![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/18649088/rectangle_large_type_2_df8c8efe2200bde58fd1a343357fbeac.jpeg?width=1200)
モデレーターのコツとは?上手に進行するスキルと事前準備
こんにちは上村です。僕はこれまで、Salesforce活用やB2Bマーケティング、MA活用のテーマのパネラーとして登壇する機会が多くありました。そして2020年1月にはじめてモデレーターをする機会を頂きました。モデレーターはパネルディスカッションの満足度を左右する重要な役割。その後も何度かモデレーターをしてきた経験を踏まえて、僕がいつも事前準備していたこと、当日意識して実践したことをまとめたいと思います。
モデレーターの役割
言葉としては「仲介人」や「調停者」の意味です。パネルディスカッションにおいてはファシリテーターとして進行を担う役割。
テーマを提議したり、パネラーに質問を投げかけたりして、限られた時間で聴講者の聞きたいことをまとめる役割です。
良いパネルディスカッションとは
実際、パネルディスカッションは当たり外れの幅が大きいイベントです。
イマイチな例として、抽象的な話ばかりでふわっとした議論になってしまう会や、パネラーの個人的な話ばかりに終始して内輪の雑談になってしまう会もよく見かけます。また、パネラーが事前に用意したスライドを使って話をしてしまう会も。これだと、講演形式の話を複数人で順番にやっている状態と変わりません。
良いパネルディスカッションとは、聴講者が知りたくなるテーマが設定されていて、それを講演では聞けない具体的なエピソードやホンネを通じて、納得感ある回答が提示される会だと思っています。これを実現するにはモデレーターに十分な事前準備とスキルが必要です。
イベントまでの事前準備
当日の成功を左右するのはモデレーター側の事前準備が9割です。適切なテーマを設定し、パネラーの理解を深め、進行計画を立てておきます。準備をしなくても成功することはあるでしょうが、準備をしていれば失敗をするリスクを限りなくゼロに近づけられます。
準備1:テーマとなる問いを設定する
パネルディスカッションを通じて伝えたいことをテーマに仕立てます。伝えたいことはそのままではテーマになりません。テーマは聴講者側の視点にたった言葉に変換します。
「伝えたいこと」は、聴講者にとってどんな問いの回答なのか。その「問い」の方がテーマです。そしてこれはそのままパネルディスカッションのタイトルに使えます。
例えば、「SaaSのシステム管理者はやりがいあるよ、活躍するには◯◯が重要だよ」ということを伝えたいとします。これをそのまま要約して「システム管理者における◯◯の重要性」とテーマ設定したらどうなってしまうか。当日、このテーマに沿って展開されるパネラーのエピソードは、必然的にこの結論に沿った話になります。参加者にとってはオチの見えた話になり、下手をすれば持論の押し売りのようなパネルディスカッションになってしまいます。
聴講者側から見た言葉でテーマに仕立てるなら「システム管理者が活躍するために重要なこととは?」のようになります。こうするとどうなるか。当日、この「問い」に沿って展開されるパネラーのエピソードは、オチが予想できない話です。本当にその問いに回答がでるのか、と期待と不安の交じる展開を経てその場で導き出される回答。その過程を一緒に体験できるように進めることがモデレーターの価値です。そのためには良いテーマ設定が最重要です。
準備2:パネラーの予習をする
モデレーターはパネラーについて誰よりも知っている必要があります。事前に打ち合わせをすることはもちろん、その前にできる限りの予習しておきます。ビジネス系のパネルディスカッションであれば、パネラーが所属している企業、扱う商材、業務上の役割、ビジネス規模などの外形的な情報。過去の講演履歴、掲載記事、こだわっている点、特徴的な点を調べられるだけ調べておきます。特に外部講演しているパネラーの場合は材料が豊富です。
そうして集めた情報から、テーマの回答を導くために誰のどういったエピソードが繋がりそうかの仮設を立てておきます。そうすることで進行を考えるのが格段にラクになりますし、何よりモデレータ自身に安心感が生まれます。
準備3:進行計画を立てておく
決められた時間内にテーマの回答を出すために、セッション全体の構造をつくります。要はどういう質問をしていくかの進行表です。
大抵のパネルディスカッションの構造は、冒頭にテーマ提示とパネラーの自己紹介をして、最後にひとことコメントを設けることが多いです。なので前後だけで10分は必要で、自由に使えるのはその間の時間です。
本編の時間は余裕を持って設定しておきます。なぜならモデレーターが質問を投げかけることで「話を膨らませる」ことは簡単ですが、パネラーの話を遮ってモデレーターが「進行を巻く」ことは難しいです。少なくとも1つの小テーマにつき、1人4分くらいの時間を割り当てないと十分に話が聞けません。パネラーが3人であれば12分くらいです。
今回は40分で2つの小テーマを入れました。実際の進行表は以下です。セクションごとの終了時間を目安にペースをコントロールします。
▼1/25 進行表 14:20~15:00
内容 割当時間 終了時間
テーマ紹介 3分 ~14:23
自己紹介 2分×3人 6分 ~14:29
テーマA 2分×3人+5分 11分 ~14:40
テーマB 2分×3人+8分 14分 ~14:54
ひとこと 2分×3人 6分 ~15:00
モデレーターに必要な進行スキル
事前準備をしっかりしたら後は当日進行です。パネルディスカッションを上手に進行するために必要なスキルは、上手にパネラーを紹介し、話を深堀りし、回答を導くスキルです。
スキル1:上手にパネラーを紹介するスキル
パネラーと聴講者は初対面のことも多いです。聴講者は、知らない人の話を聞きたいとは思いません。モデレーターから上手にパネラーを紹介し「権威」「親近感」の2つを感じてもらうことが大切です。
権威。パネラーが何かビジネスで成果を出した人であれば、その実績や受賞歴を紹介するのが有効です。本人から話すと自慢のようになってしまうのでモデレーター側から紹介した方が自然です。
親近感。パネルディスカッションでは記事や講演では見られない素の姿を見たい場です。聴講者相手には緊張しているパネラーも、モデレーターとの会話では少し緊張感を解いた表情になります。冒頭は積極的に会話をしたり雑談のようなことを振って緊張感をほぐしていきます。
パネラーのこういった側面を冒頭に紹介することで、聴講者はパネラーを理解し、話を聞いてみようかなという期待感が生まれます。
スキル2:エピソードを深堀りするスキル
パネラーの話を聴講者に鮮明にイメージさせるためにモデレーターは質問をして深堀りします。よく使うのは「具体化」「動機の言語化」の2つです。
「具体化」はシンプルです。パネラーの話のある部分をもっと詳しく聞きたいというところを具体的にしていきます。パネラーの特徴的な行動や考え方が出てきそうな部分を察知することが重要です。
▼具体化の質問
〇〇の部分を、もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?
◯◯というのは、例えばどんなものでしたか?
◯◯は、具体的にはいつ頃でしたか?
◯◯は、数字にするとどのぐらいでしたか?
「動機の言語化」は、パネラーの特徴的な言動が出てきたときに有効です。他の人ならしない行動、他の人ならしない判断、そういった特徴的な言動の裏にはパネラー独自の視点や考え、行動特性があります。これはテーマの回答を導くために重要な情報です。
▼動機を言語化する質問
〇〇という行動は、どうして行おうと思ったのでしょうか?
◯◯という活動は、どういうきっかけで始まったのでしょうか?
◯◯という判断は、どうしてそう判断したのでしょうか?
◯◯という考え方は、どうして抱くようになったのでしょうか?
スキル3:エッセンスを抽象化するスキル
モデレーターは最終的に、テーマの問いに回答を出すことが目標になります。ビジネス系のパネルディスカッションの場合、テーマの多くはパネラーが行った仕事上の成果を「聴講者が再現するためのエッセンス」が回答となります。
エピソードを通じて、聴講者自身でエッセンスを見抜くのは容易ではありません。聴講者の負担を減らしてあげる意味でも、モデレーターがわかりやすく抽象化できるようガイドします。
▼抽象化の構造
聴講者が聞きたい(テーマの回答)とは、今日話された(パネラーの具体的なエピソード)を根拠に、(抽象化したエッセンス)です。
まとめの発言として「今日、パネラーのお話を聞いていると、パネラーのような成果を出すには、◯◯、◯◯なエピソードで示されたように、◯◯な行動・知識・考え方が大切だったのでしょうね」というような発言になります。
これに納得感がないと、これまでの全てが水の泡になってしまいます。モデレーターの重要なパートです。
まとめ
モデレーターを上手に進行するコツとして、いくつかの事前準備と進行スキルについて紹介しました。こうしてみると改めてモデレーターは「仲介人」なのだと思います。パネラーと聴講者の仲介人であり、具体的なパネラーと、抽象的なテーマの仲介人。
聴講者が聞きたくなる問いを設定し、それをパネラーと一緒に議論して、何かしらの解をその場で生み出すパネルディスカッションは、とても楽しいイベント形式です。
僕自身、モデレーターに挑戦してみてテーマについて深く考える機会を頂き、テーマについての知見を誰より吸収させてもらえました。何より自分が勉強になったと感じます。
最後に。初めてのパネルディスカッションを一緒にできたパネラー3人のHENNGE板垣さん、共同印刷大浦さん、HEAVEN Japan村木さん。そして昨年末に、僕がモデレーターをやってみたいと思うきっかけをくれたビズリーチ茂野さんに心から感謝を述べたいと思います。ありがとうございました!