2021年のベスト(映画、ドラマ編)
本当は2021年中にアップしたかったが、大晦日に高熱を出してしまったため、このタイミングでの備忘録。映画は、相変わらず劇場で見る機会が減り、配信作品を中心に見る生活にシフトしたため、本来の映画的魅力を理解していない人間によるラインナップであることは否めない。
映画ベスト5
⑤ドントルックアップ
オールスターキャスト、しかも全員嬉々として演じているあたりの抜けの良さと、テンポの良いコメディ編集が覆い隠し切れていない切実した怒り。NYのリベラルな知性派が提示するコメディとして誠実かつ間違いない作りになっている。
④あの子は貴族
この作品における絶対的な強者は、風を感じることのできる人間だった。自転車(三輪車でも良い)に乗って風を切る登場人物は、自らの手で人生を選択することができる。同志たちと緩やかに交歓し、やがて散っていく。風と光があなたに恵むような、そんな映画だった。
③ザ スーサイド・スクワッド
ジェームズ・ガンが自らの過ちを認め、作品に昇華させたという点において、キャンセルカルチャーに対するカウンターとして充分な傑作。そして、これまでのフィルモグラフィを総括する「真面目に不真面目」な大傑作。
②プロミシングヤングウーマン
全方向に牙を剥け続けた、ポストフェミニズム時代の「正しくない」映画。時代(もしくは観客である我々)に向けた批評性が前景化されることのない、美術、ショット、編集がもたらす雄弁さ、面白さ。全てにおいて桁違いな、映画史に残るであろう作品。実質1位。
①アメリカンユートピア
私が理想とする人物像に、デヴィッド・バーンは当てはまりすぎている。知的で間抜け。シニカルで情熱的。劇場でこの作品を見ることができたことは、後世に自慢できることではないだろうか。
ドラマベスト5
⑤俺の家の話
長瀬智也という(文字通り)巨大な人間国宝が表舞台から去った2021年、最高の餞を宮藤官九郎は用意してくれた。「ファーザー」のアンソニーホプキンスに匹敵する、西田敏行の一世一代の名演は少なからず国内の俳優を刺激しただろう。
④地獄が呼んでいる
考察ブームによって「理解した気になる」ことが容易く可能になった現在。ままならない事態を、都合よく解釈することの危険性を最後まで指摘し続けた骨太な秀作。
③今ここにある危機とぼくの好感度について
大学≒社会にはシステムが絶えず不思議な壁としてそびえ立っており、卵として壁にぶつかり割れてしまう一個人の非力さをこのドラマは否応なく描く。ただ、右往左往する個人を滑稽に、愛おしく描く渡辺あや版「壁と卵」だ。
② 僕らのままで
箱庭のような街から出ること、ままならない事件、夜通し友人と遊ぶこと…。青春の全てと言いたくなるようなこれらの事象が、このドラマには刻印されている。
① 大豆田とわ子と3人の元夫
今年の時間の使い方、お金の掛け方からすれば、この作品を1位にあげること以外は考えられなかった。一言言わせてもらうならば、私は全宇宙の坂元裕二ファンの中で5本の指に入る日本語ラップファンであり、日本語ラップファンの中で5本の指に入る坂元裕二ファンであると自負している。
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