ハラスメントに関する相談を承ります


…と宣言するのはとても勇気がいるのですが、せっかくハラスメント相談員の認定を受けたので、有効に活用していきたいです。

ハラスメントに関する相談を受け付けます。
ハラスメント全般というよりは、おもに福岡市内で舞台芸術の活動をされるうえでの関連したお悩みについて引き受けられたらと思いますが、お困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。



先にまとめから書きます。

ハラスメント相談員として、そしてそうでなくてもいち社会人として、一番大切なのはハラスメントを未然に防ぐことだと思っています。

それには、ハラスメントについて知ることなどに加えて、実際の現場に以下の要素があることが望ましいです。

◎関係者全員に「ハラスメントはよくないよね」という共通認識がある
●不適切な言動があれば、その指摘を誰もがすることができる
◎指摘しにくい場合に、それを言える安全な窓口がある
●建設的に解決し、安心安全なクリエイションに回復する意志が全体にある
◎こうした事項に、クリエイション開始時から全体で合意が取れている

とはいえ、この状況を整備し、また維持することは少し大変かもしれません(当たり前になるとよいですが)。
ハラスメント相談員という肩書きを借りて、このお手伝いができたら、と考えています。

クリエイションが始まるときには、関係者全員が「いいものを作ろう」とスタートを切ると思います。「仲悪くなろう」「誰かの人権を踏みにじろう」と参加する人は居ないでしょう。
それがそのまま、最後まで、いい関係のままいいものが作れるお手伝いができたら嬉しいです。



具体的な関わりの例として、クリエイションが始まる前に団体さんから打診をいただき、「その公演つきの外部相談窓口」として携わります。

〈たとえば…〉
初回の稽古にうかがって、ハラスメントについてのかんたんなレクチャーと、「ハラスメントは無しでいこう」という全体での合意形成の場を設ける。そして、「私にいつでも相談できます」「秘密は厳守します」「相談者の意志に背くことはしません」といったことを説明し、連絡先を提供する。その後実際に稽古に1,2回顔を出すなどしながら、本番終了まで見届ける。

無事に終われば、私は「この団体さんはハラスメントのない安全なクリエイションをしていました」と言いふらします。冗談ですが、そんなことを言えるのはある種外側にいる人だけだと思いますし、どんどん言っていきたい。
もちろん相談があれば、迅速に安全に慎重に、建設的な解決に向けサポートいたします。また、自分の手に負えない場合には別の窓口も活用します。

具体的な注意事項や取り決めは、別途書類を交わし詳しく説明すべきことがありますが、今後やれたらいいなと思う取り組みの大枠はこんな感じです。


こうして、安全な現場がひとつでも増えて、ハラスメントに対する意識が伝播し、やがてすべての現場が安心できるものになることを願っています。
そのため、上記依頼に関しましても導入のハードルを下げたく、無料でお引き受けいたします(予算が潤沢にある場合には割り当てをご検討いただけたらと思います)。

打診をご検討いただける場合は、できれば稽古初回の2ヶ月前までを目安に、kamokeitaro.info@gmail.comまでご連絡くださいませ。



以上でまとめ部分はおしまいです。

できるだけこうした形で、座組まるごとの単位でお引き受けできるとやりやすく助かりますが、個人の場合でも、過去のことでも、ご相談ごとがございましたらなるべく早く、しかし無理のないタイミングで、上記連絡先までご連絡をください。オンラインでも対応いたします。




以降、もう少し書き連ねたいと思います。
余力のある場合にはどうぞお読みくださいませ。





下記の前提を共有させてください。


ハラスメント相談員にできることは限られます
└ハラスメント相談員は文字通り「相談窓口」です。関係者同士での自主的な解決を目指して対応します。どんなことでも相談いただきたいですが、すでに起きてしまったハラスメントに対しては、有効に関わることができない可能性があります。事情をお聞きしたのち、そこにハラスメントが明らかに認められる場合、また被害に合われた方が法的措置等を望まれる場合は、弁護士等の専門家にお繋ぎします。また、心理的ケアの専門家でもありません。(加茂の場合)

会社と演劇の協働は少し違います
└会社員(労働者)は、各種法令によりハラスメントから法的に守られています。簡単にいえば、ハラスメントが起きないようにする義務を会社が負っていて、違反すれば(ハラスメントを端として重大な被害(自殺など)に繋がった場合などには)会社に対して賠償を求めることができます。フリーランスの場合、現状それがありません。あくまで「人権」に照らして捉えるしかなく、被雇用者と比べると守りが薄いのです。

ハラスメントは簡単に起こり得ることです
└演劇(舞台芸術)が複数の人間による協働を前提としていて、また人は喋ったり動いたりする以上、その意図がなくても、ハラスメントは簡単に起こり得ます。「ハラスメントかどうか」は、受け手の主観だけでなく、社会通念と照らして判断されるため、判断が難しい部分もあります。しかしその手前には、かならず「不適切」な言動があるはずです。この時点で指摘し、改善できれば、ハラスメントを防ぐことができるのではないでしょうか。これは、当事者だけでなく皆で取り組むことができます。


ハラスメントになる前に、グレーゾーンのうちにそれを認識して、態度や行動、空気を改める。前向きに、より良い創作環境を(みんなで)つくっていく。その手助けをする役割を担いたいです。






背景・経緯

ハラスメントについてもっと勉強したいという思いから、先月東京にいたタイミングでちょうど開講されていた、日本ハラスメントカウンセラー協会の「認定ハラスメント相談員Ⅱ種研修」を受講しました。

約6時間の研修を受けたのちにチェックテストを受験、おそらくそれに合格し、約1ヶ月後の先日、ハラスメント相談員Ⅱ種の認定証が届きました。
チェックテストは約10問の簡単なテストで、(簡単というのは小規模なテスト、という意味で、内容はまぁまぁ難しかった)最終的にはそれで何点獲得したのかもわからないので、本当にチェック機能があったのか怪しい部分もあります。実質的には様々な検定を実施している一般財団法人全日本情報学習振興協会の講座・資格になるので、言ってみればお金で認定を買ったみたいなところがあるというか、あまり資格としては自分は信用していないところがあるのですが、ひとまず「ハラスメント相談員」を名乗ってもいい立場になりました。

大切なのはその肩書きよりも、自分が何を学んだかというところだと思っていて、これはとても収穫がありました。
講師の弁護士の方は6時間本当にずっと喋りっぱなしで、スライドも200枚近くあって、判例たくさん、とにかく情報の多い講座でした。
個人的には「不適切」というワードに出会ったことが嬉しかったのですが、ハラスメントの中身・事例だけでなく、相談を受ける際に気をつけたいことや用意したいものなど、具体的なことも知ることができて助かりました。

この講座は会社員向けというか、企業で相談窓口を担う方や人事担当、いわゆる管理職の方々の受講を基本としているものでしたので、フリーランスが基本の演劇現場での対応については一部私自身で応用しなくてはならないところもあるのですが、受講者にお一人、東京の民間劇場に勤めていらっしゃる実演家の方もいらっしゃっていて、「この研修に参加しているのも間違っていないかもしれない」と勝手に勇気づけられたりしました。


いざ直面しても「何をしたらいいのだろう」と右往左往して、何もできないまま終わっていく自分が嫌だったので、こうして新しい知識をつけることができて嬉しいです。
相談員の認定を受けてはいますが、正直、私の知識を保証されているものでもありません。経験もないです。
これからも継続して学びを深めていく所存ですが、現状はあくまでも、「ハラスメントについて問題意識を持っている」「ハラスメントの撲滅を願っている」「解決に向けて積極的に動く意志がある」ことの表明くらいにしかならないと認識しています。

これでも有意義であると感じてくださる方にはぜひご活用いただきたい、とこの記事を書いています。





未来

一方で、現実問題としてはハードルがいくつもあります。

福岡市内のカンパニーで普段から交流のあるところはごく僅かで、基本的に利害関係がないので、こうして座組単位で外部窓口を務めることができると考えています(逆に利害関係の生じうるカンパニーは打診をお断りする可能性があります)が、私自身も福岡市内在住の実演家(演出家・俳優)で、また自分でいろいろと企画します。出演俳優をキャスティングすることもあります。そのような人間にはなかなか相談しにくいこともあるかもしれない、ということは想像がつきます。

また、私は遠征が多く、まとまった期間福岡を離れていることが多々あります。その間、稽古場現地での対応等ができません。このため打診をいただいてもシンプルにお引き受けできないことがあります。

なので、おそらく私だけでは、外部相談窓口という存在を普通のものにすることはできません。
安心安全な創作が当たり前な環境を実現するには、ほかにも相談窓口を担ってくださる方がいらっしゃると嬉しいです。「相談員」や、「相談窓口」を名乗る必要はないと思います。けれど、存在が必要です。

こちらの、アートノトの動画が参考になるかと思います。
心や生活のいろいろに少しゆとりのある方にはぜひ、心に留めていただきたいです。
ハラスメント防止講座 2024【相談対応編 レクチャー】


また、公演・クリエイション単位の相談窓口でなく、恒常的な相談窓口の存在も求められます。こちらは市内の公的機関や芸術支援機関に設置されることが望ましいと考えています。
あくまでも私のこれからやっていくことは、未来へ続く繋ぎの存在である、という意識が少なからずありますし、お読みいただいている皆さまにもそのように認識いただければ幸いです。






紹介

ハラスメントについての学びも深めてまいります。

先述のアートノトの上げてくださっている動画がたいへん参考になります。
すでに舞台芸術の現場におけるハラスメント講習等を受講された方には不要かもしれませんが、そうでないという方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ、おすすめです。もしかしたら、過去に受講された方も新たな学びがあるかもしれません。
一人でも観られるし、みんなとも観ることができます。


そして、アートノトHPには、まだまだほかの講座のアーカイブ映像もあります。恥ずかしながら、私はまだ未視聴のものがあります。
ぜひ一度ページをご覧になってみてください。
ありがとう東京──


動画を観るのが大変な方は、こちらの緊急事態舞台芸術ネットワークによる「舞台芸術におけるハラスメント防止ガイドブック(ver1.0)」がおすすめです。




以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。