クレヨン Kyoto 北区/散文
春になるとなんでもできる気がしてくる。
一枚の絵を描いたなら、何億円も価値が付く気がしてくる。
こんな具合に春の陽気は私を阿保にする。
阿保な私はクレヨンの発色が好きだ。
ちょいと前に、良いお値段のクレヨンセットを京都の画材屋で買った。
紙にすわわーとクレヨンを滑らせると、なんと心地いいこと。
ふう、うふふ。
破顔。
横からみてごらんよ、色の乗った部分、厚み、堪らないねえ。
一本漏れなく使われたクレヨンは大切に保管された。
気まぐれで言い方を変えると、
押し入れの中で宝の持ち腐れという感じになっている。
ふうむ、何億円もする絵を描いてしまおうか。
桜前線にやられた脳が全身に指令を出して動き出す私。
前触れもなく京都でよく見かけた猫を思い出したので、
これは天からのお告げで描いたら何億円もする絵になる。
とか捕らぬ狸の皮算用なんて言葉を使うことさえ憚られ、
「午後はたまごが二割引き」くらい結果は見えている。
そうして、私はクレヨンで1時間くらいかけてじっくり絵を描いた。
これは褒めてもいい(褒めて欲しい)
ああ、いけないうっかりひゅうひゅう
心の声の方が大きくなってしまった。
京都府京都市北区のとある細道は
私のお気に入りの散歩道。
図々しい態度が愛らしい大きな大きな猫は、
近所のマダムたちから鱈腹ご飯をもらっていた。
餌やりマダムの数だけ名前を持つ猫だった。
それぞれが責任をもって可愛がっている証拠である。
(それならば酷暑酷寒の京都、一生家で可愛がれとも思ったが)
私は「マダム」には程遠く、
年齢とは裏腹に「何回生です?」と聞かれる始末だが
この子に名前を付けこっそりマタタビをやっていた。
夏、その地域から引っ越したので今は何しているのやら。
マタタビ狂いのナツメさんにフタタビ会えることを願っている。
▼ナツメさんの名前の由来