藤村正宏 『「つながり」で売る!法則』
モノが売れない今の時代に、どうやってモノを売るか? というテーマに対して、「つながり」によるマーケティング手法を10年以上やっている藤村さんという方の本。
この方は、「モノを売らずに体験を売れ」ということを軸にした「エクスペリエンス・マーケティング」と考えを軸に、パナソニックやカメラのキタムラ、イオンといった大手企業から、中小企業にいたるまで幅広くコンサルをしているそうです。
買う理由がない時代には「つながり」が理由になる
「人は情報が膨大になると、近い関係性の発信者の情報を信頼する」と本書冒頭で紹介されていますが、これはデジタルマーケティングの世界ではたびたび言われていることです。
「つながり」や「関係性」のあるお店やブランドから購入するというのは、ひとつの大きな流れといえそうです。
モノが溢れている現代にあっては、「買う理由」が商品の良さや機能ではなく、お店やブランドとの「つながり」になる、ということ。
SNSが浸透した今はその流れが加速しており、SNS消費がますます重要になってきている。そのことを本書ではさまざまな事例を用いて紹介しています。
「モノ」ではなく「コト」を売る
「ライフ」ではなく「ライフスタイル」を売る
「スペック」ではなく「意味」を売る
モノを売っているだけでは売れない、それに付随する体験やライフスタイルを売ることが必須である・・・よく言われてきたことではありますが、つい忘れがちなので常に頭においておきたいですね。
モノだけでは売れない時代に何を売ればいい?
モノだけでは売れない時代に、何を売ればいいのか?
「スペック」だけでは売れない時代にあっては、下記のことを常に念頭に置くことが大事だといいます。
「人々はあなたの商品は欲しくない。〇〇したいだけ。それによって「△△」な生活や人生を手に入れたい」
これは以前紹介した『ジョブ理論』と似たような話です。ジョブ理論については下記のレビューを読んでみてね。
売り手としては、つい、その商品自体をお客さんが欲しいと感じてしまいがち。
しかし、お客さんが欲しいのはその商品を通じて得られる「変化」なのです。
商品によってお客さんの何が変わるのか。それを意識することは広報の訴求活動においてもきわめて重要な視点だと思いました(僕は広報部で働いているので)。
お客さんの購入にいたるまでの流れ
興味深かったのは、商品購入にいたるまでのお客さんの流れについての説明。今までは、
商品購入 ⇒ 好感・共感 ⇒ SNSでつながる
という順序が多かった。しかし、今はまったく逆パターンで、
SNSでつながる ⇒ 好感・共感 ⇒ 商品購入
になっているといいます。
これは別で紹介した『僕らはSNSでモノを買う』で紹介されている考え方と同じことを言っています。
どういうことかと言うと、まずはSNSでつながり、そこで何らかの「関係性」を持った企業やブランドから商品を購入する。
別の言い方をすれば、商品検討時に想起された企業やブランドの商品がよく購入されるという意味でもあります。これが今の消費者の大きな動きなのです。
その意味で、SNSのフォロワーは、実際に商品を購入していなくても、すでに「既存客」として接しようと説きます。で、その「既存客」を徹底的に大切にしていく。それがさらなる次のつながりを呼んでくる、といいます。
この主張は『ファンベース』の基本と同じであり、これからのマーケティングには必須の視点のように思えます。
SNSの目的とは?
また、SNSの目的はフォロワーを増やしたり露出を増やすことではなく「コミュニケーション」であるといいます。
つい、フォロワーを増やして露出を増やすという目的が、その分かりやすさから求められがちですが、そこが最終ゴールではない。
コミュニケーションをとることで、ファンとつながり、コミュニティをつくっていくことがSNSの大事な役割だといいます。
本書では、「コミュニティ」の具体的な作り方については説明していませんが、お店のファン同士がつながって、コミュニティを作り出している事例もいくつか紹介されています。
この「コミュニティ」というのは、モノが溢れている時代、情報が届かない時代、モノを買う理由がない時代という今にあって、マーケティングの中で存在感を増しているように感じられます。
今後その方面の関連書籍もレビューできればと思っています。