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『「いいね」を購入につなげる 短パン社長の稼ぎ方』のレビュー

キャッチーなタイトルとカバーで、語り口調もフランクですが、内容はかなり本質をついたもののように感じました(偉そうな物言いw)。

SNSを活用したいと考えている中小企業、個人事業主の人にとっては必読ともいえる内容です。

とはいえ、本質の部分については、大きな企業こそ参考にすべき部分が多い気がしました。

筆者は、もともとショップに洋服を卸しているアパレルメーカーの社長。SNSを通じて、たとえば1枚15,000円のポロシャツを、1回の告知、数時間で数百枚売っちゃったりするような人です。(販売に関してはFacebookが基本のようです)

そんなことがどうしたら可能なの?という疑問に真正面から答えた内容になります。

お客さんとつながること

大事なのは、お客さんと「つながる」こと、「関係性」をもつことだといいます。

「目的はお客さんと関係性をつくることであって、SNSをやればいいのではないし、
プライベートを見せればいいってもんでもない。
ましてや短パンをはいていればいいというものでもない。
お客さんと関係をつくるのが目的で、共感してくれる関係であること。
その手段としてのSNSであり、手紙であるのです(p.36)」

SNSにおいては「つながり」や「共感」が大事と言われて久しいですが、それがじゃあ具体的にどういうことなのか? きちんと語れる人は少ないと思います。

すくなくとも私にはそれを適切に説明することはできませんでした。

ただ本書を読むと、その全容がうっすらとイメージできるようになります。詳しくは本書を読んで、ぜひ体感してほしいなと思います。とても読みやすいです。

「つながり」や「共感」が大事といわれる背景としては、やっぱりモノがあふれていることがあると思います。ひとびとには「買う理由」が必要なんです。

人(ブランド)を通じてモノが売れる

で、その理由というのが、

「あの人が売っているから買う」
「あの人がつくっているから買う」

ということなんでしょう。

次の部分は、まさにそれを的確に表現していると思いました。

「いいものつくれば売れると思っている人が多いけれど、そうではなく、
人は人でモノを買うんです。モノはどれも似たり寄ったり。
だから人が浮かび上がってくるんです(p.69)」

大きな企業であれば、「人」の部分を「ブランド」、「企業イメージ」に置き換えてもいいと思います。もうその商品やサービスの機能だけで消費する時代ではない、ということ。

小難しくいえば、商品の「機能的価値」よりも「情緒的価値」が大事だということです。

さらに、人を通じてモノを買うから極端にいえば売るモノは何でもあり、という話もおもしろかったです。

たとえば、SNSで牛一頭を売っている人がいたり、ローカル電器屋の奥さんがカレーのスパイスを売ってたりする例が紹介されています。

本書の筆者だってアパレルメーカーだけど、カレー、コーヒー、米、ビールを売っている。最近はバーまでオープンしようとしている。なんでもあり。

お客さんは「その人」についているお客さんだから、何を売っても関係ないわけです。その人がおすすめするものなら売れる。うらやましい状態ですね。

「ビジネスもやっぱり愛」

興味深いのは、この筆者はマーケティングや広告を学んだわけでもなく、「ただ面白いから」「お客さんを喜ばせたいから」という想いだけでやってきたという点。

バーをオープンするのだって、「お金が稼げるから」という理由を第一にしていない。「お客さんを喜ばせて、自分も楽しみたい」という気持ちでやっている。

やっぱりビジネスも「愛」ですよ(p.46)という言葉が印象的でした。

顧客層を分析したり、市場動向を調査したり・・・といったことはほとんどやっていない。でも売れる。

そういう意味では、なんだか夢を感じさせてくれるようなところがあり、それも本書の魅力のひとつかもしれません。

ちょっとしたノウハウ的なものとして気になったのは、SNSを発信するときは、誰でもいいから誰か一人を意識して書くといいということ。

スピーチとか講演とかでは、同じようなことが言われますが、SNSもそういうものかなと勉強になりました。

TwitterやFacebookでもすこし意識してみようと思います。

モノがあふれている今の時代に、「買う理由がない」お客さんに、どうやって買ってもらうのか。

乱暴にいえば、自社や自社ブランドを好きになってもらう、ということに行き着く気もします。じゃあ、どうやって好きになってもらうのか?愛着を持ってもらうのか?どういうブランドに育てていくのか?

なんだかいろいろと考えさせられる良書です。


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