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米雇用統計への市場の反応は過剰とみる

8月2日発表の7月の米雇用統計を受け、予想以上の失業率で景気悪化の恐れがあるとの警戒が広がり、アメリカ株式市場は急落、為替市場はドル安円高になりました。

ただし、失業率は上昇しましたが雇用者数は増加しており、コロナ禍後の正常化の過程において過去の経験則をあてはめて景気悪化を予想するのは過剰反応に見えます。雇用者増加数は市場の予想よりも低かったのですが、7月統計だけで景気悪化のシグナルと決めるのは気が早すぎるとみています。

今回の株式市場とドルの下落は、しばらく市場が景気悪化のリスクを忘れていたことの裏返しです。米ダウ工業株30種平均(NYダウ)は7月の今年の高値をつける前の水準に戻り、日経平均株価は今年1月からの上昇分をおおむね失う程度の水準に戻りました。

日経平均の方が高値からの下落率が大きい理由は、いずれ日米の中央銀行による政策変更でドル高円安からドル安円高に変わるだろうということをだいぶ先だと想定していたのに、意外に早くなりそうなことにあります。日銀が政策を変更したから株価が下がったというよりも、日銀が変更してもおかしくない状況を日本株市場が無視してきたというべきでしょう。

一方、米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げする可能性は徐々に高まっていました。日本株市場は、これを見逃したうえ、今回の雇用統計で、思いのほか利下げのペースが早まり、ひいてはドル高円安が急速に進むのではないかと恐れ始めました。

市場は当面、リスクに対して慎重になり、秋以降まで日米の経済がそれほど悪化していないというニュースを待つことになるでしょう。株式市場の上下動は大きいですが、長期投資であれば、投資スタンスを変更する必要はないでしょう。

〔チーフ・ストラテジスト神山直樹のレポート等は下記URLからご覧いただけます〕
■KAMIYAMA Reports https://www.nikkoam.com/market/kamiyama-view/kamiyama-reports
■KAMIYAMA Seconds! ~90秒でマーケットニュースをズバリ解説 https://www.nikkoam.com/market/kamiyama-view/kamiyama-seconds
■「投資ってなんだ!?」 https://www.nikkoam.com/market/kamiyama-view/kamiyama-investment
■神山解説 https://www.nikkoam.com/products/etf/we-love-etf/#1:category:113 

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