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カミスク実験室(紙鍋パーティー in高知)

11月某日 カミスク設立後初の高知訪問

訪問前から、工房の庭で実験を兼ねた法人設立祝いの紙鍋パーティーをやろう!と盛り上がって迎えたこの日、前日入りしていた西村(カミスク代表)から、ワクワクした声で連絡が入りました。

「はじめは旅館でみかける’’紙鍋’’のつもりで提案したのだけれど、職人さんたちが『せっかくだから自分たちで漉いた紙でやろう!』と盛り上がってくれて。皆さんの本気っぷりが伝わってきて、私も面白くなってしまい、ついつい’’夜鍋’’をして和紙を折ってしまった(笑)」
と、、、 それを聞いた私も俄然テンションが上がります。 こういう楽しい試行錯誤の時間こそが、紙の未来につながる道筋であるような気がします。
昔の人たちも、そうやってワクワクしながら文化を切り拓いて来たのでは、、、そんなことを思いながら、私も現地へ急ぎます。

天気予報は曇りの予報でしたが、この日はあいにくの雨。 急遽、軒先と工房内に場所を変え、紙を使った紙鍋パーティーという名の実験がスタートしました。
鍋もコップも、すべて和紙で制作されていました 。
紙鍋の耐久性に若干の不安を覚えつつも、いざチャレンジ! 鍋の中に水が入るとはいえ、直火にかけたら燃え上がるのではという不安が頭をよぎります。

1回目:鍋は燃えないものの、しばらくすると端から水漏れが、、、
2回目:水漏れ対策のため鍋を重ねて再チャレンジ!すると今度は外側の鍋が焦げ始めてしまう
その後も折り方を変えたり、火の当て方を工夫するなど、試行錯誤を重ねたものの、残念ながら今回は断念し、紙鍋ならぬ鉄鍋パーティーとなりました。
「油を塗るのはどうだろうか」
「和紙の種類を変えてみよう」
次回のリベンジに向けて、みんなで鉄鍋をつつきながら、様々なアイデアを出し合う時間もまた楽しいものです。

今回のチャレンジはもう一つあります。
「楮を食す」
楮の葉に味噌と野菜を挟んで焼き、みんなで試食をしました。初めて食べる楮の葉、、意外と食べられる!!
少しざらざらとした触感がありますが、お茶の葉を食べているような、ほのかな香りがします。
和紙作りの工程で楮を蒸すときには、ほのかに甘い香りがするのですが、その香りは焼き芋に例えられることがあります。
思わず食べたくなるような、甘い香り。

「きっと楮は美味しいんでしょうね」と聞くと、
「だから猪やサルに、特に新芽を食べられてしまうんです」
と皆さんが教えてくれました。

和紙の原料になる植物は楮、三椏、雁皮が有名ですが、三椏や雁皮には毒性があるようで、甘い香りがする楮が動物たちに人気なのも頷けます。とはいえ、大切に育てた楮、ましてや新芽が食べられてしまうのは大問題です。
こうした楮栽培の大変さ、難しさについてはまた改めて記事にしたいと思います(カミスクでは、紙助く制度という寄付制度を設け、こうした獣害対策も含めた楮栽培の支援を行っています)。

この日の様子は日本農業新聞の記者の方が取材に来てくださり、「カミ」スクの「紙」鍋パーティーが新聞「紙」に掲載されることとなりました。
後日送られてきた紙面には、素敵な記事と共に、みんなの笑顔の写真が大きく掲載されていました。
和紙の未来が明るくなるよう、「困った」ではなく「やってみよう」という想いを持って、私たち自身が笑顔で楽しみながら前に進めていくことが大切だと感じる日となりました。