好きな人がいるから同じ学校を受験するとか、友達がチーズバーガーを頼んだから自分も同じものを頼むとか、そういう低いハードルで「誰かの夢を模倣する」ことはできると、若菜四季は教えてくれます。
四季の口癖が「Me too.」なのは、本当によく考えられているなと思います。まさに「夢の模倣」を象徴しているわけですね。
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メイ「Liella!の力になれないならスクールアイドルやるつもりはない」
四季「Me too.」
このように両者が夢を持ったことで、「貴方のため」の連帯は正しく機能して、四季とメイはLiella!に加入するのでした。
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四季とメイが恋人繋ぎなのは、
強い「連帯」を示している説と尊すぎてヤバい説(?)があります
ちなみに、2期4話での四季の「夢の模倣」という選択は、3期3話の『白色のセンター』に繋がっています。
四季のことを「無色」ではなく「白色」と表現したのが上手いなと思いました。
Liella!に入る前の夢を持たない四季は「無色」だったのですが、メイの模倣をすることで「白色」となり、自分の色を持つためのキャンバスを得たわけですね。
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四季の物語が「夢の模倣」から始まったことを念頭に置くと、3期3話の見え方が大きく変わってきます。詳細は3期考察で!
・一歩踏み出す勇気
さて、ここまで触れたきな子・四季・メイの3人に共通している点があります。
それは夢への「最初の一歩」を踏み出した経験がなかったこと、もっと言えば「頑張ったけどダメだった」という挫折をしていないことです。
これはかなり重要です。
なぜなら1期のかのんの物語は「頑張ったけどダメだった」という挫折からスタートしたことに意義があったからです。
きな子達の物語は、その意味ではシンプルな「最初の一歩」の物語でした。
●「夢(=叶えたい『私』)」
●「挫折(=『努力』したけどダメだった)」
●「能力(=実際に向いているか)」
この3要素が登場していることを整理して、次の項目に進みましょう。
ちなみにメイと四季の「能力」についてですが、メイは作曲・四季はダンスで力を発揮しており、きな子・夏美と比べて明らかに「できる」側として描写されていますね。
3.鬼塚夏美というラスボス
・夏美を救え!
個人的に2期で一番好きなキャラクターであり、そして革命的な結論を出していると思うのが鬼塚夏美です。
澁谷かのんは、最終的に鬼塚夏美という最強のラスボスを倒し、仲間にしなければなりません。
なぜ鬼塚夏美はラスボスなのか?
それは先程の3要素を考えるとわかります。
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幼い頃、夏美は様々な「夢」を見られる少女でした。
たくさん努力をして、「挫折」して、それでも何度も立ち上がりましたが、結局そのすべてが実りませんでした。
この過去が意味しているのは、夏美にはあらゆる夢を叶える「能力」がないということです。
厳しい「現実」に直面した夏美は、「夢」を見ることをやめてしまいます。
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夢がない。能力もない。努力したけどダメだった。
スーパースターの登場人物の中で、明らかに最も詰んでしまっています。
この鬼塚夏美を救済することが、2期の使命と言ってもいいです。
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この3つの要素の中で、最も重要なのは「夢」です。
能力の有無は関係ないことと、努力した経験は無駄にならないことはすでに示されています。
つまり、最終的には「夢」という燃料をどのように持つか、が焦点になるからです。
では、四季のように「模倣」ではダメなのでしょうか?
なんと……ダメです。あまりにも厳しい。
幼少期の夏美は、様々な夢を掲げていましたが、(確定的な描写はないものの)どれも内発的なものではなく、おそらくテレビや漫画の受け売りや、友人の語る夢の「模倣」だったことでしょう。
そのすべてが続かなかったのですから、夏美には夢を「模倣」する力さえないということです。
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3期の「夢ノート」もツラすぎる
このような過去があるため、「夢」に関して誰よりも想いが強いのも夏美です。
1話できな子の背中を押したのも、6話での合宿中に1年生組に檄を飛ばしたのも夏美でした。
しかし、その言葉の裏には深い「絶望」が見えます。
・1話
「向いてないことをいくら頑張ったって駄目なものは駄目ですの。でも、やってもないのに、向いているかどうかなんてわからないでしょ?」
⇒ポジティブなようで、自分の能力の無さに心の底から絶望している。
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・6話
「夢に責任を持つべき」「諦めるくらいなら夢なんて語ってほしくない」
「皆さんの夢は決して実現不可能ではない。それは素晴らしいことですの」
⇒自分には夢を見ることができず、叶える力もないからこその言葉
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どれだけの想いを胸に語っているのか……
こうして整理すると打つ手がないように見えます。
では、一体かのんはどのように夏美をLiella!へと招いたのでしょうか?
・追いかける夢の先で
6話『DEKKAIDOW!』にて、北海道まで出向いたかのんは、夏美とふたりきりで語らいます。
夏美「かのん先輩にも動画に出演していただきますの! そうすれば──」
かのん「それよりスクールアイドルやってみない?」
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いきなりの誘いに困惑する夏美に対して、かのんは言い放ちます。
かのん「夢がないなら、みんなと一緒に同じ夢、追いかけてみない?」
衝撃でした。頭がクラクラしました。
夏美は夢を見られません。模倣することもできません。
でも、「一緒に夢を追いかける」ことはできます。
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これがどれだけの人々を救う言葉なのか。
絶望の中にいた夏美を、こんな風に救い出せるんだと感動しました。
まず、四季が選択した「夢の模倣」とは、「他人の夢」を「自分の夢」にする行為でした。
しかし、夏美の「一緒に夢を追いかける」は、もはや「他人の夢」は「他人の夢」のままで、同じ景色を見るということなのです。
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これが許されるのは、Liella!が「全員の夢を全員で見る」というグループになっているからです。
「夢」と「目標」の違いの話をするとわかりやすいでしょうか。
Liella!の目標は「ラブライブ優勝」です。しかし、夢はメンバーそれぞれ異なります。
かのんは「世界に歌を響かせたい」、すみれは「有名になる」、恋は「母の想いを繋いでいく」などですね。
これらは個別に持っているわけではなく、全員が手を繋ぎ合うことで、全員の夢を同時に見ています。
かのんの「世界に歌を響かせたい」という夢は、もはやすみれの夢でもあり、恋の夢でもある。
つまり、Liella!は夢を「共有」しているのです。
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可可が「かのんの夢はみんなの夢です」と語るのは象徴的
比較すると、μ'sの場合はこうなりません。
μ'sの目標は「廃校を阻止すること」で、夢はメンバー全員が「ラブライブ優勝」で統一されているイメージですね。
なぜこのような差があるかというと、μ'sは「みんなで(ひとつの夢を)叶える物語」なのに対して、Liella!は「私(の夢)を叶える物語」から始まっているからです。
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Liella!に加入すれば、メンバー全員の夢を一緒に見ることができる。
夏美が自分で夢を持てなくても、夢を「追いかける」ことはできると言っているのです。
これが、かのんの「夢がないならみんなと一緒に同じ夢追いかけてみない?」という台詞に込められた意味です。
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「他人の夢を見る」というと、なんだか盗人のようで気が引けますが、別にそれでいいのです。
まず夢を「追いかけ」なければ、何も始まりませんから。
そして「努力」さえ始めれば、必ず得られるものがあるのです。
「夢」を敷居の高いものだと思って欲しくない。夢は誰にでも追いかけられるのだという、ラブライブのアツいパッションを感じる解答です!
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かのんの言葉と共に、花畑が虹色に光を放ちます。
この各色はメンバーそれぞれの「夢」であり、そしてそれをかのんと夏美が同時に見ているという構図が、「みんなの夢をみんなで見る」という在り方を象徴しています。
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3期ED『DAISUKI FULL POWER』が思い浮かぶ光景
かのん「ステージ全てがひとつになる。それが最高の瞬間。そんなライブをすることが、私達の夢」
Liella!の9人で同じ夢を見るだけでなく、最終的にはライブを観てくれる・応援してくれるみんなとも、同じ夢を共有したい。
それは「かのん」の夢ではなく、「私達(=Liella!)」の夢です。
こうして鬼塚夏美をも救済したLiella!は9人となるのでした。
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・きな子と夏美
ひとつ、今まで皆さんに黙っていたことがあります。
申し訳ありません(葉月恋)
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実は、四季と夏美だけでなく、きな子も自分の「夢(=叶えたい私)」を持っていませんでした。
きな子がLiella!に加入できたのは、夏美と同じように「一緒に夢を追いかける」という「夢の共有」によるものです。
きな子は、Liella!が輝いている姿に心を惹かれました。
しかし、内発的な「夢」を持っておらず、努力をしようにも燃料がなかったのです。
そんな中、きな子は『Welcome to 僕らのセカイ』のライブパフォーマンスを観て、Liella!の「全員で全員の夢を見る」という在り方を見せつけられたました。
きな子「なんじゃこりゃぁあああ!!?」
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Liella!に入れば「夢を追いかけられる」と知った衝撃
きな子は「希望」から、夏美は「絶望」から、その出発点は異なるものの、同じように「夢の共有」という着地をしているのが面白いですね。
きな子にとって、憧れの東京で初めて会ったのは夏美で、エルチューバーで、CEOで、輝いて見えていました。
夏美が「夢は本当にない」と語るのを聞いて、きな子が悲しそうな顔をするシーンが印象的です。
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きな子は単にショックだっただけでなく、自分と夏美の境遇が似ているため、同じやり方で一緒に夢を追いかけようと誘いたかった……のかもしれません。
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もちろん、夏美の物語は3期で冬毬が加入することで、さらに深掘りされます。
2期での夏美のラスボスっぷりを理解できていれば、3期で夏美にスポットライトが当たるのも頷けますね。
4.ウィーンは闇堕ち澁谷かのん
ここまで説明すれば、冒頭の表の意味がわかってきたと思います。
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Liella!は「夢」「挫折(努力)」「能力」の問題について、本当に網羅していたのがわかりますよね。
各パターンの救済は済んでいるのですが、最後にLiella!の前に立ちはだかるのがウィーン・マルガレーテです。
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ウィーンは言うなれば「闇堕ち澁谷かのん」です。
最初のかのんと同じように、ウィーン音楽学校に不合格という挫折をして、どうすれば輝けるのかを見失っている状態です。
かのんは「①手を取り合って」「②過程を大切にして」ステージに立ちました。
しかし、ウィーンは「①自分ひとりで」「②結果にこだわって」歌います。
10話のラブライブ東京大会でどちらが勝つかは、1期から話を追っている我々には明白ですよね。
①ソングフォーミーだけでは、「スーパースター」は描けません。
②努力は結果によって報われるものではありません。
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ウィーンは『エーデルシュタイン』で、「私は私を信じ輝くの」と歌いました。
しかし、Liella!の輝きはむしろ「私を信じられない」という悲観からスタートしているからこそ、手を取り合って強く光るのです。
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「もしも過去と未来 どこへだって行けてもきっと
ここにいるよずっと この瞬間君と噛みしめるんだ」
「一瞬の輝き」を大切にするラブライブらしい楽曲
ウィーンも3期になってからが本番のキャラクターなので、3期の記事で詳しく語りたいと思います!
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5.私を叶える物語
・「一瞬の輝き」の本質
11話『夢』で、かのんに海外留学の話が来ます。
かのんの夢は「世界に歌を響かせたい」なので、かのんにとって夢への大きな一歩です。
しかし、かのんの答えは「留学しない」でした。
かのん「スクールアイドルになって、歌が大好きってまた言えるようになった。この喜びを重ねていくことが私の目標のひとつなんだって」
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実際の場面では「この学校のみんなと一緒に、もっともっとハッピーな気持ちになりたい」など、たくさん喋っており、言葉を重ねて誤魔化しているように見える
これに対して千砂都は「かのんちゃんに留学してほしい」と伝えます。
一体、なぜなのでしょうか?
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ここでポイントになっているのは、「いま楽しい」は「一瞬の輝き」の本質とは異なるということです。
ラブライブシリーズで描かれている「一瞬の輝き」とは、夢に向かって努力する瞬間のことです。
それに対して、かのんが言っている「喜び」は、ただ「今みんなと歌う歌が楽しい」という「一時の感情」に過ぎません。
スーパースターの原点は、「私を叶える物語」です。
スクールアイドルも、Liella!も、究極的には自分の「夢」を叶えるための手段だったはずですよね。
かのんの発言は、Liella!を想うあまり、手段が目的化してしまっています。
千砂都は、かのんの心情を見抜き、原点を思い出させるために「留学してほしい」と伝えたわけです。
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これは余談なのですが、可可は随所で「一瞬の輝き」よりも「一時の感情」を優先している描写があります。
1期の記事でも少し触れましたが、意外なことに可可は「夢(=叶えたい私)」を持っていません。
スクールアイドルへの強い熱意はあるものの、目指しているのは「みんなで楽しくスクールアイドルをすること」であり、本質的な自己実現ではなく、「いま楽しい」を享受するためにスクールアイドルをしています。
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それがクゥクゥが夢見た、スクールアイドルなのです」
果たしてそれは本質的な「夢」なのか?
だから、シリアスなぶつかり合いの場面などで、可可は真っ先に回避しようとしますし、泣きながら止めたりするのです。
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9話『勝利のために』の話し合いでの一幕は、
可可の気持ちも痛いほどわかるものの、
グループにとって必要な衝突でもあった
それ自体は可可の優しさでもあるのですが、とにかくこの「可可には夢がない」という大問題を上手く隠しながら話を進めて、それでいて伏線は仕込んでいるバランスがすごいなと思います。
3期6話『タカラモノ』では、流石に全人類が号泣したと思いますが、この話をあそこまで引っ張った判断がスバラシイです!
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今回の記事では深掘りしませんが、ちょうどいいタイミングなので付記しました!
・Liella!が解散しない理由
12話『私を叶える物語』にて、かのんが留学を決意すると、千砂都は言います。
千砂都「かのんちゃんがいないLiella!はLiella!じゃない。それが、私達の出した答え」
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しかし、かのんは「Liella!は続けてほしい」と即答します。
3年生の卒業に伴い解散したμ'sとは、真逆の結論ですよね。
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なぜこの答えになったのかは、「きな子を受け入れた理由」でもあり、「夏美との夢の共有」でもあります。
つまり、手を取り合って築いたLiella!の絆においては、もはやLiella!に所属しているかどうかすら関係ないということです。
「私(かのん)」の夢は、「みんな」の夢でもあります。その逆も同じで、「みんな」の夢はかのんの夢でもある。
この繋がりを築いてしまえば、かのんがLiella!に所属しているかどうかなど、もはや問題ではありません。
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裏を返せば、所属と関係なく繋がっているのだから、Liella!は解散してもいいのだと思います。
しかし、「かのんがいないLiella!はLiella!ではない」という考え方は明確に間違っている。
そう感じたから、かのんは「続けてほしい」と言ったのではないでしょうか。
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そして迎える、ラブライブ決勝での『未来の音が聴こえる』のラスト、手を繋いで星を作る9人。
かのんが「これが私達のラブライブ」と言う場面はシビれましたね。
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なんとなく察しが付くかと思いますが、この「Liella!が解散しなかった理由」の話は、3期に繋がっています。
なぜかのんはLiella!を抜けたままで活動するのか? 『Let's be ONE』の「いつだって僕らひとつなんだ」とはどういう意味なのか?
さぁ進もう、3期へ──
・2期生の選択の重み
……と、終わる雰囲気を出しましたが、「Liella!はみんなの夢をみんなで見ている」という話について、どうしても触れておきたい場面があります。
それは9話『勝利のために』での、きな子達1年生の「選択」です。
この回ではウィーンとの対決にあたって、すみれが「勝つには2年生だけで出るべき」と言い出し、当然かのんがブチギレてとんでもない空気になります。
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可可が泣いてしまうのがツラすぎる
最終的に「9人」で出場することは視聴者目線ではわかっているため、クゥすみの尊さに引っ張られて、皆さん(というか視聴1周目の私)が見逃してしまうのが、きな子達の意思表明の場面です。
2年生のぶつかり合いを受けて、1年生も話し合いを行います。
そして、すみれの元を訪れ、手を繋いで歌った後、こう言います。
メイ「次のステージには立たない」
夏美「東京大会は2年生5人で立つんですの」
四季「そして、私達に……」
きな子「勝つところを見せてくださいっす!」
そう、1年生はLiella!の勝利のために、自分達はステージに立たない決断をしたのです。
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2話できな子が練習のレベルを下げないで食らいついた努力や、6話で「2年生に追いつきたい」と1年生だけで合宿していた姿、「『Starlight Prologue』を越えたい」と目を輝かせて語る姿など、私達は1年生の「本気」を見てきました。それなのに、です。
このアツい選択を、「チームの勝利のためにグッと感情を抑えて合理的な選択をしたんだ」と解釈してしまうのは、ちょっともったいないと思います。
きな子達は理解したのです。
きな子達が東京大会のステージに立たなかったとしても、かのん達と同じステージに立っているのと変わらないと。
意味不明ですが、ここに「みんなでみんなの夢を見る」という強固な繋がりの力が表れていると思います。
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6話できな子は「夢」を語ります。
「きな子達が入って、1年生が増えたから、このステージ(『Starlight Prologue』)を超えることが出来たって、Liella!はパワーアップしたって」
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ラブライブのステージに立つのは2年生の5人かもしれない。
しかし、1年生の4人の輝きが加わって、Liella!は間違いなくパワーアップしました。
だとしたら、きな子達が実際にライブに出ないとしても、Liella!に貢献できていますし、きな子達の想いは叶っているのです。
1年生がステージに立たない選択をしたのは、実力不足を自覚して、勝つ自信がなかったからではありません。
むしろ自分達の存在意義を認めた上で、自信を持って「私達はステージには立たない」と選択したのです。
そこには1年生の成長と、Liella!というグループの強さが詰まっており、だからめちゃくちゃアツいのです。
「みんな」の夢は「私」の夢だから、1年生が叶えなくてもいい。
想いの繋がりを再確認した上で、1年生は「出ない」という不参加ではなく、逆に積極的に参加して2年生に「託した」わけです。
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「過程」の方が重要なので、最終的には9人で出場する
6.おわりに~Let's be ONE~
というわけで、2期では「夢・努力・能力」の問題について、ほぼ全パターンの救済を行いました。
Liella!はラブライブ優勝という目標を達成し、「私を叶える物語」という原点も再確認できたのです!
いやー、すごかった。今度こそもう終わりでいいですよね。
3期でやることなんてありません。お疲れ様でした!!!
そう思っていた時期が私にもありました。
全員救済と言いつつ、これでもまだわずかに「抜け漏れ」があるのです。
もちろん、『ラブライブ! スーパースター!!』という作品が、この穴を許すはずがありません。
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1期生の中には「夢」を持たない者もいる
まず、単純に「夢✖ 挫折○ 能力○」のパターンが抜けています。
さらに、夢を持たない者が選択した「夢の模倣」「夢の共有」には、実は大きな問題が潜んでいるのです。
そして、ついに可可の過去が明らかになり、未来に向けて重大な選択をすることになります──
執筆時点で3期9話放送後なのですが、いや3期も本当にすごすぎます!!!
というわけで、また3期の記事でお会いしましょう!
前回と同様に「オタク執筆後記」も別記事で更新するかもしれません!
どこかで「声優」「ライブ」の話をしたいなと思いつつ……!
ここまで、世界一長い考察記事をお読みいただき、ありがとうございました! 本当に長すぎてすみません!
引き続き、よろしくお願いします! ギャラクシー!
※記事内に用いた画像は、すべて考察を目的として引用しています。
Ⓒ2013 プロジェクトラブライブ!
Ⓒ2021 プロジェクトラブライブ! スーパースター!!
Ⓒ2022 プロジェクトラブライブ! スーパースター!!