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無いものは作るんだよ。てやんでぇ。

(すみません。江戸っ子じゃないです。)

かつら屋にいた時に師匠に言われたことです。
無いもの(道具)は、作るんだよ。

日本髪を結うには櫛をはじめ、様々な道具が必要になります。櫛はさすがに買いますが、ここで言う道具とは日本髪を美しく形作る江戸期から使われていたような"型"と呼んでいるものなどです。
例えば、丸髷の髷のあのふっくらとした形は丸髷専用の"丸髷の型"が入っています。一昔前は京都のかんざし屋さんでも、売られていたのです。年齢に応じて丸髷の型のサイズも大中小などがあったりして。

でも、もう作り手さんがいらっしゃらない。
作らないとしゃあないのです…。昔の型を解いて何が使われているか、どうしたらこのフォルムができるのか…。しかし解いただけではワカラナイことがたくさんです。作ってはダメ出し、作ってはダメ出し…理想の形に近づけていくのです。
もちろん作らねばならないものは他にもたくさん。
江戸期から今日まで伝わってきたものや文献を参考にしながら、いかに改良できるか、軽量化できるか…。でも昔の人もきっと改良しながらいろいろ考えていたはずです。美しくなるためにはいろんな努力をしていたはず!

先輩はいつもかつらや道具の改良の事ばかり考えており、よく目が宙に浮いていたり、あるいは壁の一点を見続けていたので、我々後輩からは「また宇宙と交信したはるで。」と、そっとしておかれるのが常なのでした。







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