『手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』のレビュー
広告というものが歴史的にどういう背景と理屈で動いてきたか、ということを詳しく、かつ分かりやすく紹介した本。
歴史なんていいから今何をすべきか教えてよ!と思う人もいるかもしれませんが、いやいや、やっぱり歴史っていうのは大事だなとあらためて実感。
私はいま、広報・PRの業務をしていますが、歴史のなかで自分がどういう立ち位置にいるのかがわかると、自分の業務の意義が見えやすくなるし、やるべき方向性や今後の見通しも立ちやすくなります。
というわけで、広告にかかわっている人はもちろん、広報・PR・SNSにかかわっている人も必読の本です。
ちなみに本書タイトルに入っている「コミュニケーション」というのは、ほぼほぼイコール「広告・広報」のこと。
コミュ障のコミュニケーションとは違います、念のため。
だから、この本の想定読者を具体的にいえば、広告・広報・PR・宣伝・販促・デジタルメディアなどを担当している人になります。
7つのコミュニケーション論
本書では、広告・PRの必要性、というか方法論のようなものは7つに分類できるという主張しています。
それら7つの方法論は、その当時の状況から必然的に生まれてきたものだ、ということをみっちりと解説してくれます。
情報量が多すぎて、とちゅう、ちょっと息切れするかもしれませんw そのくらい濃い内容です。
7つの方法論は環境変化によって生まれてきたとはいえ、今でもすべてが有効であり、把握しておく必要があるといいます。
環境の変化というのを大きくいえば、
製造者主体だった需要が旺盛だった時代
↓
供給過多になり消費者主体の時代
↓
インターネットの普及による情報過多の時代
というそんな大きな流れがやっぱり関係しています。
7つそれぞれの方法論の説明についてはぜひ本書を読んでみてください。どの論もほんと勉強になります。
個人的には、AIDA、AIDMAといった今ではカスタマージャーニーと言われるような概念の説明にはじまり、エンゲージメント論からクチコミ論につながっていくくだりは、なかなか勉強になりました。
あー、なるほど、そういう風にコミュニケーションは変化してきたのかと。
これがつかめると、今なぜSNSがコミュニケーションのツールとして企業で使われているのかも分かってきます。
マーケもコミュニケーションも全体最適が求められるように
序文で、けっこうおもしろい話をしています。
それは、マーケティングもコミュニケーションもここ20年くらいでやり方がだいぶ変わってきたということ。
これは、広告もしくはマーケティングどちらの業界の人もそこに長くかかわってきた人たちが、口をそろえていっていることです(私調べ)。
たとえば下記の本とかもそう。
どういう変化かいうと、マーケティングもコミュニケーションもどちらも全方位的・全体最適なものが求められてきたということ。
別の言い方をすれば、部分最適ではなく、会社や事業全体をみた全体最適な考え方が、マーケティングにおいてもコミュニケーションにおいても重要になってきているといいます。
昔はマーケティングといえばSTPをとりあえず考えておけばよかった。
STPというのは、顧客をセグメント(Segment)して、ターゲティング(Targeting)して、ポジショニング(Positioning)する、という古典的なマーケティング手法のこと。
で、コミュニケーションはといえば、マス広告を打っておけばよかったわけです。が、最近ではそうはいかなくなったといいます。
本書ではその理由について細かくは分析されていません。
おそらく、すべてが顧客中心になってきたことと(これは豊かになってモノが売れなくなったからでしょう)、インターネットの発展が大きいのだろうと思います。
で、全体最適ってどうやればいいの?ということを考えるためには、本書で整理されている広告の歴史をおさえておくことがやっぱり重要になるので、そういう意味でも必読の一冊です。