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『ドリルを売るには穴を売れ』のレビュー
売上が伸び悩むレストランをどう立て直すか、というストーリーを軸にマーケティングの理論を分かりやすく説明した良書です。
マーケティングというと抽象的な話や小難しい話がおおく、とっつきにくい印象がありますが、この本にはまったくそういった要素はありません。
むしろすらすら読めちゃうので、逆にマーケティングのことを忘れてしまうくらいw
でも、レストランを立て直していく背景の理屈はまさにマーケティングそのものなので、自然とマーケティングの考え方が身につく、といっても過言ではありません。
マーケティングに直接関係がない人でも、読むべき本だと思います。飲食業に関わっている人であれば、テーマがど真ん中なので必読だし、中小・個人経営ならすぐに応用できる考え方が満載です。
ふだん私たちはマーケティングをしている
自然とマーケティングの考え方が身につく、と書きましたが、本書によれば、私たちは普段からマーケティングをしているといいます。
というのは、何かモノを買うときは必ずマーケティングの結果だから。それが意図されたものかどうかは別にしても、なぜ自分はその商品を買ったのか?ということが、すなわちマーケティングだといいます。
そして、なぜ自分はその商品を買ったのかを細かく考えることが、マーケティング脳を鍛える最適な(しかも無料の)手段だともいいます。
「このようにマーケティングとはわたしたちが毎日のように体験し、自然と感じている当たり前のことばかりだ(p.17)」
押さえておくべき4つの理論
マーケティングをわたしたちは日常的にやっている。とはいえ、自然にやっていることと、体系的に知っていることは違うわけです。
日本語は話せても、日本語をうまく教えることが難しいのと同じ。たしかにね。
そこで最低限知っておくべき「理論」として筆者が紹介するのは、つぎの4つです。
▼ ベネフィット
▼ セグメンテーションとターゲティング
▼ 差別化
▼ 4P
どの言葉も、マーケティングの入門書には大方紹介されているものですが、本書ではそれらが物語のなかで語られるので、すっと頭に入ってきます。
差別化は究極的に3種類のみ
なかでも印象的だった差別化について、ちょっと紹介しますね。
差別化には究極的に3種類しかないといいます。
▼ 手軽軸ー安くて早くて便利
▼ 商品軸ー良い商品やサービス
▼ 密着軸ー顧客に密着
これはとにかく分かりやすくて応用範囲が広い。たしかに成功している事業は、なるほど、これのどれかに当てはまります。
「差別化」というと、とにかく競合と違うこと、というイメージだけが先行し、なんだか漠然としています。競合と違えばいいという軸だけだと、極端にいえば、なんでも言えちゃう。
しかし、この3つのどれを狙っていくのかを知っているだけで、考える方向性がかなり明確になると思います。
「このような「顧客にとっての価値」は3つに大別でき、それぞれに対応する3つの差別化戦略が存在する。この分類は、M・トレーシー氏とF・ウィセーマ氏が提唱した、企業が顧客に提供する価値の3つの分類の着想をもとに、わたしがアレンジしたものだ。オリジナルとはだいぶ異なっているが、それについてはわたしが責任を負う」(p.112)
ほかのおすすめ本
という感じで、基本の理論をベースに説明しながらも、そこに筆者の経験からくる独自のエッセンスを追加して、より分かりやすく、より想像のしやすい説明がつぎからつぎへと繰り出されます。
ベネフィットの説明とかも分かりやすかった。気になる人は、ぜひ本書を手にとってみてください。
ちなみにストーリー仕立てのマーケティング入門書という意味では、下記もおすすめ。
あえて比較をすれば、より読み応えがあるのは『ドリルを売るには穴を売れ』だと思います。