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文学フリマ東京35|お品書き

11月20日(日)に、モノレールの隅の方、流通センターで行われる文学フリマ東京35でかみしのが寄稿したものなどのお品書きとちょっとしたエッセイです。

胎動短歌 Collective vol.2(き-20)

『胎動短歌』には「害虫感覚IV」という8首の連作を掲載しています。創刊号が出たのも、もう五年くらい前で、ぼくは初谷むいさんと穂村弘さんをはじめとしたメンバーの豪華さに惹かれて当時の文学フリマで購入した。ステッカーをもらったことを覚えている。それからしばらくして、ラッパーのGOMESSのライブを見に行ったとき、本当に偶然に主宰のikomaさんと話す機会がうまれた。「第二号を待っています」と、ようやく伝えることができたのである。そのライブからも数年が立って、そのときのことを覚えていてくださったikomaさんから第二号のお誘いがあった。そういう運命の巡った同人誌だ。メンバーも相変わらず豪華で、総合誌ではまず有り得ない組み合わせ、これはほとんど音楽フェスだ。そのきっかけになったGOMESSも、更には大学生のときから聞いている狐火までが参加している。すごい本ですよ、これは。

ELITES vol.6 (あ-23~24)

『ELITES』には「mitleid」という9首の連作を掲載しています。エリーツの二次創作、具体的には滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』、佐藤友哉『星の海にむけての夜想曲』、海猫沢めろん『左巻キ式ラストリゾート』へのオマージュだ。昔、ART-SCHOOLの曲に短歌を作ったことがあって、そのときにも思ったことだけれど、オマージュというのは難しい。と、いうよりぼくには不可能だ。それはオリジナルが偉大すぎるからである。だからぼくは町田康が中原中也に対して行ったように、あるいは最果タヒが百人一首に対して行ったように、共に振れること、共振することを選んだ。音楽っていうのはそういうことだと思う。だからいわゆるオマージュとはちょっと違うかもしれません。タイトルの説明なんて普段はしないのだけど「mitleid」はショーペンハウアーの提唱する「共苦」の原語です。トロンさんはエリーツの楽曲、岩倉さんはphaさんのシェアハウスについての短歌のようなので、期せずしてバランス(?)がとれているようで、そういうのもやっぱり宇宙意思だ。

青春ヘラ ver.4(Y-01)

座談会「音楽・写真・短歌から見たエモ」で参加しています。こちらは既刊本であるのですでに手に取っていただいた方もいるかもしれませんが、巷で話題の『青春ヘラ』が最新刊も引っさげて文フリに参加するようです。うちださんとアオトケイさんとの鼎談は、何よりぼくにとって楽しい経験で、話しながらいろいろなことを考えた。話し終えてみて、どうやらここで共通認識されている「エモ」とぼくの思う「エモ」はちょっと違っているようだった。それはたとえばハイデガーの決断と覚悟の対応なのかもしれないし、祈りと呪いの違いかもしれないし、うちださんがちらっと喋っていた感傷と感情の違いかもしれない。都会のエモ、田舎のエモという抽象概念は、実は同根のもので、それとの対立項として郊外のエモとでも呼ぶものが存在している気が、最近はしている。そうして、それこそがエモーショナルな胎動なのだ。そういうことを思えるようになったのもこの本があったからで、「エモ」を信望する人も、批判する人も、ぜひ手にとってもらいたい一冊である。

その他、書肆侃侃房さんのブース(第二展示場く-03)にも短時間ですが立たせてもらう予定になっています。『エモーショナルきりん大全』を売ります。サインと、求められればそれ以外(一首や犬、花など)も書きますし、もってきていただいた本にもサインいたします。

間に合うようだったら函館の蔦屋で開催されているフェアに寄せた文章(+α)もフリーペーパーにしてもっていこうかと思います。17時くらいまでは会場や喫煙所をふらふらしていると思いますので、DMやリプライや声掛けをいただければと思います。善き文学フリマを。


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