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引退(リタイアメント)に際して ~ 投資したあとにすべきこと(5)
(第5章(4)からどうぞ)
引退後の生活は、基本的に貯蓄や投資の成果を取り崩す段階として、いろいろ想定しておきましょう。これまであちこちで少しずつ述べてきましたが、要するにキャッシュのアウトフローの時期がきたのです。
現金流出のためには、文化的な最低限の生活に当たる部分に貯蓄を、潤いのある生活に当たる部分に投資の成果を当てるのが原則となりますが、別にお金に色がついているわけではないので、投資の成果を生活費に充てても問題ということはありません。貯蓄を潤いに充てると、貯蓄の目的に合致した支出が増えた時にうまくいきませんのでこちらはお勧めしません。
潤いのある生活に充当するアウトフローのために、投資の成果からインフローを得る二つの方法があります。一つは、投資している投信などを売却すること、もう一つは、インカム・ゲインを得るように設計しておくことです。
ここまで、潤いのある生活のための投資のコア部分は、バランス型のファンド(投信)で運用してきたとします。この投信は、必ずしも毎月の生活費に利用できるように(アウトフローが)設計されていないでしょう。分配も年1回かもしれません。毎月の生活費を普通預金・現金で欲しいとすれば(クレジットカードでも毎月普通預金から落とされるでしょうし)、投信を少しずつ売却しなければならないことになります。頻度の高い売買は手数料コストの増大につながります。1回は大した額ではなくても12回ではそこそこリターンに影響を与えるかもしれません。
そこでリタイアメント時代には、たとえば一部を毎月分配型投信にすることにも「意味がある」ということになります。このような投信であれば、毎月だいたい同じ額の入金を普通預金で受けることが期待できるようにすることが可能でしょう。REIT投信やバランス型投信でも毎月分配型があるので、引退をきっかけに年1回の投信から移すことを検討してもいいかもしれません。もちろん面倒を引き受けるならば、6か月に1回などの利払いの債券を買うこともできます。面倒とは、大概の場合、半年に1回の利払いを毎月の支払いに自分で分別することと、償還されるたびに次の債券を探して買い付けることです。
毎月分配型投信は、分配原資がなくてもしばらく安定分配を続けようとして元本を減らすことがあります。あまりに元本を減らしてしまうと今度は回復時のリターンが減りやすくなるので、下げが続くようだと月次分配金を下げることになることがあります。ファンドの都合である程度分配金額が動いてしまい、リタイアメント世代には少々不都合です。
その意味で、金融機関・証券会社の「定期受取りサービス」は有用です。これは投資家ごとに必要なキャッシュフローの金額あるいは時期を設定して、投信の運用成果を毎月受け取ります。金額を定めれば運用成果が良ければ長く、悪ければ短く受け取ることになるし、口数で設定すれば決まった比率で投資成果が減っていくことになります。このサービスを提供している金融機関・証券会社は限られていますが、今後広がることを期待しています。
ところで、リタイアメントに際して、分配中心のインカム型と成長に期待するキャピタルゲイン型の比率をどのようにしたらいいでしょうか。一般に、年齢、知識や意志などで決めるとされ、加藤康之京都先端科学大学教授(「退職後の資産運用 超高齢化時代のリタイアメント・マネジメント入門」2014年発行)は、リタイアメント前期にインカム50%、成長30%、現預金20%、後期にはインカム40%、成長10%、現預金50%を例示しています。
ただ、決まりはありませんので、ここはとりあえず自分で考えることになりそうですね。成長の果実を取るためのポートフォリオ、インカムのためのポートフォリオ、減らしてはならない現預金、と機能別に資金を分けておくことで、現役世代、引退世代それぞれにちょうどいいポートフォリオを考えていくということです。REITのように成長もインカムも想定できる商品(どちらかというインカム)もあるのですが、それは両方にいくらかずつ入れたとみなすこともできますね。
(第6章に続きます)