師走の手仕事
師走
「よしえ食堂ができるまで」ということで、毎週月曜日に、このnoteで私の人生を振り返っています。今日は冬至ですね。「柚子湯」にでも入っているのではないでしょうか?私は、今年はゆずが豊作で、朝から夜まで、ゆずの香りに包まれてゆずごしょうを作っています。そんな年の瀬も押し迫り、クリスマスを目の前にして師走の忙しい時間を過ごしていることと思いますが、そんな思い出も振り返ってみたいと思います。
四季折々
先週、母のテーマが「日常茶飯」にあったことをお話しました。そんな日常には、季節の手仕事や、行事の食事、季節ならでは手仕事もありました。例えば季節の手仕事といえば、6月の梅仕事、7月の奈良漬け、9月11月に私が心血を注ぐゆずごしょう作りも季節ならではのものです。冬には、白菜漬けや、たくあん漬け、春になれば、高菜漬けに、ぬか床と、季節の移り変わりは待ってくれないので休む暇もなく続きます。日本には四季があります。風が暖かくなって、日差しが強くなった、日暮れが早くなった、一日が長くなったと、その折々を体が感じて、植物も動物たちも成長をしていきます。最近では温暖化の影響もあってか、季節の移り変わりに異変を感じることも多いのですが、それでもその地域その地域で季節ごとに培われたものがあって、しっかりと食文化が根を張っているのを感じます。
おせち
昨日、中川政七商店の「12月の季節の手仕事かんたんおせち編」のオンライン講座を配信しました。ひと足早くお正月がやってきた感じです。不思議ですね、黒豆を食べて、数の子と口にして、お雑煮をいただくと、思わず「あけましておめでとうございます」と言ってしまいそうでした。わが家では、行事食の中でも、おせちづくりは1年の中でもとても比重の大きなものでした。確かに私が子どものころは、三が日は商店もスーパーも百貨店も閉まっているので、家族の3、4日分の食事の確保は必須だったと思います。祖母も昔の人ですから、師走の声が聞こえると、すぐさまお正月の準備に入りました。乾しいたけ、昆布、勝ち栗、するめ、根菜類、おもち用のもち米と小豆など。わが家で欠かせないのが「焼きハゼ」です。昨今、あごだしは有名になりましたが、母方の祖父の流れで、焼きハゼのだしのお雑煮がうちの定番になっています。時には、弟が小学生の頃は、川と海の境の釣りに行って釣ってきては、七輪で焼いていました。最近では、知り合いに分けてもらったりしながら、必ず用意しています。ちなみに、お雑煮は、丸餅をゆでて、ハゼだしのおすましです。
にぐい
母は、高校でおせち料理を高校で生徒さんに教えるので、昔は練習も兼ねて試作が続いていました。だから、私も傍らで、それを見ていたのですが、伊達巻は小学校3年生のときの課題でした。当時は、魚のすり身に卵白を泡立てて、卵焼き器でごくごく弱い火でじっくり焼いて作っていました。それが今では、はんぺんもあるし、フードプロセッサーもあるし、オーブンもある。あっという間に出来上がります。ここ数年は、親戚や知り合いのために十数本も焼いています。母から受け継ぐ、わが家の味でもあります。
また、母がフィールドワークの末、行きついたおせち料理に「にぐい」があります。地元ではよく食べられる「にぐい」。煮て喰うから「煮ぐい」、2度喰うから「二ぐい」。筑前煮とか、炒り鶏、がめ煮に似たもので、鶏肉、根菜類、しいたけやこんにゃくを淡口醤油、濃口醤油で味つけします。汁をたっぷりと仕込み、年越しそばのだしにしたり、雑煮のだしにしたり、煮しめて煮〆としても食べるのです。特別なだしをひかなくても、それぞれの素材からおいしいだしが出て、滋味豊かなあじわいにしあがります。まさに母が思う「伝承料理」、次世代に残したい料理です。手軽で、便利、さまざまな場面で応用が利きます。
お餅つき
一般的にお餅つきは、29日を避けたりします。9が苦に通じるといわれるからですが、わが家は「2(ふ)9(く)」に通じるからと、長らく29日がお餅つきでした。子どものころは杵を臼でついていましたが、機械でつくことが増えました。昨今は、衛生上、素手で丸めるのが悪いと言われたり、市販のパック入りのお餅などが便利だったり、この行事も少しずつ少なくなっているようにも思います。
以前は、親族や友人家族が集まり、外で火おこしをして、お鏡餅から、あんこ餅、きなこ餅、す餅などなど。お餅をつきながら、その年のことを振り返ってみたり、来年のことを話したり、そんな年中行事でもありました。
鏡餅が上手に作れるようにならなければ、「そのうちの当主にはなれないよ」と言われて、鏡餅の作り方を覚えるのは必須でした。あんこ餅の包み方も、丸餅のちぎり方も、この1年に一回の餅つきでマスターをするしかないという、なかなかのハードルの高いものでした。
だから気がつけば、なかなかのベテランになっています。
今日は思いがけず、師走の話題になりましたが、母の思い出に重ねながら、お正月準備のことを振り返ってみました。