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1.サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳)

今回は、王子さまのバラへ手紙をしたためました。

王子さまのバラへ

私はこんなに美しいバラを、他で見たことがありません。あなたはとても、とても、気高くて美しい。だからお花屋さんに行ってもバラを買い求めることはないし、バラ園を散歩していてもやっぱり、あなたほど美しく花を咲かせるバラに出会ったことがありません。
あなたが美しいのは、王子さまがあなたを愛し、守り、育ててくれたからで、そのおかげであなたは自分の花びらの美しさも、豊かな香りも、4本のトゲにすらストーリーを与えて特別なものにしてしまうことができた。でも王子さまはまだ少し幼くて、そして他にもいくつかの守るべきものがあったから、あなたほど、愛について考えることができなかった。だからあなたの態度にあるユーモアをきちんと汲むことはできなかったし、裏に隠された弱さや賢さを知る術もなかった。それでも、王子さまにとってただひとつの、特別な愛しいバラであることに、変わりなかったのだけれど。それを知るために、彼には旅が必要だった。
私はひとり星に残されたあなたが、夜風に凍えていないか心配です。あたたかな日差しと、十分な水は降り注いでいますか。時折ちょうちょが遊びに来てくれていますか。活火山はまだ隣で静かに熱源となっていますか。王子さまが、あなたのところに無事帰れていると良いのですが。あなたが王子さまにしてあげられることと、王子さまがあなたにしてあげられることは全く違っていて、あなたは王子さまを迎えに行くことができないものね。でも、待っていることはできる。ずっと、ずっと、待つことができる。芳しいあなたが、艶やかな花びらと言葉をもって、艶やかな王子さまの頬に触れることができますように。

敬愛を込めて。Kamoi 

追伸
王子さまは遠く離れたところからでも、帰るべきあなたのいる星がすぐにわかっていましたよ。

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